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「ていうか、ライラックさん。呼鈴くらい鳴らして下さい。いきなり入ってくるのは非常識です」
「え、呼鈴有ったん?一応ノックはしてんけど聞こえへんかった?」
「…聞こえませんでした」
「あ~、ごめんやで。他の家とか初めて来たから」
「まぁ、良いです。今日は何の用ですか?」
「冷たっ。今日は漫画の話聞こうと思って来たんやけど」
「それは、すみません。
私、ライラックも好きだったんですよ」
ゴトッ
「…ただいま」
「「「あ」」」
いつの間にか、ゲイルとアレンが帰って来ていた。
きっと、急いでくれたんだろう。
ゲイルが少し肩で息をしている。
何故か持っていた本を下に落としたらしく、ゲイルは無言で拾っている。
「げ、ゲイル、おかえり!」
「…何もされていないか?」
「何もしてないって~話しに来ただけやもん」
「…お前は、誰だ?」
「あ、やってもた。術掛けるん忘れてたわ」
「術?」
どうやら、危険は無いと瞬時に分かったらしくアレンは定位置で静かにしている。
そんなアレンを見てゲイルも大丈夫だと判断したのか、前の様に臨戦態勢にはならなかった。
ライラックはまた1から説明をゲイルにしていて、ゲイルも納得した様だ。
「理解した。だから、マリーと話したい訳だな」
「そうそう~、この間のアレは流石にやり過ぎたとは思ってるねん。俺も悪かったんやけど、ちょっと顔出した【ライラック】に引き摺られてもた。ごめんやで?
マリーちゃんしか今んとこあっちの事知ってる人居らんからなぁ、和食談義とかもしたいわぁ」
「過ぎた事は気にしません。そして私、お米あってラッキーくらいで和食に余りこだわり無いんですけどね」
「え、そうなん?信じられへん。今時の子やな」
「ゲイルのご飯が美味しいんで」
「ずっる~」
「マリー…この人本当にライラック先生なの?」
「私も信じられない」
「まぁ、本人は殆ど殻に閉じこもってるからなぁ。二重人格みたいな感じやな。嫌いちゃうけど、小難しい性格しとるし」
「二重人格?」
「一人の中に自分とは完全に違うもう一つの人格が有る人の事だよ。感情の裏表じゃなくって赤の他人がもう一人いる感じ、かな?」
「それやな。まぁ、【ライラック】の事は全部知ってるし、魔法陣とかも自然に出て来るからちょっと違うかもやけど。人格もその内溶け合えば良いかなぁと思ってるとこや。これが中々上手くいかん」
「そうなんですね…」
「とりあえず、暗い話はこれくらいにして漫画の事聞かせてや!俺、漫画めっちゃ好きやねん~スポ根、極道、熱血、恋愛、ホラー、ミステリーなんでもござれ!」
「ん~ジャンル的には熱血成長ファンタジーですかね?」
「なにそれ、大好物!!」
私は立ち上がり、いつかカレンに話した時のように身振り手振りを使って長編漫画の内容を伝えた。
「続きっ!!!続きが気になる!!」
「そうなんですっ!続きが気になる!」
「ていうか、俺死んどるやんけ!確かに腕切られたし、川に落ちたけど!葬式は挙げてないぞ!」
「いや、挙げるかの瀬戸際だった」
「え、そうやったん?怖っ」
「そういえば、ゲイルに内容話すの初めてだね?」
「そうだな。カレンは聞いていたんだったか?」
「えぇ、面白くてね。良く聞いているのよ。ライラック先生の話は初めて聞いたかしら?」
「そうかも!長過ぎるから掻い摘んで話してるの。主にカレンにはエディの成長部分とゲイルの登場シーンを伝えたかな?知り合いの話の方が面白いでしょ?
ライラックさんと知り合いだって知らなかったから」
「そうだったのか」
「あーー漫画読みたいわぁ。ほんまは描きたいんやけどなぁ」
「え、ライラックさん漫画家志望?」
「そやねん、実はな。読むのも好きやけど漫画家目指してたんや」
「マリー、あれを見せてやったらどうだ?」
「うん!ちょっと待っててね!」




