24.王との謁見①
陛下との面会の結果、リリー達を含めた謁見は明日にでも行うということになった。
軍務卿が一日でも早く孫娘に会いたがったのもあるが、陛下自体もリリーに早く会いたいようだ。興味深い資質を持った人材だからだろうか?
家に帰ると、私はリリーとデイジーに明日謁見が行われることを告げた。
「王様に会うって何着ていったらええねん!アタシはドレスなんか持っとらんよ!」
「そうよねえ。私たちは庶民だから、小綺麗なワンピースがいいところよね」
大騒ぎするデイジーとおっとり首を傾げているリリー。対照的だな。
「冒険者の身分で謁見するんだから、いつもの装備で大丈夫だよ。陛下が二人の技術も見たいと仰っておられるそうだから、むしろその方がいいだろう」
と教えてやると、二人とも安心したようだったが、「技術を見せる?」と、そっちの方で新たな悩みができてしまったようだった。リリーもデイジーも考え込んでしまった。
◆
翌日。
私リリーは、ご領主様の馬車で王宮に向かった。緊張ですごくドキドキする。
まず最初に通されたのは、面会用の部屋だった。
私たちは、ご領主様、エル、デイジー、ギルド長、私の五人。
ドキドキして待っていると、国王陛下と宰相閣下が後からいらっしゃった。
「気楽にするが良い」
と、陛下が手振りで着席を促してくださったので、みなで腰を下ろす。
国王陛下は金髪碧眼の三十代後半位の方だった。王様と言うと、白髪にお髭を想像していたけれど、それは宰相閣下の容姿がそのままだった。
「私がこの国を治めているフュルスト・ヒルデンブルグだ。此度は奈落へ落ちてなお生還し、ハルムのダンジョンを踏破したとの事、大儀であった。して、その英雄たちの名を教えてくれるかな」
私たち三人が順番に立ち上がって名を名乗り、礼をする。
「エルミーナ・ブロンベルクにございます。剣士をしております」
「リリーと申します。後衛を務めております」
「デイジーと申します。重戦士をしております」
「ふむ、ありがとう」
陛下が三人に順に目を合わせてうなづいた。
「では、エリクサーを国に献上していただけるとのこと。出していただけるかな」
宰相閣下が促す。
その言葉に、デイジーがアイテムボックスからエリクサーが納められた宝箱を閣下に差し出した。
すると、閣下が蓋を開け、確認した後、陛下の御前に差し出す。
「ふむ、このように貴重な品、ありがたい。国宝として大切に保管しよう」
陛下の言葉を受け、閣下が宝箱を手に取り蓋を閉める。立ち上がって部屋の扉を開けると、官吏が控えていたようで、彼の手に持つ紫の布がかけられたシルバーのトレーの上に宝箱を置いた。
「さて次に、素材の買取についてだが、数が多いようなので、まずは最深部で仕留めたという邪龍ファフニールを見せてもらえるかな」
宰相閣下がそう言い、皆に移動を促した。
「おお、彼女たちがあの奈落から生還した英雄達か」
移動した先は、騎士団と魔法師団の練習場の横にある倉庫らしい。練習場は、特に人払いはしていないらしく、閣僚や騎士団のメンバーなど、この後行われるリリーとデイジーのお披露目を見に来た者もいるらしい。
ちなみに倉庫は、空間魔法で見た目以上に容量を持たせ、かつ時を止めているのだという。まるでマジックボックスの倉庫版だ。
「ここなら充分に素材を納められるだろう。龍を出してくれんか?」
みなが興味津々で眺める中、デイジーがアイテムボックスからファフニールを取り出す。
「アイテムボックス持ちか!」
「巨大な龍だ、あんなものを討伐できるなんて、まさに英雄、ドラゴンスレイヤーということか」
ざわざわと様々な感嘆や賞賛の声が上がった。
「我が国にこのような巨大な龍を屠れるものがいるとは、頼もしく誇らしいものだ!騎士たちよ、そなたらも見習って精進するように!」
「はっ!」
陛下も満足気だ。
その場にいた騎士たちは急に陛下に話を振られて居住まいを正していた。
そして、場所を移してデイジーとリリーのお披露目の番となった。まずは、デイジー。
「騎士団長を務めております、ウード・ボイルスと申します」
「デイジーと申します。よろしくお願いします」
互いに一礼して、構える。
「はじめ!」の声と共に、まずデイジーが動いた。
縮地で騎士団長の後ろを取り、小さな鋭利な刃を向けるが、騎士団長は体を捻り剣で防ぐ。その流れで騎士団長がデイジーの足元を狙うが、デイジーは軽くジャンプしてかわす。かわした先で体の向きを変えながらハルバードを回し、先端の突起で顎下を狙う。騎士団長は仰け反ってかろうじてそれをかわす。
「うーん、怪我させたくなかったけどしょうがないか。リリーあとよろしく!」
そう言って、デイジーがその場で大きくハルバードを振り回すと、百八十度前方に衝撃波が飛び、騎士団長がその衝撃に練習場の端まで吹っ飛ばされた。
「勝負あり!勝者、デイジー!」
「「「「おおおお!」」」」
会場にどよめきが走る。
「あの騎士団長と互角にやり合い、あの一撃で吹き飛ばすとは!」
「さすがはドラゴンスレイヤーの一人というわけだ!」
騎士団長も、大きな怪我はないようで、自力で立ち上がり、デイジーの元へとやってくる。
「さすがはドラゴンスレイヤー。私はまだ精進が足りないようだ」
そう言って手を差し出してくる騎士団長とデイジーが、固く握手した。
そして次は私の番になった。
「リリー様は、まずはあの魔法修練用の的に向けて攻撃魔法を披露していただきたい。ここは厚い魔法障壁をかけてあるので存分にお願いします」
そう言いながらローブを着た男性が立ち位置まで誘導してくれる。
すう、とひとつ深呼吸する。
まずは火。普通に初期魔法を大量発動しよう。但し、青い火で!
「火炎弾」
数十の青い火炎が私の周囲に浮き上がり、的に向けて飛んでいく。ドガンと音を立てて的のひとつが溶けていた。
「あの数は……」
「しかもファイヤーボールとはいえ上位の青い火じゃないか」
場が静かになっている。
次。水。
「絶対零度」
「氷の楔」
凍りついた的にひとつ氷の楔をぶつけると、的は粉々になって散った。
「……粉々ってどういうことだ?」
観衆がザワザワしている。
次は風。雷と組み合わせよう。但し、範囲はごく絞って……
「天変地異」
的の周囲の狭い範囲で、暴風雨・稲妻を伴う大嵐を引き起こし的を破壊した。
「……」
周囲は静かだ。
次は土。
「巨大岩」
的の上に巨大な岩が出現し、的を押し潰した。
光は……
「太陽光線」
私の掌に小さな太陽が顕現し、的にその光をぶつけた。当然的は溶けていた。
「素晴らしい。まさに賢者ですな」
宰相閣下がそう言って拍手する。陛下も満足気だ。
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