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45.うさみみ獣人の村

「ハーフリングの村のお祭り楽しかったね!」

 馬をポコポコと歩ませながら、私は陽気な彼らを思い出していた。


「アタシの出したシチューも美味いと言ってよく食べてくれたぞ!作りかたも教えてきたしな!」

 昨晩、デイジーはハーフリングのトッポさんとジージョさんと一緒に途中で家にこもるから、何をしていたのかと思ったら、料理教室をしていたらしい。


「あの鳥の詰め物は美味しかったな。今度、デイジーが作ってくれ」

 エルは、ニワトリのお腹に詰め物をした丸鶏の焼き物が気に入ったようだ。


 そして、ハーフリングの村を発ってから、またただただ青い草原に砂利道が続いていたが、行く手にまた簡素な村が見えてきた。


 家は木造の簡素なもので、大きさは私達人間が住まうにも十分な高さがある。そして、畑が沢山ある。村を囲う木の柵の中では、ニワトリが土を啄み、ヤギが草を食んでいた。


 ……そして、何より特徴的なのは……


「うさぎちゃんだ!リアルバニーちゃんだ!」

 そう、そこはうさみみ獣人の村だった。あ、私たちの国にも、都会の大人な店や客引きさんなんかでバニーさんっているんですよ。村人と違って服装がもっと大胆だけどね。って、なんの説明しているのかしら。


「こんにちは」

 私達は馬を降りて、村の入口のそばにいたうさみみの女の子に声をかけてみた。


「きゃっ!人間だぴょん!大変だぴょん!」

 驚いた女の子が持っていた樽をひっくり返すと、中から人参がゴロゴロ転がり出す。

 その騒動に、男性が走ってきた。

 ……農作業で鍛えたと思われるマッチョな体に、うさみみと丸いうさしっぽが生えている。うん、あんまりこれは見た目に嬉しくなかったかな。


「お前たち!何しに来た!また娘をさらいに来たのか!」

 ……ん?娘を攫う?

「でも、この人たちは人間の男じゃなくて、女の子ぴょん?」

 誘拐犯たちは男のようで、女性である私達を見て、娘うさぎの方が、こくんと首を傾げる。


「あなた達を誘拐する人間がいるの?」

 私は、娘うさぎに尋ねてみた。


「そうだぴょん。最近村の外に薬草や果物を取りにでると、帰ってこない娘がいるんだぴょん」

 思い出して怒っているのか、頬をぷーと膨らませる。って、いちいちあざといな、娘うさぎ。


「我々種族の女が、人間の愛玩奴隷として需要が出てきたらしくてな。このままではこの村は男ばかりになってしまう」

 男うさぎが腕を組んでため息をついている。


 ……いや、あなた達ムキマッチョうさぎばっかりになった村なんて見たくないよ。と言うより種族の危機ですね。ゴメンなさい。


 そんな時、話を聞いていたエルが口を開いた。

「この子、こう見えて強いんですよ。この村の住人っぽく囮に仕上げられませんか?」

 エルがそう言って、ずいっとデイジーの背を押し、一歩前に出す。


「そんな小さい子で大丈夫かぴょん?」

 心配そうに、女うさぎがこくんと首をまた傾げる。あざと可愛く唇に指を添えるオプション付きだ。


「まあ、強いと言うし……頼んでみるか」

 男うさぎの一言で、デイジーは、とある一軒家に連れていかれる。

「またあたしが囮かい!しかもうさぎ耳とか!!」

 ……怒るデイジーの声が遠ざかっていく。


 ◆


「可愛くできたぴょんぴょん!」

 そういう女うさぎの言う通り、仕上がったデイジーは最高に可愛かった。

 十歳ほどの、見た目愛らしい金髪ポニーテールの少女に、短時間でどう作ったのかリアルなフェイクうさみみ、うさしっぽが装備されている。村娘の服を借りたのか、素朴なスカート姿も可愛らしい。


「可愛いよ!デイジー!」

 デイジーの手を取ってブンブン振る私。

「うん、やっぱり私の見立ては正しかった」

 満足そうに仕上がったデイジーを見て頷くエル。


 可愛いけど、デイジーの眉間にシワがよっているので、私は指でなでなでしとく。

「怖い顔してると、誘拐犯たち寄ってこないよ」

「わかったよ。……行ってくる」

 デイジーは、なんか色々諦めたようだ。てくてくと囮となるべく村を出ていった。


 ◆


「十八の女がうさ耳つけるとかありえない……」

 村を出ても近くの湖の湖面に映る自分の姿をしゃがんで眺めながら、デイジーは黄昏ていた。

「……しゃーない、さっさとコレ脱ぐために仕事しましょか」

 立ち上がって、辺りを見回す。


「薬草でも探してるフリしてればいいんかな」

 草むらにしゃがんでゴソゴソと草を積んではカゴに入れるふりをしていた。


 すると、背後から、カサっと忍び寄る足音らしき音がした。

『バレバレやっちゅーねん。でも気付かないふり……』


 すると、口元に布をあてられ、抱きすくめられて拘束される。鼻に、ツンとした刺激臭が走る。

『効かないけど、効いたフリ……』

 くったりとした(演技)デイジーを肩に担ぎ上げて、誘拐犯たちはご機嫌だ。

「ちょっとまだチビだけど、これは上玉だ」

「高く売れるといいな!」


 連れていかれた先は森の中の洞穴だった。その一番奥を複数の鉄の棒と扉で遮って、牢にしている。中にはうさ耳の少女達が大勢押し込められていた。


「また新しい子が来たぴょん!」

「こんな酷いことやめるんだぴょん!」


 牢の中の少女達が男達を非難する。結構元気そうだ。

「オラオラ、一匹追加するんだからどいてろお前ら」

 娘たちを追いやりながら、扉の鍵を開ける。


「よっこーらせっと!」

 デイジーは抱き抱えあげていた男の、自分の体を拘束する腕を掴み上げて、そのまま飛び降りた。

『ゴリッ』と嫌な音がして、男の腕は肩関節が脱臼して、ぶらんとなる。

「いてえええええ!!」

 男が肩の突然の痛みに大声で叫ぶ。

「うっせーんだよっ!」

 肩を抱えて転げまわる叫ぶ男の顔面を足で踏みつけ、失神させる片手間に、もう1人の誘拐犯の股間をコブシで殴りつけ、二人目。


「な、なんだこの凶悪ウサギは……!」

 留守番役の男がもうひとり居たが、逃げようと背を向けたので、

「ちょっと待てや」

 首根っこを抑えて、股間に蹴りを入れてやった。


「これで終了。アンタら、村帰れるぞ」

 そう言いながら、デイジーはアイテムボックスから縄を取り出す。そして、誘拐犯達三人を逃げられないように拘束した。


 ◆


「「「ただいまぴょんー!」」」

 娘うさぎ達が村へ駆け込んできた。

 誘拐犯を縄で縛り、ズルズル引きずりながら歩くデイジーも一緒だ。

「「「さらわれた娘たちが帰ってきたぞー!」」」

 村に喜びの声が沸く。


「人間の少女よ、ありがとう!」

 最初に村であったムキマッチョうさぎが、デイジーに礼を言う。

「こいつらの処分は任せてもええか?ここのルールに則った処分をした方がええやろ?」

 そう言って、デイジーが三本の縄を男に差し出した。

「ああ、責任をもって魔王様の配下の兵隊たちに差し出し、処分していただく。あとは、任せろ」


 そして、私たちは村人に歓迎され、夜は人参づくしの宴でもてなされた。デイジーは、キャロットケーキを差し入れていたが、これは村の女性たちに受け、やはり料理教室が開催されていた。

下記をどうかお願い致します(。ᵕᴗᵕ。)


駆け出し作家の身ではありますが、すこしでも

・面白かった

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