43.親友
私は馬を借りて旅に出ることにした。
荷物は、食料や寒さを避ける毛布、護身用ナイフに解体用ナイフなど、必要なものがかさばるので、大枚をはたいてマジックバッグを買った。今までの稼ぎでお金には困らないので、容量の大きさと、重さが比例しないよう工夫されたものを特注で作ってもらった。血を垂らし、私専用の登録をしてもらう。これで盗難予防にもなる。
これで一人で行けるだろう。
エルとデイジーには、しばらく一人で魔王領へ行ってくることを伝えた。
『勇者』を探しに行くこと。そして、『勇者』に傷つけられた人々を癒したいこと。最終的には、魔王にあって、国同士の和平を繋ぎたいということを、正直に伝えた。
「なぜともに行こうと言わない?なぜ今まで一人で溜め込んできた」
エルは、私がひとりで悩んで、一人で決めて、一人で行こうとすることを怒っていた。
「あなたは、『勇者』と因縁があるから……望まないかと思って」
エルの怒りも当然だ。私にこんな独りよがりのところがあったなんて知らなかった。申し訳なく思い、私は自然とエルから視線を避けてしまう。
「それとこれとは別だ!私はリリーが行くところならどこへでもついて行く。その望みは共に叶えたいと思う!……そんなことも伝わってなかったのか!」
パシンと、頬を叩かれた。
私は、思いもよらない衝撃に、頬を押え、瞳を瞬かせてエルを見つめる。
私を真っ直ぐに強い眼差しで見つめるエルの頬に涙が伝っていた。
「エルさん、感情的になりすぎやで。でもリリーさんはもっとあかんなあ」
デイジーが、腰掛けていた椅子からひょっと飛び降り、私とエルの間に入る。
「なあリリーさん。アタシらは、奈落であんたに会わんかったら、なかった命と思っとるよ。多分それはエルさんも一緒や」
「……それは私こそ同じよ。エルやデイジーがいなかったら、奈落の底で死んでいたと思うわ。それに、あなた達がいたから生き延びるだけじゃなくて、生き抜くことを楽しめたの」
私の言葉を聞いて、デイジーが、うん、とうなづく。
エルは感情が昂りすぎたのか、椅子にもたれ掛かりながら腰を下ろしていた。
「なあリリーさん。アタシらは仲間やろ?」
「うん」
私はデイジーの言葉に素直にうなづく。
「仲間ってだけか?」
その質問の意図にはわからず、私はコクリと首を傾げる。
「親友やないんかい!」
ゴツン、と頭にげんこつを落とされた。
本気で痛い。
「い、痛いよデイジー」
思わず口に出た。
「これだけずーっと一緒におって、龍も二匹も苦労して倒して、そもそも奈落から仲良く脱出してきたよなあ!ほとんど毎日お風呂だって一緒に入っとる!ご飯も一緒や!住む所も一緒や!アタシのとーちゃんの所にも一緒に行った!その親友に隠れて一人で悩んで一人で決めて、一人で魔王領へ行ってきますってどういうことや!!」
「親友……」
孤児院に預けられて、細々と生きてきて、冒険者になっても仲間かと思っていたら要らないって言われて。そんな、私なのに。
「こんな私でも、親友って言ってくれるの?……危ない魔王領へ一緒に行ってくれるって言うの?」
「「当たり前や(だ)!」」
「ふ、ふええええ」
私はその場で泣き崩れてしゃがみこんでしまう。
デイジーはその私の髪をぐしゃぐしゃに掻き回す。
エルは、しゃがんで私とデイジーごと抱きしめてくれる。
「リリーはすごい力持ってるくせに、自己肯定感が低すぎだ。それになんでも抱え込みすぎ」
仕方ないなあ、というように、エルの手が私の背を撫でてくれる。
借りる馬は全部で三頭になった。
デイジーは、
「人の心掴むならうまいもん食わせたらなあかん!うまいもん作るで!」
そう言って、アイテムボックスに入れて持っていく料理を作りに厨房へ駆け込んで行った。
今日も一緒にお風呂に入り。
ちょっと、いや、かなり狭かったけど一緒のベッドで三人で寝た。
みんなで一緒に行こう。私たちは親友だ。
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