31.ヒポグリフ
出発の日、私たちは王城の一角にある騎獣舎へやってきた。ヒポグリフを借りるためだ。
世話係の役人さんは、
「女性を乗せるとの事で、優しい性格の子を選んでおきましたよ」
と言って三頭のヒポグリフを紹介してくれた。
旅の相棒になるヒポグリフの瞳を見つめて、その頭を撫でる。
「旅の間、よろしくお願いね」
「よろしくな」
「よろしく頼むで!」
すると、各々のヒポグリフはくちばしを下げ頭を垂れた。賢いなあ。
挨拶が済んだので、それぞれヒポグリフに乗る。
エルとデイジーはパンツ姿なので跨って乗っていたが、私はローブのため、横乗りである。
「行ってらっしゃい!」
騎獣舎の人たちに見送られて私たちは空へと浮き上がって行った。
◆
「うわー、人があんなに小さく見えるわ」
先頭はデイジーだ。デイジーの実家に行くのだから当然案内役は彼女だ。ついでにハルバードを振り回して出くわした鳥型モンスターを露払いしていく。
「空の旅とは爽快でいいな」
「わ、私はちょっと怖いかも……」
そういう私に合わせて、最初はゆっくり、そして徐々に飛行速度を上げて飛んでいった。
そうして、ヒポグリフとしては通常の速度に落ち着いた頃、その速さは素晴らしかった。
家や畑、村や町がぐんぐん景色として流れていく。
そうして、騎獣舎があるであろう規模の大きい街で一泊することにして、街の少し手前で降りることにした。
街の入口で身分証を求められたので、ギルドカードを差し出す。みんな揃ってSランクのゴールドカードだったので、急に衛兵さんの態度が恭しいものになり、「ようこそブレドゥの街へお越しくださいました!」とまで言われてしまった。
Sランクカード効果ってすごい!
門を無事に通り過ぎ、ヒポグリフの手綱を引いて歩かせながら、宿屋を探して歩く。
「おや、ヒポグリフ連れの旅かい?珍しいね」
果物屋の前で客引きをしているおばさんが声をかけてきた。
「そうなんです。騎獣舎のある良い宿を知りませんか?」
エルがおばさんに尋ねる。
「ご領主様のお舘に続く通りにある宿が一番上等で、あんたたち女の子にも安心だろうけど……料金はそれなりにするよ?貴族様も泊まるから、厩舎なんかはちゃんとしてると思うがね」
そう言って、あっちの通りをまっすぐね、と手振りをつけて教えてくれた。
「ありがとう、恩に着るよ。それで、今一番おすすめなものはどれだい?」
と店に並んだフルーツを指さす。
「今日はライチーが異国からちょうど仕入れできたところでね。冷やして食べるとうまいよ」
そう言って、ライチーの入った竹かごを差し出す。
「じゃあこれで……お釣りは要らないよ」
「毎度、ありがとね!」
おばさんに手を振ってその店をあとにした。
私たちが言われた通りに歩いていくと、たしかに立派な宿があった。
「宿をお探しですか?」
宿の者と思われる、上品な服を着た男性が尋ねる。
「ああ、ヒポグリフがいるから、騎獣舎があると助かるんだが」
勿論です、と一礼をすると、こちらです、と騎獣舎まで案内してくれる。
きちんと整えられているであろうことがわかる清潔な場所だ。
「ここならいいかな?」
エルが尋ねるのがわかるのか、頭をすりすりと擦り付けてから、三頭とも自ら中へ入っていった。
「これは実に賢いですな。丁重にお預かり致します」
そう言うと騎獣舎の係員を呼んで、指示をしていた。
「では、お部屋にご案内いたしましょう。当宿は安全かつ上質を売りにした宿でございます。念の為、ご身分を証明いただけますか?」
やはりここでも、ゴールドカードが良い仕事をしてくれた。しかも、エルと私は家名まで記載があるしなあ……。
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