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「美味い~、美味すぎる~」
ゲイルが作ったドリアを、リラは嬉し涙を流しながら食べている。
既に夕食時になってしまっていたので、皆でご飯タイムだ。
「本当に…、ケーキの時も思ったけどまさかゲイルのご飯がこんなに美味しいだなんて…。手際も凄く良くてびっくりしたわ」
「そう言えばカレンも食べるのは初めてだったね」
「そうね。お母様やお兄様達にも教えてあげなくては」
「…いつか振る舞えたら良いのだが」
「楽しみにしているわね」
ゲイルとカレンは微笑み合っている。何だか、前に比べて2人の兄弟感が増している気がしてほっこりした。
「ご馳走様でしたー!あ~、なんか久々に上手い飯食った気がする…」
「リラ、和食に飢えてると言うか美味しいご飯に飢えてたんじゃ無い?」
「マリーちゃん、それや。そんな気して来たわ。勿論、味噌汁は飲みたいけども」
「お味噌汁か~確かに、暫く飲んで無いなぁ…」
「味噌汁?」
「味噌っていう大豆の発酵食品で作るスープの事だよ!」
「そんな物が有るのか。飲んでみたいな」
「美味しいよ~」
ご飯を食べ終わると皆で片付けをした。
「さてと、居心地良すぎて長居し過ぎたな~色々ありがとう、皆。カレン嬢送ってくで!何処まで?」
「大丈夫だけれど…折角ね、お願いしようかしら。役所までよ、そこに魔法陣が有るの」
「おっけー。じゃ、お二人さんまたな!」
そう言ってリラとカレンは手を振り、帰って行った。
「ゲイルも、アレンもありがとうね。いきなりでビックリしたでしょ?」
『我の事は気にするで無い。楽しませて貰ったのでな』
「いつも、ありがとうね。私、生まれ変わったらアレンの元で仕える精霊になりたいなっ」
『何を言うておる。その時は可愛がって進ぜようぞ』
クツクツと笑うアレンを抱き締めて、感謝の魔力を送る。
アレンのお陰でゲイルが冷静だった気がするからね。
「俺の事も気にしなくて良い。だけど…マリーがライラックの事が好きだったなんて初耳だな」
「え!?」
そういえば、ゲイルが帰って来た時にそんな事を話していた。
ゲイルは何故かとても悲しそうな顔をしている気がして、焦ってしまう。
「えっと…ライラックの事も好きだったし、エディの事も好きだったし漫画に出て来る登場人物は基本的に皆好きだったよ!だから見続けてたしね。でもね、1番は…ゲイルだったんだ」
「俺?」
「う、うん!【推し】っていってね、1番のお気に入りの事を推しって言うの!」
何言ってるんだろう。と途中で思ったが、ゲイルの悲しそうな顔を見たくなくて言い訳の様に恥ずかしい事を次々と暴露してしまっている。
「推し…」
「だからね!ゲイルと初めて会った時本当に嬉しかったけど…推しって遠くから眺める物だから早く独り立ちしたかったんだ!」
「…そうだったのか。あの頃のマリーは、確かに常に何かに追われていたな」
ゲイルは薄く笑ってはいるが、益々表情を暗くしている。
「…マリー、それは恋愛感情なのか?」
「え!推しの事?違うよ?」
「…そうか」
そう言うとゲイルはとても苦しそうな顔をして、私の手を取り無言で引っ張って外に出た。
引っ張られているのに、痛くは無くて優しく握る彼。前を歩いている為、顔が見えないので不安な事ばかりが頭をよぎる。
何か駄目な事でも言ってしまっただろうか。
もしや、私の想いに気付いて苦しませたのでは無いだろうか。
優しいゲイル、私の大好きな人。
ゲイルに連れられた場所はあの湖だった。
夜で暗い湖に向けてゲイルが呟き、指先が何かを描くと水面がキラキラと光出して明るくなった。
とても美しい光景だ。
いつも来た時に2人で眺めている所で止まり、振り返りざまに抱き込まれてしまった。
「…マリー、俺は男としてマリーの1番になりたい」




