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33.デイジーの囮捜査

 アタシは街娘の格好をして街をぶらぶらしている。少女誘拐事件の犯人を炙り出すために囮になっているのだ。

 正直こんな依頼はさっさと片付けて、ドワーフ王国へ行きたい。行って、とーちゃんに、ドラゴンスレイヤーになったことを報告するんや!はよ行きたい。アタシはせっかちなのだ。


 そのイライラが顔に出ていたのだろうか……。たまたま居た雑貨屋のおばちゃんが、申し訳なさそうに声をかけてきた。

「お嬢ちゃんの気に入る品はなかったかねえ。ごめんねぇ」


 ……あ、あかん。怖い顔しとる娘なんか攫わんよな。


 気を取り直して、笑顔を貼りつけよう。

 その後は、とうちゃんに会った時に話すこととか、そんなことを考えて街散策をすることにした。笑顔、笑顔っと。


 囮を始めて数時間。

「お腹空いたぁ」

 ぐーとお腹も鳴って空腹を訴えてくる。


「嬢ちゃん、腹減ったのかい?このリンゴなんかどうだ?」

 この間の宿屋を紹介してくれた店とは違う果物屋のオヤジが、アタシにリンゴを差し出してきた。

「ちょうど良かったわ。それ一個もらうわ!」

 そう言って小銭とリンゴを交換する。


「そこに、落ち着いて腰掛けられる樽があるから、そこで食べてきな!」

 うん、確かにずっと歩いていたから座りたい。

 樽は、裏路地に続く店の端っこに置かれていた。

「じゃあ遠慮なくー」

 ぴょんと乗り上げて座り、リンゴをかじる。うん、美味しい。けど、ちょっと今のひと口味が微妙やったような……。


 そう思って首をこくり、と傾げた時。

 急に背後から襟元を引っ張られ、路地の中へ引きずり込まれた。


「リンゴに睡眠薬入れてるのに、美味しそうに食べちゃって、まあ」

 暗がりで分からないが、男たちの笑い声が聞こえる。

『きたー!』

 そう思ってアタシは慌てて眠った振りをした。ようやく囮に引っかかったことに、ニマニマしそうになるのを抑えるのが大変やったけど。


 ◆


 眠っていて、抵抗も出来ないと思い込んでいるのか、手足に拘束もなく男はアタシを肩に担いで、人気のない裏通りを進んでいく。アホやなー。笑いをこらえるのが大変や。

 着いたのは、街のはずれにある小さな小屋やった。その小屋には、地下への階段があって、さらに奥へと連れてかれる。

 チラ、と薄目を開いて見ると、牢屋がひとつあって、その中に女の子たちが沢山閉じ込められとった。


「ほら、鍵」

 男二人が今まさに鍵を開けて、アタシもその少女の中に加えようとしとる。鍵束をちょうど受け渡すところだ。

 ……それ、頂戴しましょか。


 ひょっと男の肩から飛び降りると、手渡そうとしていた鍵束を奪う。

「なっ」

 驚く男一人の股間を思いっきり蹴りあげる。そいつは泡を吹いて失神した。

「大人しくしやが……」

 もう一人は最後までセリフを言わせて貰えずに、腹に強烈なパンチをくらって仲良く失神した。


「今開けてやるからなー」

 そう言って、囚われている少女達に鍵をかざしてみせると、皆口を開けてあんぐりしとった。そりゃ、アタシはこんなかでも最年少って見かけやもんなあ。びっくりするわな。


 そんなことをしとると、数人の人間が階段の上から騒がしく降りてくる音がした。


「いらっしゃいませー」

 にっこり笑ってアタシは先頭の男を顔面パンチする。目をやられたらしく、悶絶している。

 次の男は、足踏んづけてやったら勝手に骨折しやがった。どんだけ骨もろいねん。

 お次は、やっぱ楽な股間をパンチ。はい、夢の国へ行ってらー。あ、こいつあの時の林檎売りのおっちゃんや。


「こんなもんかなー」

 そう言って、アタシは牢の鍵を開けて少女たちに全員出てもらい、男たち五人をぽいぽいと放り込んで、鍵閉めたった。


「鍵かえしやがれ!」

 気を取り直した男がひとり喚いとったが、返すわけないやん。

「地獄へ落ちろや」

 そう言って、あっかんべーしたった。


「さて、じょーちゃん達、一緒にご領主さまんとこ帰ろっか」

 念の為、アタシが先頭になって小屋を出るが、もう誰もおらんかった。ひとまずあれで全員だったらしい。


 ◆


 領主の館に到着した。誘拐被害者の親たちもみな集まっていた。

「お父様!お母様!」

「「パパ!ママ!」」

「「「お父さん!お母さん!」」」

 少女たちが走っていって、それぞれ抱擁を交わす。

 見る感じ、足らん子もおらんようだ。


 そこにエルとリリーがやってくる。

「ご苦労さま」

 エルがアタシの頭を、かいぐりかいぐりする。


「支援してくれても良かったんちゃう?」

 そう言ってアタシはエルを睨めつける。

「だって、手出しする余地なかったしね」

「デイジーとってもノリノリなんだものー」

 ……む。どっかで二人は見守っていたらしい。


「本当にありがとうございました!みな漏れなく無事に帰って来れました!」

 しかも、『乙女』であることが商品価値上大事だったのか、手を出された子もおらんらしい。

 レームス伯爵が涙を流しながら頭を何度も下げて感謝の意を伝えてくる。


「はい、これ誘拐犯達閉じ込めとる鍵な」

 そう言って、伯爵に鍵を手渡す。


「何から何まで、ありがとうございます。あとの処理は私の方でしておきます」

 もう一度伯爵が深々と頭を下げた。

下記をどうかお願い致します(。ᵕᴗᵕ。)


駆け出し作家の身ではありますが、すこしでも

・面白かった

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