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「…ありがとう、リラ。今は気持ちだけ頂くわ。少し、頑張りたい事が有るの」
「カレン…」
カレンは困った様に笑った。
分かってはいても、ギリギリまで気持ちに嘘は付けないんだろう。
「大丈夫よ、マリー。ゲイルもそんな顔しないで。私、気持ちの整理が付いていないだけなのよ。馬鹿よね?」
「そんな事無いよ」
「あれ、しんみりさしてもたな。なんか、ごめんな?」
「いいえ、貴方のせいではないの。私ね、エディの事が好きなの」
「か、カレン!」
「ふふ、ありがとうマリー。リラには伝えておいても大丈夫よ」
「…成程。それは、難しいな…彼奴は天然なる脳筋やもんな」
「そうなの。結構頑張っているつもりなのだけれど…中々気付いて貰えなくて」
「そっか。でも、頑張りたいんやな?」
「えぇ」
「よしっ!じゃあ、応援する!」
「ありがとう、リラ」
「その代わり、アカンかったら俺の横いつでも空けてるからおいでなっ」
リラの明るさのお陰でカレンもニコニコと頑張るわと意気込んだ。
意外にお似合いな二人かもしれない、けれど頑張るカレンを応援しよう。
「カレン、私も応援するっ」
「俺もだ」
「皆、ありがとう。リラだったら実力的にも大丈夫だと思うから、誰も居なかったらお願いするかもしれないわ」
「あ、もしかして闇の最高位精霊の事か?」
「あら、よく分かったわね」
「いや~実はあの時、国からめっちゃ怒られてんなぁ。ほら、カレン嬢担当みたいなもんやったやろ?なんで助け無かった~って言われたみたいやな。実は色々頑張ってたみたいなんやけど…
あ、また俺余計な事言うてるみたいや」
「…ライラック先生が?」
「カレン嬢に構って欲しくてしてた節もあるからなぁ~」
「「「え?」」」
バンッ!
皆が驚きの声を出した瞬間、リラが白目を剥いて机に突っ伏した。
「いたたたた…。はぁ…出て来る予定無かったんだけどな…。御機嫌よう。彼は寝てるよ」
「お前、ライラック…なのか?」
「久しぶりだね、ゲイル。皆、さっきの話は気にしなくて良いよ」
おでこを強打して起き上がったリラは紫の瞳が深く濃くなり、口調が変わってしまった。
ニコニコとしているが、先程とは打って変わって作り物っぽい。
ライラックだ…と即座に分かる。
「殻に篭っていると聞いていましたが…出入りは自由なんですね」
「マリーちゃんだね?初めまして…かな。自由では無いよ?実は、もう大部分を彼に取られているけれど殻に篭っている分、【ライラック】が少し残っているだけの状態かな。
今は余りにも余計な事ばかり言うから強制的に入れ替わった」
「お前はそれで良いのか…?」
「心配してくれるの?」
「そりゃあ、そうだろう」
「はは、相変わらず偽善者だね。君の事は昔から嫌いだったよ。
僕はあの時死んだんだ。だから良いのさ。彼、僕とは違って良い奴だろ?
出来れば、表になんてもう出たくないね。
戦争も、利き手も無い僕なんて用済みだろうしね。夢も希望も元々無いよ、このまま消え行く運命だ」
ライラックは淡々と話し、そして光の無い暗い目をしている。
本当に彼は病んでしまったんだ。
するとカレンが徐に立ち上がり、ライラックのおでこに指を差す。
ライラックはびっくりする様子も無く、光の無い目でカレンを見た。
「ライラック先生。私、貴方が苦手でした。でも、私の為に奔走してくれていたなんて初めて知ったのです。ありがとうございました」
「…何をするんだい?」
「お礼です。また、先生に会えて良かった。良い夢を」
カレンの指が黒く光り、ライラックはゆっくりと意識を失った。




