17.地上への道②
私たちは未踏破エリアはすべて踏破した。そこで、キリのいいところでセーフティーエリア(モンスターのでない休憩できる場所)で休憩することにした。サクサクと首を狩って進んでくれるアタッカー二人のおかげで、なんともう三十階のセーフティーエリアだ。帰りは早い。
デイジーのアイテムボックスからは、テントや寝袋など、休むのに必要なものが当たり前のように出てくる。女の子三人で寝るには十分な大きさがある。
……うーん、やっぱりアイテムボックスすごい。というか、こういう準備ができるデイジーの気遣いが素晴らしいのかなあ。
「そういえば、ケット・シーがくれた宝箱って何が入っていたの?」
ごめんなさい、すっかり後回しになっちゃいました。
「今出すねー」と、アイテムボックスをゴソゴソするのはデイジー。
貰った相手が相手だからなのか、特に罠を気にするでもなく、蓋をパカ、と開ける。
「これ、エリクサー?」
そう言ってデイジーがコクリと首を傾げた。
小さな宝箱の中には、ブルーの小瓶が三つ並んでいる。
エルが横から覗いてきて鑑定する。
「うん、本物のエリクサーだね……これは使う必要がなく帰れた場合には、扱いを考えないと騒ぎになるな」
「珍しくて貴重なものって言うのは知っているけれど、そんなにオオゴト?」
私にはいまいちその重さがわからなかった。
「ああ、王家の宝物庫にしまって置くレベルの秘薬だよ」
エルが教えてくれる。
「多分さあ。アタシらが無事に戻ると、ちょっとひと騒ぎになると思うんだよね。殺人未遂な方法でパーティー追放をした、もしくは傍観した奴らがたっくさんおるからなあ」
生還できそうなのは嬉しいのだが、そうなったらなったで起こりそうな面倒ごとにため息を着くデイジー。
「そうだな、そのあたりで揉めた時に融通をきかせておけるように、王家に献上して縁を繋いでおくっていうのもアリだな。だいたいこんなもの持ってるなんてバレたら、貴族や王族がうるさいだろうし、下手したら命を狙われかねない」
うん、エリクサーは王家に献上が良さそうだ。……って、なんかエルがしれっと言っているけれど、王家に献上なんてそうそう誰でもできるものだっけ?何か『つて』でも持っているのかしら。ギルド経由でできるのかな。
「ねえ、相談なんだけど」
話は変わって、私が、前々から思っていたことを口にする。
「あのね。多分、元の私たちのパーティーのメンバーは、『故意に突き落とした』なんてギルドに報告していないと思うの。例えば、『私たちが足を滑らせて落ちた』とか……」
「そりゃそうやろな」
「確か、故意にパーティーメンバーの殺人やその未遂行為をした場合は、傍観していた者も含めて冒険者の身分剥奪じゃなかったか?そんなのバカ正直に申告しないだろう」
三人三様に頷く。
「そこでなんだけどね。その話、口裏をあわせておかない?そっそりゃ、殺されかけて、私もみんなも思うところは色々あると思う……だけど、冒険者追放までされちゃうと、彼らが職を失うわけで……」
「まあ、その失業の逆恨みをあの人数からされたらかなわんなあ」
デイジーはちょっと想像して非常に面倒くさく思ったのか、眉間にシワを寄せる。
「まあ、みなが口裏を合わせているのであれば、証言も証拠もないしな」
冷静に、告発した場合の状況を分析するエル。
「じゃあ、私たちは、『誤って落ちて、生還しました』ってことでいいかな!」
「「了解」」
そして、もうすぐ地上という状況になった今、私にはもうひとつ大きな心配事があった。
「あと、もうひとつ……地上に戻ったら、私たちって解散……かなぁ」
そう言って、恐る恐る、デイジーとエルを交互に見つめる。その視線は、回答が怖くてつい、上目遣いになってしまう。命をかけて一緒に生き抜いてきたみんなと別れるのは、悲しい。
「アホかい、リリーは!」
そう言って、私はデイジーにデコピンをかまされた。
「全くだ」
エルは微笑んで私を見つめる。その目は柔らかく細められ、優しいものだ。
「こんな優秀な後衛さん、一生離さへんで!な、エルさん」
そう言って、私にぎゅっと抱きつくデイジー。
「ああ」
エルは、片手を伸ばしてきて、私の頭を優しくぽんぽんとしてくれた。
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