41.『魔族』への疑問
私はその日、お爺さまの勤務する軍務省へと足を運んでいた。
『元孤児で、学のない』私には、この世の『常識』がわからなかったのだ。
行方不明と言う勇者ユージーンたちも気にはなる。だが、それ以前に疑問に思ったのだ。
何故、勇者が生まれると魔王討伐をさせるのか。
魔族とはなにか。そもそも争うべき相手なのか。
そもそも魔族とはどういうものなのか。
『勇者』を管理する立場であるお爺さまならば、答えをくれるのだろうか、そう思ったのだ。
「よく来たの、リリー。して、悩み事とはどうしたのだ」
久しぶりに会う孫娘に、お爺さまはご機嫌だ。
「勇者が、行方不明と聞きまして……」
私は、祖父に促されるまま、来客用のソファに腰を下ろす。
「勇者と縁も無いお前がそれを憂えると言うのか?」
理解ができない様子で祖父は首を傾げる。
「当代の勇者だった方は、必ずしも『人』として誇れる方ではありませんでした」
祖父は奈落への突き落としをしたユージーンを知らない。私の言葉の意図が分からないのか、首を傾げている。
「魔王とは必ず討たねばならぬものなのですか?」
私の問いに、祖父は真面目な表情になり、ゆっくりと答える。
「魔族とはな、我らより、より強い力や、魔力に恵まれた、人とは違う異形の者たちだ。その王を討伐することで、人々の安寧が得られるのだ」
「彼らは、我らに積極的に人へ害をなすのでしょうか」
私はそもそもの疑問をぶつける。
「神代の頃からの歴史は、我々にはわからん。だが、彼らは、我々より勝る力に対抗するために、神から与えられるのが、『勇者』という存在だ。だから、『勇者』が生まれると、我々は魔王討伐を命じるのだ」
「『勇者』は魔王討伐までに、魔王領に住む者たちを殺めるのですか」
「……そういうこともあろう……自らの成長のためにな」
「選ばれし『勇者』とは、必ずしも善なる慈愛を持つ方なのですか。絶対なる正義を持つ方なのでしょうか」
「……それは、そのものによる……」
「魔族とはどういう人たちですか」
「人とは違う異形の生き物たちだ。人以外の、獣人や、魔族といった……」
おじい様はだんだん返答に詰まって言葉を濁す。
「見目の違う『人』なんですね。そして、『魔王』とは彼らを束ねる一国の王、違いますか?」
「……そうとも言える」
「『勇者の派遣』とは、『神』に大義名分を与えられた、人間側からの侵略戦争。……そうですよね」
祖父はもう何も答えられない。『答えはない』そうなのだろう。
私は思った。理由も分からない侵略などいらない。そのための『勇者』なんかいらない。お互いに対等な立場として国同士が和平を結べればいい。それが、この世界を縛る『ひとつの悲劇』を無くす、その方法なのだと。少なくとも、それを模索する会話は必要なのではないか。
……それが可能であるのならば。
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