36.双龍退治①
私たちは、装備の点検、バフがけを入念に行い、宝物庫への扉を開いた。そして、ドワーフのみんなの安全のために、扉を閉じてもらう。
金貨や金塊、宝物がうずたかく積み上がったそこに、ドラゴンの姿はない。
「ドワーフ王国の宝物庫を明け渡してもらおう」
エルが大声で宣言する。
すると、ザラザラと音を立てて金貨が流れ落ちる音がする。ドラゴンは宝物に潜って眠っていたようだ。
「ピュートーン、邪魔者がやってきたようだぞ」
「テューポーン、馬鹿な奴らだ。この黄金を取り返しにでも来たか」
双子の双頭龍がその巨体を顕にした。
「そのまま去るのであれば手出しはしない。去らぬのであれば討伐されるもやむを得ないと思うがいい」
そう言ってエルは剣を抜き、デイジーはハルバードを構える。
「小さな人の子が笑わせる。なあ、ピュートーン」
「我々に勝てるとでも思っているのか、片腹痛いのう、テューポーン」
そして、一歩私たちの方へ足を踏み出す。
「「愚かな人の子。我々に剣を向けたこと、後悔させてくれるわ!」」
そう言って、四枚の翼をバサりと羽ばたかせて、嵐のような風を巻き起こす!
「大竜巻!」
私が唱えると、巨大な竜巻がいくつも発生し、龍の翼で巻き起こった風すら取り込んで、さらに巨大化する。竜巻は宝物たちをその中に巻き込み、巻き込まれた宝物たちが龍の四枚の羽に傷をつけていく。
「人間ごときが我々に傷をつけたぞ、ピュートーン」
「これは懲らしめてやらんとなるまいな、テューポーン」
龍の四つの目が私を睨みあげる。
そして、長い首を持ち上げ、その口腔のひとつの奥に炎が、もうひとつの口腔の奥には氷の嵐がうずまき始めている。
私はそのそれぞれに相対すべき属性の魔法を片手ずつに展開する。
「溜め込んでいる今がチャンス!行って!」
私が叫ぶと、デイジーとエルが巨体の両脇まで駆け抜け、飛び上がってその二本の首に一人づつ跨る。
「竜殺しの剣を味わうがいい!」
「首狩り公を食らってみやがれ!」
二人はそれぞれの得物を首に降り下ろす……が、想像以上に硬いその表面は、僅かに肉が覗く程度に傷をつけるのみだ。
「「ギャオオオオオオオオオオ!」」
しかし、首の痛みに双龍が怒り狂い、首を振り回す。エルとデイジーはその勢いで投げ飛ばされ、壁に体を打ち付ける。
そして、私目掛けて炎と氷の順で吐き出される!
「氷の壁」
「炎の壁」
先に来る炎を氷の壁で打消し、あとから来る氷の嵐を炎の壁で打ち消す。しかし、完全には打ち消しきれずに、私は氷の礫で体のあちこちに細かい傷を負う。
「「リリー!」」
壁に打ち据えられたエルとデイジーが私を気遣う。
「大丈夫!」
「エリアハイヒール!」
ちょうどいい、まとめて回復してしまおう!
宝物庫の内部が癒しの光に満たされ、私たち三人は全快して立ち上がる。
「人間どもが、無傷だぞ、ピュートーン」
「我々には傷をつけておいて……、のう、テューポーン」
「「……どうやらなぶり殺しがいがありそうだ」」
双龍がその四つの目を爛々と輝かせて、私たち三人を眺め回した。
「素材を残して倒すにはやはり首を切るしかないが……」
小さな声で呟くエル。
「首をぶん回す勢いが激しくて飛ばされてまうわ」
デイジーは吹き飛ばされたことを根に持っているのか忌々しげだ。
「そうだリリー。鉄の杭を突き刺すことは可能か?」
エルにそう尋ねられる。
「うん、土魔法の応用でできるはず」
土や砂には砂鉄という鉄を含む。だから、その中の鉄だけを加工して杭にすることで可能なはずだ。
「じゃあ……」
エルが私とデイジーを引き寄せ、その耳元で作戦を囁く。
「うわぁ、えろう痛そうな作戦やな」
デイジーはすごく嫌そうだ。
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