番外編 カレンとリラの初デート
カレン視点です
「はぁ、はぁ、ごめん、ごめん!待った?」
「いいえ、全然。
って一緒にここまで来たけれど……
これ、本当に必要なの?」
「必要!デートの醍醐味やん!」
「変な醍醐味ね」
今日は、リラと初めてちゃんとしたデートをする為に王都の城下町に来た。
アンズ様はお留守番だ。
こんなちょっとした事でも面白くて、クスクスと笑ってしまう。
「はい♪」
「何?」
「おっと、言わな分からんよな。
手ぇ繋ぎましょ、ね♪」
そう言って、彼は手を握る。
「こっ!この繋ぎ方はおかしくないかしら!」
「え。恋人ってこれ以外に繋ぎ方あるん?」
全部の指が絡んでいる繋ぎ方なんて有るのか、無知過ぎて分からない。
まるでこれが当たり前かの様に、リラはキョトンとしている。
恥ずかし過ぎるわ!世の恋人達はこんな繋ぎ方をしているの!?
リラはあっち!と言って引っ張るので、付いて行くが手汗を心配してしまう。
「歩くのもえぇな~。ほら、見てあの人絶対ヅラやん」
「駄目よ、リラ。人に指差しては。
で、ヅラってなに?」
「カツラ」
「ふっ!やめて!見ちゃうじゃない!」
こうやって、私の緊張を解いてくれているのを知っている。
それに、少し引っ張られただけでリラは私に歩調を合わせてくれる。
気遣い屋さんよね。
「うわ!クレープ有るやん!食べたい!食べよ!」
「クレープ?」
「美味しいで~デートといえばクレープ♪どれにする?」
「分からないからリラのオススメで良いわ。好き嫌いも無いし」
「任せろ!おっちゃん、チョコバナナホイップとイチゴカスタード!」
「あいよ~」
お支払いしようとしたらサラッと出されてしまったわ。
その内財布一緒になるし、気にせんとってとか言いながら。
甘い香りのする薄い生地に、具材が乗ってクルクルと巻かれるそれはとても可愛らしい。
彼が甘党だとは知らなかった。
「さ、どっちが良い?」
「ん~……、イチゴかしら?」
「やんな!持ってみて?………似合う!!可愛い!」
「…ありがとう、似合うとかあるのね」
「ある!」
リラは直ぐに褒めるからむず痒い。
クレープを受け取り、一口食べるとイチゴの酸味とカスタードの甘み、そして生地の薄くてモチモチした食感が合わさってとても美味しかった。
「わ~、ここの生地めっちゃモチモチしてて美味いなぁ!」
「本当ね。とても美味しいわ。手で持って食べるのも良いものね」
「あ、そっか。カレン、お嬢様やもんな。
そっち、一口ちょーだい」
「私も其方の味が気になるわ」
「じゃあ、少し交換やね」
交換してリラの方を食べるとこちらもとても美味しい。全部甘いものなのに喧嘩をしていない。
「此方も凄く美味しいわっ」
「お気に召したみたいで良かった」
「あら、ちょっと待って。リラ、カスタードが付いている」
私はハンカチを出してリラの頬のカスタードを拭き取る。
彼は手が塞がっているから。
「ははっ、くすぐったい。ありがとう。舐めとってくれても良かったんやで?」
「なっ!!何を言っているの!しないわよっ」
ニヤリと笑いながら直ぐにからかってくる。
「え~、デートの醍醐味やのに」
「多いわね、デートの醍醐味」
食べ終わるとまた歩き出す。
他愛も無いお喋りがとても楽しい。
「着いたー!チューリップの花畑!」
今日の目的は、此方だ。
この時期綺麗だとお母様に聞いて一度来てみたかった所。
「…凄い。本当に一面チューリップだわ…」
「あ、ちょっとカレンそこ座って?」
彼はベンチに私を座らせて、大きな鞄の中からスケッチブックを取り出した。
サッサッと足を駆使して器用にデッサンを始めたので見守る事にした。最近知ったのだが、彼はこうなったら暫く動かない。
真剣な顔でデッサンをする彼は、芸術家なのだと再認識する。
「よし、出来たっ」
と、一枚私に手渡してきた。
受け取るとそこにはチューリップを背景にした私が居た。
「私?」
「そう、チューリップとカレン。めっちゃ似合うなと思って。描きたくなった」
「…ありがとう。とても素敵ね」
絵の中の私は微笑んで居た。彼にはこう見えているんだ、と心が温かくなる。
「あ、手冷たい。冷えちゃったな、ごめんな」
そう言って彼は私の両手を自分の手で温めてくれる。
大きな手だ。
「リラは恥ずかしくないの?」
「ん?何が」
「こういうの」
「全然!!カレンの事触れてたいから」
「そ、そうなの。ここは人目も有るし、私は恥ずかしいわ…」
「……人目が無かったら大丈夫なんかな?」
「えっ!そ、そ、そういう訳じゃ……」
「カレン、可愛いっ」
そう言うとリラは私を抱き締めた。
「……恥ずかしくは無いけどな。ドキドキはするで?」
いきなりでびっくりしていると、彼がボソリと呟いた。
丁度耳元で心臓の音が聞こえる。
なんだ、リラも私と一緒なのね。




