12.ファフニール戦
かけられるバフも全部かけた。装備は万端。
「行くよ」
そう言って、エルが両手で両開きのボス部屋の扉を開けた。
そこには、部屋を埋め尽くす黄金に埋もれた、邪龍ファフニールの巨体があった。
眠っていた彼はゆっくりと起き上がり、私たちにこうべを向ける。そして積み上がる黄金から足を引き抜きながら、ゆっくりと私たちの方へ歩み寄る。
『汝ら我が黄金を奪いにきたか』
私達の頭に直接ファフニールの声が響く。
「黄金のためではない。我らがこの牢獄から抜け出すために、汝を屠る!」
エルがそう宣言した時。邪龍がこうべを掲げ、大きく吠えた。
『生意気な!我が炎に身を焼かれ後悔するが良い!』
吼える口腔の奥に、炎がチラつく。ファフニールは火属性の竜なのだ。
「氷結」
普段の上位版の足止め魔法を唱える。
ファフニールは子供の児戯とばかりに凍りつこうとする足元を振るって、氷結を阻む。
攻撃しようと駆け寄るエルとデイジー二人を、ファフニールがその翼で薙ぎ払う。
「「ぐぁっ」」
風圧をくらった二人は壁に打ち付けられた。
「ヒール」「ヒール」私は彼女たちを回復する。
彼女たちは回復を受けて、姿勢を持ち直して、敵の隙を狙う。
「絶対零度!」
私は、ファフニールの前足だけに向けて、最上級の氷結魔法を打ち付けた。
この世界に存在しえない冷気に襲われ、ファフニールの前足が床に貼り付けられる。怒り狂って前足を強引にはぎ取ったファフニールの前足は、液体窒素に凍らされたバラのようにボロボロ崩れ去る。
「ギャオオオオオ!!」
怒り狂って、失った前足ではなく胴体で体を支えるファフニール。
エルとデイジーがその隙を逃さず、二人同時に駆け寄り、その両翼をそれぞれ切り落とす。
ファフニールは逃げるための翼と、足も半分失った。
「コォォォォォ……」
逃げ場を失ったファフニールは、頭をもたげ、彼の口腔に炎の塊が渦巻く。炎を吐き出す準備をしている……。
「氷の壁!」
厚い厚い氷の壁をファフニールの前に!そう私の魔力に指示する。
ファフニールは長い首を振り回して部屋中に炎を撒き散らす。しかも、その炎は驚くほど長く吐き出される。当然だ。相手だって命がかかっているのだから。
「氷の壁!」
しかし私も壁が溶けきる度に再び展開し続けた。その結果、ファフニールの炎が枯渇するまで氷の壁によって私たちに大量の炎が到達することはなく、僅かに氷の壁から漏れた炎は、私たち三人ともが容易に避けることが出来た。
『『ファフニール』のための、『グラム』がエルの手にあるのだ。後、もう少し隙を作れれば……』
「氷の楔!」
私が無数の氷の楔をファフニールの顔に向けて打ち付け、彼の両目に集中的に突き立てる。突然視力を奪われ、混乱して無駄に首を振り回すファフニール。
「デイジー!」
「ラジャ!」
その隙を見て、エルとデイジーが跳躍する。
そして、ファフニールの首を半分づつ切り裂いた。
首が、ゴロリ、と転げ落ち、ズゥゥゥゥンとその巨体が横だおれになり。その後起き上がることはなかった。
そして、お約束通りにアレが頭の中に響いた。
【賢者のレベルが上限に達しました。以下の職業を追加で選べます】
・聖女
・空間魔導師
・時魔導師
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