15.追放した人々②
俺は勇者ユージーン。この国の王に認定された正式な勇者だ。魔王討伐を命じられている。
そして俺の武器は正当な勇者にしか与えられない聖剣カラドボルグだ。認定式で岩からコイツを引き抜いた時は、高揚感に胸が踊った。俺の時代が来ると思った。
パーティーメンバーに、かつてSランク剣士のエルミーナが居た。漆黒の真っ直ぐ伸びた長髪に、紫の瞳。良質のレザーっぽい防具で身を包んだ、細身で鍛えられたその身体は女性らしいラインを描いている。冷たい感じではあるが、美人だ。
この選ばれし勇者の俺が、彼女に付き合おうと言ったら、「好みではない」と、こともあろうか断られた。
だから、他のパーティーメンバーに異論を受けないよう、印象操作のために、エルミーナのその冷たい雰囲気を利用して、パーティーメンバーの回復師のアリスと魔術師のケルトに嫌われていくよう仕向けた。そして、エルミーナをハルムのダンジョンの奈落に突き落とした。印象操作が功を奏したのか、メンバーからの異論は上がらなかった。
ところが、彼女を落とした次の日、いつものように剣を持とうと思って握ったら、『重すぎて』持てなくなっていた。非道な行いをしたせいで、聖剣から見放されたらしい。だが、そんなこと誰に言える。聖剣を使えない勇者は勇者ではない。
俺は、有名な武具の贋作を行っている男に、聖剣とそっくりな剣を作らせた。後暗い仕事の依頼には膨大な費用がかかり、出来上がった剣には当然聖なる力など何も無い。
魔族討伐も上手く進まなかった。何せ贋作の聖剣に、Sランク剣士の不在だ。Sランク剣士の代わりなんてそうそう空きがあるわけが無い。代わりに入ったのは、かろうじてAランクの剣士ダンだ。
……次に王宮に報告するのが憂鬱でならない。
◆
俺は、Bランクパーティーの「疾風の剣」のリーダー、剣士のトオルだ。最近俺たちのパーティーのダンジョン探索が思うように行かなくなった。
ダンジョンに深く潜ろうにも、マジックボックスを持っていっても、あっという間に素材でいっぱいになり、深層まで潜れない。……容量の大きいマジックボックスなんて、とんでもない値段だから買えやしないし。
それに、食事が携帯食の硬いパンや干し肉になったのが結構きつい。
これらの不便さは、パーティーメンバーに、かつて居た、ポーターその他雑用ををやらせていたデイジーの不在が原因だ。あいつ今までどうやって膨大な量の荷物を持ってたんだ?
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