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13.ダンジョンマスター

「奈落攻略おめでとうにゃん!」


 突然知らない人?の機嫌のよさそうな声がする。今頭に浮かんだ職業選択のことはあとに置いておこう。そう思っていると……。


「おや、リリーさん。これから地上に戻るまでにはアンデッドのフロアもあるにゃん。新しい職業は聖女を選ぶのがオススメにゃん」


 え、考えてること読まれてる?しかも、ギフトのことも見えてるの!?

 私は慌てて部屋をキョロキョロ見回す。


 すると、ファフニールが溜め込んでいたであろう黄金の奥に、石造りの台座があり、その上に青く澄んだダンジョンコアと思われる石が置かれている。声の主は、その前に置かれた玉座の上に悠然と座っていた。


「申し遅れましたにゃん。吾輩、このダンジョンのダンジョンマスターにゃ。種族は誇り高き猫の王、ケット・シーなのにゃ!王は全てをお見通しにゃん!」


 ケット・シーと名乗ったその猫は、犬ほどのサイズの大きな長毛のハチワレ猫で、毛色は全体的には黒だが、お腹と顔の下、鼻と口周りが白い。『王』らしく、頭には金と宝石で装飾された赤い王冠を乗せ、金の王笏を持ち、赤いマントを羽織っている。


「かわいい~♡」

 猫が大好きな私は、興奮で頬を染め、両手を組みあわせて、キラキラした目でケット・シーを見つめる。


 ケット・シーは玉座をぴょんと降り、二本足でぽてぽてと歩いて私の元にやってくる。エルとデイジーの二人も私のそばに集まってきた。


「リリーさん、いくら吾輩が魅力的だからといって惚れてはいけないにゃん。キミたちには、これから無事に吾輩のダンジョンを脱出して貰わなければならないからにゃん」

 キザな仕草のつもりなのか、『ノンノン』と人差し指を立てて左右に振る。


 その時、私のそばに来たエルが、私たちの会話に口を挟んだ。そして、今までずっと気になっていた()()()()を口にする。

「私たちは奈落に落とされて、生き延びることが出来ました。それは、あの安全な部屋があったことと、私たちに必要な装備が宝箱に収められていたことが大きいと思っています」


 一度言葉を切り、エルがケット・シーの黄金の瞳をじっと見つめる。

「あなたが、私たちを生かそうとしてくださって、()()して下さったんですか?」


 その問いに、ケット・シーは「うむ」と一つ頷く。


「吾輩はずっとこのダンジョンを見守ってきたにゃん。そして、キミたちが石橋から突き落とされるのも……」

 そこで、急にケット・シーの金色の瞳がうるうると涙で潤んだ。


「あの石橋のエリアは吾輩のさらに上位者の意思があって、構造を変えることが出来ないにゃ。事故であれ、故意であれ、ここ奈落に落ちてしまったもの達は、みんなモンスターに殺されてしまったにゃ。吾輩は悲しかったのにゃ。だから安全な『白の部屋』を作ったけど、それでもそのうち食料が尽きて死んでしまうのにゃ」


 とうとうケット・シーは、「うにゃあん」と泣き出し、ケット・シーは涙をボロボロこぼす。私がローブの裾をケット・シーの目元にそっと当てて涙を拭ってあげた。

 ケット・シーの黄金の瞳が私をじっと見上げた。


「だけどある日突然、キミたちが三人一度に落ちてきたにゃ。キミたちはお互い見知らぬ同士なのに、回復したり、助けに行くために危険なモンスターと戦ったり、食べ物を分かちあったり、優しくていい子達だったにゃん。だから死なせたくなかったのにゃん」


 ケット・シーは、ふう、と昂った感情を収めようとひと息つく。


「吾輩の手助けがあったとしても、キミたちはよく頑張ったのにゃ。上に上がって地上に無事に帰って欲しいにゃん」


 思いを語り終えると、ケット・シーは手に持つ金の王笏をクルクル振るって、ひとつの小さな宝箱を出現させた。

「これも持って帰るといいにゃん。それと、(やつ)が集めた黄金も持っていくがよいにゃ」

下記をどうかお願い致します(。ᵕᴗᵕ。)


駆け出し作家の身ではありますが、すこしでも

・面白かった

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