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森のげえむ屋さん  作者: 平野文鳥
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第9話 『クリエイティブってなに?』

「もっと自由に考えたいなぁ! モグ~~~ッ!」


 とつぜんモグリンさんが大きな声でひとりごとを言いました。


「どうしたんですか?」


 ぼくがモグリンさんにきくと、モグリンさんは頭の後ろで手を組んでイスにふんぞりかえりながら言いました。


「次のゲームの企画なんだけどさぁ、前回のゲームの流用りゅうようにしてくれって、社長が言うんだよ」

「りゅうよう? りゅうようって、どういう意味ですか?」

「つまりぃ~、前回作ったゲームのプログラムをほとんど変えないで、見た目や遊び方だけを変えるということだよ」


 そう答えるとモグリンさんは、前から考えていたというオリジナルの企画書を不満そうにポンと机の上にほうり投げました。


「どうしてムカついているんですか? ラクそうでいいじゃないですか?」


 ぼくがそう言うと、モグリンさんはあきれた顔をしてぼくに言いました。


「わかってないなぁ、きみは……。そういう問題じゃないんだよ。オイラみたいな、つねに新しいものに挑戦したい企画屋にとっては、ちっともクリエイティブじゃないから楽しくないんだよ」

「楽しくないって……。仕事だからしかたないと思いますが」


 モグリンさんはちょっとワガママなのかなぁ? と、ぼくは思いました。でも、モグリンさんの言ってることもわからないわけではないです。だってぼくだって、いつも同じ絵ばかりかかされて、かきたい絵をぜんぜんかかせてもらえなかったら、仕事に不満をもってしまうだろうなと思ったからです。


「気持ちはわかりますワン!」


 そばにいたゼロワンさんがぼくたちの会話に加わってきました。


「ボクもモグリンさんが言うように、いろんな新しいプログラムに挑戦したいですワン。でも、そういう仕事をするには、もっと大きなゲーム会社にはいらないとむずかしいと思いますワン。なぜなら、それってお金もかかるしスタッフもたくさん必要ですからワン」


 するとモグリンさんが言いかえしました。


「そうかなぁ~? クリエイティブなことをするって、お金とかスタッフの数の問題じゃないと思うけどな。どんな状況だろうがやる気さえあればできると思うよ」


 ゼロワンさんは、モグリンさんのもっともらしい意見に黙ってしまいました。


「だったら、流用でもクリエイティブなゲーム企画は考えられるはずだよね」


 とつぜん仕事場に入ってきたファルコン社長がモグリンさんに言いました。どうやら社長はとなりの社長室で、ぼくらの話をコッソリと聞きいていたようです。モグリンさんは、すごくあわてた顔で社長の方を振り向きました。


「どんな状況だろうが、やる気さえあればクリエイティブなものは考えられる……。う~ん、すばらしい考え方じゃないか、モグリンくん! じゃあ、やる気をだしてがんばってくれたまえ。期待してるよ」


 社長はニコリと笑ってモグリンさんの肩をポンポンとたたき、社長室へもどって行きました。


「は、はいっ! がんばりますっ!」


 モグリンさんは、さっきとはまるでちがった態度で元気よく社長に答えました。それを見ていたぼくとゼロワンさんは、なんかおかしくなって、思わずプッとふきだしてしまいました。


「な、なにが、おかしいんだよぉ~!」


 モグリンさんは顔を真っ赤にして、机の上にほうり出していた自信作の企画書を引き出しの中にしまうと、ブツブツ言いながら流用ゲームの企画書を書き始めました。


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