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44.ハーフリングの村

ハーフリングとは、某指輪で言うホビ〇トです。

「そういえば、エルは魔王領に入ったことはあるの?」

 私はポコポコとひづめの音を立てて歩む馬に乗りながら、隣を進むエルに尋ねてみた。

「いや、ないな。まだ仲間のレベルが低い者がいて、彼らのレベル上げをハルムでやっていただけだったからな」

「じゃあ、エルさんが前に勇者パーティにいたとしても、顔バレせーへんな」

 デイジーが、「マスク用意してあったんやでー」と、ニヤリと笑って、いかにも怪しいマスクをアイテムボックスから引っ張り出してくる。


 ここはヒルデンブルグ国のはるか郊外。ただただ青い草原が広がっている。道も、自然に人が行き交う間にできただけの砂利道だ。

 青い空、白い雲、どこまでも続く平原と砂利道。ただただ何も無い平和な光景が続いていた……が。


「あれ、村ちゃうん?」

 デイジーが平原の奥を指さす。

 平原にぽつりぽつりと小さな土壁でできた家のようなものが見えてきたのだ。


 だんだん近づいてくると、そこは、低めの木の柵で囲まれた村のようだった。家は土壁でおわんをひっくりかえしたような円形のドームのような形。木窓と木の玄関口がついているが、何分、自分達基準で見るととても小さなものだった。

「小人の家?」

 私は首を傾げる。

 その他にもニワトリがそこらの土を啄んでいたり、ヤギが木につながれている。小さな畑もあるようだ。


 私たちは、村の入口らしきところで馬の歩みを止め、馬から降りた。

 すると、見かけはドワーフに似た小さな人が、二人こちらへ向かって走ってきた。

「人間だ!人間が何をしに来た!」

 そう言って、農作業の鍬を持って構える。


「ここは魔族領なの?」

 私たちの半分ほどの背丈しかないその彼らに聞いてみた。

「一応はそうなるな!俺たちハーフリングは魔王様の庇護下にある」

「だから人間が何の用だ!」

 再び彼らが鍬を構える。


「最近、この辺りで私たち以外の人間を見なかった?」

「いや、見てないぞ」

 見ず知らずの、しかも人間だ。答えは相変わらずぶっきらぼう。返答があるだけまだマシなのかもしれない。


「じゃあ、病気とか怪我で困っている人はいない?私、治す力があるの」

「なんだって!」

 ん?何か問題があるのだろうか?ハーフリングのふたりが顔を見合わせる。


「ポポの奴の足でも治るのか?あれは足が半分ないぞ!」

「でも人間を信じるのか?」

 揉めているようなので、言い合っている彼らのうちの一人に、ヒールをかける。膝に大きな擦り傷があったのだ。


「おお見ろ、トッポ、俺の膝が治っている!」

「おお、本当だ!」

 治った男の膝を二人して眺めている。


「おい、お前!」

 膝が治った男が私を指さして名指す。

「村へはいることを許す!こっちへ来い!」


 そうして私達は村の中の一軒家に招かれた。

「ここの家のポポを治せ!」

 そう言って、その家の扉を開けて、二人は先に入っていく。


「うーん、狭いなあ」

 その家の扉は、這いつくばらないとはいらない。要は、やっとおしりが入るか……って感じである。


 エルとデイジーに、「行ってくるね」と告げて、私はモゾモゾと家の中に入った。

 家の中に入ると、奥の部屋のベッドに寝ている、膝から下の片足の無い青年がいた。


「ポポは魔獣狩りの村の英雄だった」

「だけど、先月村を襲ったレッサーボアの奴に片足を食われちまったんだ」

「「治るか!?」」


 ポポさん本人は突然の乱入者に混乱している。

「トッポ、ジージョ、そして見知らぬ人間のひと。僕に何をしようとしているんだい?」


 そんなポポさんに、私は極力穏やかな言葉で話しかける。

「私はあなたの怪我を治せます。少しの間、じっとしていてくださいね」

 そう言ってひとつ深呼吸する。

「パーフェクトヒール」

 ポポさんの失われた足の膝の関節部分に私は手を添え、回復の光を注ぐ。

 傷を塞いでいた皮膚が柔らかく開き、神経や血管、筋肉や骨といった組織が、反対側のそれと同じように伸びていく。

 ハーフリングの三人は目を見開いてその光景を眺めている。

 やがて、失われた足は、もう片方の足と対をなす形状を整えていた。


「「「治ったぞ!」」」

 三人が叫ぶ。


「奇跡だ!」

「女神様だ!」

「村長に報告だ!」


 ハーフリングの三人は飛び上がって家を駆け出していってしまった。


 そして、私がようやくその小さな家から這い出した頃に、村の村長という人が家の前で待っていた。

「ポポを治してくれてくれてありがとう!女神よ!」

 わらわらと村の人達も各々の家から出てくる。

「いや、女神じゃ……」

 私は、そうじゃないと手を振る。しかし、思い込みの激しい彼らは聞き入れる様子もない。


「「「祭りだ!!」」」

 誰ともなく叫んだ。


「したら、アタシのうまいもんも食わせたらなあかんな!」

 デイジーもノリノリである。


 私たちは、篝火を中心にした祝いの祭りの主賓として、彼らの出来うる限りの歓迎を受けた。

 ヤギのチーズを乗せたパン、自分たちで育てたであろう野菜のソテー。そして、きっと彼らにはとても貴重なニワトリがお腹に詰め物をされて丸ごと焼かれていた。

 とても滋味深く美味しかった。


 祭りの中、私は可能な限り村人に声をかけて具合の悪い人は全て治した。

 そして、夜は、空いているという彼らの客人用の家に泊めてもらった。


 そうして翌日、私たちはまた旅の続きへと旅立ったのだ。

下記をどうかお願い致します(。ᵕᴗᵕ。)


駆け出し作家の身ではありますが、すこしでも

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