25.王との謁見②
「では次に、回復師及び聖女としての力を見せて頂こう」
宰相閣下がそう言って手を上げる。
すると、左目に眼帯、右足に義足をした軍服姿の年配の男性が歩いてくる。そしてもう一人、可動ベットに乗せられて若い金髪の男性が運ばれてくる。
「軍務卿と、……王太子殿下!?」
眠っている男性の姿を見て、観衆が騒然となる。
「軍務卿はみなも知っての通り、過去の戦で獅子奮迅の働きをしてくれたが、その片方の目と足を失った。叶うことならば、私は、彼の身体を元に戻してやりたい」
陛下が軍務卿に目線を向け、一つ頷く。
「そして伏せてはいたが……半年ほど前から、王太子が眠りについたまま目を覚まさなくなってな。呪いということはわかったが、その呪いを解くことができずにいる。だいたい犯人は想像ついてはいるのだがな……」
陛下は悲しげに目を伏せる。
……王太子に呪いをかけるなど、犯人は絞られそうだが……
「陛下。呪いをとけば、その呪いはかけた者の身に帰ります。それでも呪いを解く、それで宜しいですね」
「構わぬ。治療の代金も私が全てもとう。二人を治してやってくれ」
私の目を陛下がエメラルドの瞳で懇願するように見つめる。そして私の手をぎゅっと握った。
「承知致しました」
「まずは閣下、椅子におすわりください。そして、義足を外していただけますか?」
軍務卿は、指示されたとおり、義足を外して脇に置いた。
失って長い欠損はハイヒールでは治せない……。
まずは、眼帯の上から左目に手をかざす。
「パーフェクトヒール」
私の手から強い光が発生する。『ここまで』と思うまでじっくりとその光を当てる。
「パーフェクトヒール」
今度は下肢だ。手のひらから発した神々しい光を当てていると、皮膚で盛り上がった切断面から徐々に肉や繊維、血管といったものが伸びてゆき、裸足の右足が再生した。
「儂の右足が戻った……」
信じられないと言ったように、軍務卿が再生した右足をさする。
「欠損して長い場合は歩くのになれるためにリハビリがいるかもしれません。次に、眼帯を外して見ていただけますか?最初は眩しいかと思いますが……」
軍務卿が眼帯を外し、ゆっくりと顔を上げる。
「見える……視界が広がった!」
「素晴らしい力だ、感謝する!」
感動のあまりか、軍務卿が私を抱きしめ抱擁する。あまりないことなので私は少し驚いてしまった。卿は抱擁する腕を離すと、今度は私の肩をがしっと掴む。
「貴女が持っているペンダントを私にみせてはくれないか?」
急な申し出に不思議に思いながらも、私はペンダントを外し、卿に渡す。中身を開くと卿は頷く。
「母の名はなんという?」
「アマーリエと申します」
「この絵姿にあるアマーリエは、儂の娘じゃ。結婚が嫌で冒険者になると言って出ていったきり、行方がわからなくてな。リリー、そなたはわしの孫娘じゃ」
「えっ」
「まあ、時はいくらでもある。まずは殿下を治してさしあげなさい」
「あ、はい……」
私は動揺しながらも、殿下に手をかざす。すると、たしかに悪意を含んだ禍々しい気が感じられる。
「解呪」
禍々しい気を打ち消すようには解呪の光を当てていく……すると、王太子の瞳がゆっくりと開き、陛下と同じエメラルドの輝きが蘇る。
「あれ、私は今まで……?ここはどこで、君は誰だい?」
殿下が不思議そうに首を傾げる。そこへ陛下と、一人の女性が駆け寄る。王妃さまかしら……。
「ニコラウス!やっと目を覚ましたか!」
陛下とその女性が王太子殿下のことを抱きしめていた。
「王太子殿下万歳!」
「軍務卿万歳!」
「「「聖女さま万歳!!」」」
観衆の大歓声で練習場は大騒ぎになる。だが、その中で一人の女性が崩れ落ち倒れた。彼女は衛兵に連れていかれたようだった。きっと呪いをかけた犯人なのだろう。
「余は、世継ぎを救ってくれたリリー殿を、我が国の聖女そして賢者でもあると認定する。そして、余の持つ全てを持って彼女を保護する。邪な心を持って彼女及び彼女の友人デイジー殿、エルミーナ殿の三人を害しようとする者は、余とリリー殿の祖父である軍務卿が全力で排除すると思え!」
「「「「ははっ!」」」」
その場にいたもの全てが頭を垂れた。
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