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矢が刺さったのは覚えている。
そこから意識が遠のく瞬間のゲイルの心痛な顔が脳裏に焼き付いている。
私の為に泣かないで、愛しい人
光の中に居た。何だか懐かしいな。
私はゆっくり意識をはっきりとさせる。
『もうっ!ここへ来てはいけないでは無いですかっ!!』
そう言って、相変わらずモコモコふわふわな女神様はプンプン怒っている。
『光属性の少年が居たから良かったものの…。あなたは死に急ぎ過ぎですよ!』
「ごめんなさい。反省しています」
『ですが、精霊界の事はこちらよりの話…。天界の者にとっても嘆かわしい事でした。普段介入は致しませんが、今回は特別です。
ルーチェはアンズから離し、精神を正常化した後下級精霊からのやり直しが決定しました』
「カレンは大丈夫なのですか?」
『えぇ。あなたの癒しの力で生命に別状はございません。但し、魔力の消耗が激しいので魔力供給は引き続き行って貰っています』
「そうですか…良かった」
『自分の事は聞かないのですか?』
「え?あ、忘れていました。私はどうなるのでしょうか?」
『ふふふ。本当にあなたは変わっているわね
お帰りなさい。
愛しい者が待つ場所へ』
女神様は最後に『もう今度こそ寿命でこちらにいらっしゃいね』と言っていた気がする。
また、私の意識は遠退いた。
*********
右手が温かい。
重たい瞼を上げると目いっぱいに木目が見えた。
何だかこの感じも懐かしいな。
「マリー!」
「…け、コホコホッ」
ゲイルは手を握って居てくれたらしい。
目が赤く腫れている。
酷く喉が乾いていた。咳き込んでいると、上半身を抱き上げ水を飲ませてくれた。
「ありがとう、何だか喉がカラカラ」
そう言って微笑むと、ゲイルはガバッと私を抱き締める。
「5日も眠っていたんだ…。スカルフは怪我は無いが深く眠っていると言っていた。…マリーが、何処かに……行ってしまうかと思った……」
弱々しく言葉を発するゲイル。肩が震えている。
苦しい程、存在を確認するかの様に抱き締められた。
「ただいま、ゲイル」
そう言って、私よりも大きな背中を撫でる。
「おかえり、マリー。良かった、本当に…」
「ふふ、後で色々どうなったのか教えてね?」
「あぁ、今は離してやれない」
「ねぇ、ゲイル。私ね、分かったよ」
「何?」
「矢に刺さった時、ゲイルの顔が見えたんだ。私ね、ゲイルに悲しんで欲しく無いって思った。それと同時に、ゲイルを助けられた事が本当に嬉しかったの。
でもね、こうして起きる事が出来て間違いだったんだなって思った」
「間違い?」
「こんなになる貴方を私は想像して居なかったの。
ちゃんと食べてる?ちゃんと寝た?」
「いや、手を握って居ないと怖くて…殆ど何も」
「やっぱり。頬が少し痩けてる。
ゲイル、私ね本当は長寿で生涯を全うするはずなんだって」
「マリー?」
「きっとこの先、長生きするわ。
貴方の為に。
だからね、
私と結婚して下さい!!」




