42.交渉
私は祖父を訪ねたその足で、祖父と共に国王陛下への面会を求めた。本来であれば、そんなことを臣下の立場から求められるものでは無い。国王陛下ともあれば、常に政務に忙しいお方であり、面会希望後一ヶ月後に会えると言うことも普通なのである。
しかし、偶然なのか、それとも『私』だったからなのか、ちょうど政務の合間だということで、面会の場を設けていただけることになった。
良かった……。私は『勇者』というシステムを変えたい。無駄な侵略行為は止めたい。その為に、国王陛下とお話をさせていただく必要があるのだ。
「「失礼します」」
祖父と共に、国王陛下と宰相閣下がいらっしゃる部屋へと通された。
「急にどうしたのじゃ、リリー殿」
そう言って、腰をかけるように勧められるのに一礼をしてから、私たちは椅子に腰を下ろした。
「国王陛下。私に、行方不明となった勇者パーティの捜索に行かせてはいただけないでしょうか」
私はまず一つ目のおねがいを口にする。
「……それは構わない、むしろ有り難いくらいじゃ。のう、宰相」
「今更……という気もしますが、お止めする理由もないかと」
国王陛下は我が国の『勇者』が大切なのだろう、肯定的な回答をいただけた。反面、宰相閣下はおそらくもう『勇者』はなきものと仮定して、無駄な行為ととっているようだ。
「ありがとうございます」
一息ついて、うん、と頷く。陛下方の思惑はともかく、目的のひとつはお許しをいただけた。
「もうひとつお許しを頂きたいことがございます」
少し安堵に緩んでいた心を引き締め、強い眼差しで陛下、閣下、おふたりに決意を秘めた瞳を向ける。
「私は魔王領で、『勇者』を探すかたわら、『勇者』が傷つけた者達を癒してきたいと思っています。そして、最終的には魔王と対面したいと思っています。それをなしえた暁には、『勇者』が『魔王』を倒しに行くという、『不文律』によって行われている戦争を休戦したいと、そう申し入れるつもりです。国王陛下に、そのお許しを頂きたいと思うのです」
「『勇者』派遣を、余にやめよと申すか」
「はい。争いは失うものがありはしても、得るものはほとんどないかと」
陛下の口調は厳しい。それはそうだろう、ただの一臣民から、無益な戦争はやめよと言われているようなものだ。私は、膝の上で、ぎゅっと拳を握る。
国王陛下の様子に、お爺さまも孫娘を心配する眼差しを私に向ける。
すると、その空気を破るように、宰相閣下が口を開く。
「陛下、我々人は、我々より力のある魔王、魔族を恐れています。彼らからの侵略なくともです。ですが、我々は恐れが故に、神より与えられし『勇者』をもって、魔王討伐に赴かせてきました……が、今回失踪した『勇者』を除いても、その討伐行為により何を得られたのでしょうか」
ダン!と陛下がテーブルを叩く。その拳は、握りしめた力で赤く、震えている。
「そなたまで無駄というのか、宰相!」
「無駄とまでは申しません。ですが、討伐により得られるのは一時的な……そう、魔王復活までの一時的な安心です。復活すれば、また『勇者』を派遣することとなるでしょう。しかし、リリー殿のご提案のとおり、もし仮に和平条約を結べたとしたら……我々はほぼ恒久的な安心を得られませぬか」
興奮した口調の陛下と比べて、宰相閣下の口調はただただ穏やかだ。
「……それも、そうなのかもしれんな」
テーブルの上で固く握られた拳が緩んでいく。
それと共に、緊迫した場の雰囲気も和らいでくる。
「……リリーよ、そなたの魔王領訪問を許す。そして、晴れてそなたが魔王より和平の要望を勝ち取れたのであれば、我が国も、和平に応じよう」
こうして私は、魔王領へと赴くことを許された。
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