26.Sランク冒険者と、飛んで火に入るなんとやら
微ざまあになっているでしょうか……(汗)
国王陛下との謁見を行ったことで、ようやくドラゴンの討伐証明や、素材の納品、そして国王陛下からのお墨付きなど、Sランク昇格に相応しい事や職業(回復師で聖女で賢者なんてとんでもない職業)を証明することが出来たので、やっとギルドカードを更新できる状態になった。
そうなると、
「早く重戦士にしたい!」
とデイジーが居てもたってもいられないって落ち着きが無くなったので、今日は三人でギルドへ行くことにした。
「こんにちは」
ギルドに入って受付のリムルさんに、ギルドカードを更新しに来たことを告げる。
「はい、うけたまわりますね」
ニッコリ笑って私とデイジーのギルドカードを受け取ると、「暫くお待ちくださいね」と言って奥へ行ってしまった。
「なにか飲み物でも注文して待っていることにしようか」
そういうエルの提案にうなづいて、果実水とナッツを注文してテーブルについた。
腰を据えると、周囲の様子が目に耳に入る。
そう、王宮から王都へ、王都からハルムへと、隣接しているだけあって噂はまわっているらしく、チラチラと他の冒険者から注目を浴びているのだ。
「奈落から帰ったドラゴンスレイヤー達だろ、あれ」
「あのちびっこいのも、ハルバード振り回して凄かったらしいぜ」
「あのサイズで騎士団長に圧勝ってなんだよ」
「あのローブの女は王太子さまのお命を救ったとか……」
「片目眼帯、片足義足のあの鬼の軍務卿の欠損も治したんだろ」
「そもそもその軍務卿の孫娘だったんだろ!粗相したらヤバくね?」
うん、なんかすごいね。尾ひれとかはついてないところは良かったけれど……。
そんな時にやって来てしまったのだ。事情を知らないBランクまで落ちぶれた彼らが。
「「「リリー!」」」
ハヤトが、私を見つけて駆け寄ってくる。スノウもフォリンもついてきた。
「探してたんだよ、リリー!俺たちのパーティーに戻ってくれ!いや、戻るよな!」
そう言ってハヤトが私の手首を掴む。
ハヤト達は思っていた。わざと落としたことを事故として口裏を合わせてくれている。そんな人の良い優しいリリーは全てを許容して俺たちの元へ戻るつもりなんだと。
「えっと……」
困って私は首を傾げて助けを求めるように視線をエルに向けた。
すると。
エルは私の手首を掴むハヤトの手を叩いて払い落とし、私の手の指を恋人繋ぎで指を絡めて、私の体を引き寄せる。そして、反対の腕で私の腰に手を回し、私の体を抱き寄せる。
私はその距離感にドキドキしてしまって、顔は耳まで真っ赤だ。
「リリーは、私の大事な人なんだが?」
ちら、とハヤトを一瞥し鼻で笑う。
「それとも私から奪えるとでも?」
酔っ払っている周囲の冒険者達も悪ノリしてハヤト達を囃す。
「Bランクにまで落ちぶれたアイツらがそれはねーよなあ」
「救国の聖女さまってわかってんのかねえ」
「剣士のねーちゃんの方がよっぽどいいオトコだろうよ」
「夢見すぎじゃね?」
「自分らの実力ってもんがわかってねーんだろ」
ゲラゲラと嘲笑う冒険者たち。
いたたまれなくなって、ハヤトたちはギルドを後にした。
もう、Sランクパーティーの夢は見られないのだと思い知らされた。
「要らない」と安易に捨てたものは、必ずしもその手に戻るわけではないことも。
なんにも知らないリムルさんが奥から戻ってきて、金色に輝くSランクカードを私とデイジーに手渡してくれた。
……ハヤト達のパーティーは少なくとも王都周辺からは姿を消した。彼・彼女らがそのあと何をしているのかは、誰も知らない。
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