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『帰ったか………の?おや…、その様子は漸くくっ付いたか』
帰ると私達を見てアレンは察したのか、ニヤニヤしている。
そりゃあ、そうだ。
手を繋いで帰って参りました。
恋人繋ぎです、はい。
私は真っ赤だがゲイルは嬉しそうにニコニコしている。
この人本当に余り笑わない人だったか?
「アレン、想いを伝えたんだ。マリーとは恋人同士…で良いのかな?」
とゲイルが確認を取ってくるので、勢い良く首を縦に振った。
何だろう、推しが素敵過ぎて辛い。
早めに不安取り除いてくるスタイルなの?そうなの?
『ほぅ…。良かったの、マリー』
「あ、ありがとう、アレン」
アレンは2人の気持ちを知っていて、見守って居てくれていたのだと今なら分かる。
お世話掛けてます。
嬉しくて、何だか泣きそうだ。
「マリー、もう少し話したいのだが大丈夫か?」
ゲイルはそう言って椅子を勧めてくれる。
頷いた、私を座らせて頭を撫でお茶を入れるゲイル。
甘やかしが酷くなった。
「ありがとう」
お茶を受け取ると、ゲイルも何時もの場所に座る。
「マリー、正式な婚約者になって欲しい。同じ気持ちな事はとても嬉しい。
だからこそ、正式な物にしたい。」
「婚約者…か。私、ゲイルのお嫁さんになるの?」
「あぁ。夫婦になる約束をしよう」
「うん、とっても嬉しいんだけど…。
ま…まだ、結婚とかは早いというか…私で本当に良いのか不安だな…」
「…マリー?」
「あっちでは、婚約者がいる人って本当に少なくて…私にも縁遠い物だったんだ…。
だから、暫くはまだ仮初のままでいる事を許して貰っても良いかな…?
恋人期間をた、楽しみたいというか…そ、そんな感じなんだけど…」
ゲイルを悲しませる事は分かったのだが、これは譲れない。
ゲイルと同じ気持ちだった事は本当に嬉しいが、それと結婚は別だ。
もう少し考える時間が欲しい。
婚約者に成ればほぼほぼ自動的に結婚だ、なんて事は私にも分かる。
こちらに来てから1年経ってもいないのだ。
今だけの感情で無い事を願いたいが、吊り橋効果という言葉がある。
恋人同士にならなければ分からない事も沢山有るだろう。何せ男女間のそういう経験がゼロなのだ。
「…そうか。気が急いてしまった様だな、すまない」
「ううん!ゲイルは悪く無くて!これは私の気持ちの問題なの…経験が無くて…」
「経験?」
「誰かと恋人同士になった事も、人を好きになる事も初めてなの」
「…そうなのか?」
「うん。だからね、心の準備が必要」
「そうか。なら、マリーが婚約者になりたいと言ってくれるように頑張るとするよ。恋人を楽しむ期間か…それも良いな」
ゲイルは納得して、とても柔らかい顔でそう言ってくれた。
なんて素敵な人なんだ、貴方は。と、ついグラッとしてしまったが結婚は一生物!と自分を叱咤した。
『堅物じゃの、マリー。まぁ、1年契約しているのじゃ。ゆっくりすれば良い』
アレンは少し呆れた様に片目だけ開き、耳をパタパタさせている。
「うん、ありがとうね。ゲイル、アレン」
少し罪悪感で胸がチクリとした。
そんな私の表情が見えたのだろう、ゲイルが立ち上がって手招きしてくる。
そして、ギュッと私を抱き締めた。
「気持ちは一緒なんだ。1年と言わず気持ちが離れてしまわない限り居てくれても良い。俺はマリー以外考えられないけれど、マリーが伴侶として認めてくれたら教えて?」
「あ、ありがとう」
私が納得した事で満足したのだろう、おでこにキスをして髪を整えられ、頬を撫でられ見つめられている。
ちなみにニコニコしている。
後光が酷い。
目が潰れる。