74
そして、カレンの誕生日の日がやって来た。
闇の最高位精霊をアレンが連れて来てくれる事も有り、家族や親しい友人のみの厳重な警備態勢にてパーティーが開かれる。カレンの周りは強い人間ばかりだ。
その他の警備は必要無い。
「おめでとう、カレン。本日はお招き頂きありがとうねっ!」
「いらっしゃい、マリー。今日は来てくれてありがとう」
「あぁ、とても綺麗になったな。カレン」
「ふふ、ゲイルったらそういう事はマリーに言うのよ?」
「分かっているさ」
「か、カレン、エディは来るの?」
「あら、本当ね。招待しているから、もう少しで来るかしら?リラもまだね?」
今日のカレンはとても美しい。
まだあどけなさは残るが、大人の顔に近づいている。
あの後も、カレンは頑張って居たらしいのだがこの日が無常にも来てしまったという。
この間直接的にエディに好きだ、と言っても「俺もカレン好きだぞ!」と元気に言われたらしいので分かっていないと嘆いていた。
そこで諦めが付いたのだと、先日手紙をくれたので知っている。
脳筋過ぎるよ、エディさんよ。
「来た」
ゲイルが上を見上げながらそう言うので、そちらを向くと天井に雲の様な渦が出来ていた。
ファミーユ様を筆頭に皆がピリッと警戒をしている。
すると、光りの道が出来アレンが顔を出した。その横には、小さな美しい毛並みの黒猫がいる。
猫はこちらを向くと目を輝かせて、カレンの元に飛んで来た。
『カレン!!久しぶりね!私、頑張ったわ』
「アンズ様、お久しぶりです。またお会い出来て光栄です」
『もう、あんな事はしない。約束だもの』
「約束ですね」
アンズと呼ばれた猫は、とても嬉しそうだ。そして、フッとカレンに息を吹き掛ける。
すると、カレンの目が透き通る様な空色になる。
「あぁ、お久しぶりです。アレン様」
『ご無沙汰だな、カレンよ』
「ご健勝で何よりです」
『アレンおじちゃまずっと居たけどね』
精霊達とカレンはそう言うと微笑み合う。どうやら皆が思っていた最悪の事態にはならない様子で安心する。
「アンズ様ご成長なさいましたね。カレン、良かったわね」
「お母様、ありがとうございます」
「では、貴女の婚約者を紹介するわ。ここへ」
ファミーユ様が侍女に向けて指示をすると、扉が開く。
そこにはエディやライラック、ゲイルと戦争で行動を共にした人物が居た。
「スカルフ=ダチュラ、と申します。本日はお招き頂き感謝します」
そう言う彼はまだあどけなく見えるが、ゲイル達の2つ下で金色の瞳、そして金色の髪を短く切り揃えている。
The皆の弟枠の子犬系男子だ。
「…わ~。まさかのスカルフだ」
私は小さな声で独り言ちてしまったのだが、隣のゲイルには聞かれていたらしくコクコクと頷かれている。
カレンは納得しているのか、表情を和らげ挨拶する。
「お初にお目に掛かります、カレン=アンバートと申します。本日はありがとうございます」
『ねぇ、カレン。あの人、何だか変よ』
『アンズよ、お主そういうのはもう止めたのでは無かったかの?』
「アンズ様、ご心配要りません。彼は超特級の光属性です、故に私達には少し明るすぎるのでしょう」
『ん~…そうなのね。何か違う感じがするんだけど…』
精霊達とカレンはそれは小さな声で会話をしている。
アンズはカレンに擦り寄り守る様に前へ出た。何故かは分からないが、アンズの毛は逆立っている。
「『み~つけた♪』」