73
「まさか、マリーから迎えに来てくれるなんて思って居なかったから嬉しい」
「もうっ、さっきからそればっかり!そんなに嬉しかったの?」
「とても。
そして、助かった。正直、毎日あぁで中々キツかったんだ」
「そ、そうだったんだ。大変だね」
「普通に質問しに来る生徒が少な過ぎる…皆何しに来ているんだろう」
ゲイルはそう言うと、遠い目をしている。
そんなにキツかったのか、ゲイルが弱音を吐いているなんて初めてである。
不謹慎かもしれないが、それを聞いているのが自分だと言う事に胸がキュンとなる。
「ふふ、素敵な先生が居たら私が生徒でもあんな感じになるかもよ?
ゲイルでも弱音を吐くんだね」
「そうなったら出会えて居なかったな。生徒は、生徒だ。
俺は小さい人間だぞ?こういうのが嫌で引き篭っていた節も有るから。
教師自体は大変だが、やり甲斐を感じる。人を教えて得られるものが沢山有る」
「うん、それは感じてた。凄く良い顔してるもん」
「そうか?それは、嬉しいな。
全部、マリーのお陰だ」
「そんな事無いよ、ゲイルが頑張ったからだよ」
「頑張る原動力はマリーだ。マリーが来てから世界が変わったんだ」
ゲイルは握る手を少し強めながら微笑んで、私を見つめる。
正直で、ストレートな言葉が本当に嬉しい。
この人の事が大好きなんだ、と何回も認識してしまう。
生徒相手に懸想する様な事も無さそうで、酷く安堵もしてしまった。
私は森に入り、アレンが気を使って先に行ってくれた事を良い事にゲイルに抱き着いた。
ゲイルはびっくりしていたが、愛しい気持ちが堪えきれずに溢れてしまったのだ。
何も言わずにギューギュー抱き締めてくる私に、ゲイルは頭を撫でてくれて優しく抱き締め返してくれる。
あちらでは愛されてはいたがシングルマザーの母は忙しくて、甘やかされた記憶が余り無い。
母が亡くなり、働いていた時も生きる事に充実しつつも必死だった。
この温かさは、現実なのだと確認している自分がいる。
甘えられる相手がここに居る。
甘えても良いのだ、と泣きそうになる。
無くしたくない。
「マリー、今日のご飯は何が良い?」
頭を撫でながらゲイルは私に問う。
「クリームシチュー…」
「了解。家に帰ろう?アレンが待っている」
「うん!」




