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森のげえむ屋さん  作者: 平野文鳥
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第3話 『ドット絵とコンピュータ』

 テレビ画面に表示されている『マス目もよう』には、縦長の長方形のマスが縦に16個、横に16個ならんでいました。ファルコン社長はさらに説明します。


「この『ドット』いうマスのひとつひとつを塗りつぶしながら、絵を描いてもらうんですよ」

 ぼくはその話を聞いて、小さいころにお父さんに連れてってもらった銭湯で見た『タイル画』を思いだしました。

「ちょっと描いてみますか?」

「え、どうやって描くんですか?」

「テーブルの手前についているゲームレバーを動かしてドットを選び、ボタンを押してください」


 言われたとおりにやってみると、ドットのひとつに色がつきました。


「そうそう、その調子! 色を変えたいときは、マス目の横にあるパレットから選んでください。全部で7色あります。時間をさしあげますから何か自由に描いてみてください」


 そう言うとファルコン社長は自分の席へもどってゆきました。ぼくはドットをポチポチとひとつひとつ塗りつぶしながらロボットの絵を描いてみました。


「ワンワン! わぁ、うまいですね。では、かんたんなアニメも作ってみませんか?」


 ぼくの作業をそばで見ていたゼロワンさんが言いました。


「アニメ? そんなのができるんですか」

「ええ。では、その絵をいったんセーブしますワン」

「セーブ?」

「次に新しい画面を出しますから、ちがうポーズのロボットの絵を描いてみてくださいワン」


 ゼロワンさんが何をしようとしてるのかぼくにはわかりませんでしたが、とりあえず言われたとおりにかいてみました。しばらくして、ロボットが走るポーズの絵ができたので、ゼロワンさんにそれをつげると、彼は「ワン!」と言ってキーボードをカターン!とたたきました。すると、どうでしょう。さきほど描いたロボットの絵と、今描いたロボットの絵が2パターンのアニメとなって画面にあらわれたのです。


「わぁ、動いてる、動いてる! ブブ~!」


 ぼくは、いとも簡単にアニメがつくれたことに感動しました。


「ワン! いい動きですね。 今のテレビゲームのキャラクターのほとんどは、こうやって描かれているんですワン」


 ぼくはゲームはきらいだったけど、ゲームのドット絵を描くのはおもしろそうだなと素直に思いました。


「ほぉ、これははじょうずだ! 合格ですね。どうです、ブブさん。私たちといっしょにテレビゲームを作ってみませんか?」


 もどってきたファルコン社長が、ぼくが描いたドット絵を見ながらそう言いました。


「なんか、おもしろそうですね。 ブブー!」


 ぼくは興奮しながらそう答えました。


「ワン! コンピューターはこれからどんどん進化しますから、これから、もっと、もっと、おもしろいことができるはずですワン!」


(これから、もっと、もっと、おもしろいことができる——)


 ぼくはゼロワンさんが言ったことにワクワクして、この仕事にものすごく興味がわいてきました。そして、この仕事をやってみたいと思うようになりました。


「あの…、ぼくでよろしかったら、よろしくおねがいします」


 ぼくは頭を下げてファルコン社長にそう言いました。


「そうですか、来てくれますか。じゃあ、ブブくん。あしたからよろしく!」


 こうして、ぼくは面接に受かり『森のげえむ屋さん』という名まえのゲーム会社で絵を——いや、ドット絵を描くことになりました。


 あんなにゲームがきらいだったぼくなのに、自分でも不思議な気持ちです。もしかしたら、ぼくはゼロワンさんが言ってた、どんどん進化して、もっと、もっと、おもしろいことができるという『コンピュ

ータ』というものにつきあってみたくなったのかもしれません。

 ぼくはゲームがちょっと好きになりそうです。

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