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森のげえむ屋さん  作者: 平野文鳥
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第26話 『ゲームが変わる?』

「ゲ〜ムは、ニャムコ〜♪」


 ゲーム好きの動物たちにとても人気のあるゲームメーカー『ニャムコ』のテーマソングを口ずさみながら、モグリンさんが昼食から帰ってきました。


「どうしたんですか? ずいぶんごきげんですね」

「ブブくん。さっきゲーセンに寄ってきたら、ニャムコが新作のロケテストをやってたぞ」

「へぇ。で、どんなゲームでした?」

「それが、またまた新しいタイプのゲームでさ、『ルドアーガの塔』という名まえなんだ」

「ルドアーガの塔?」


 ニャムコのゲームはいつも斬新でおもしろく、新作が出るたびにお客さんが行列をつくってしまうという超人気ぶりでした。前回発表された『ゼニウス』というシューティングゲームも、そのドラマ性のある独特の世界観でテレビゲーム史に残る記録的な大ヒットとなりました。


「ブブくん、RPGって知ってるよね?」

「アール、ピー、ジー? なんです、それ?」

「知らないの? ほんとに勉強不足だなぁ……。RPGっていうのは『ロール・プレイング・ゲーム』の略で、プレイヤーが剣と魔法の世界の主人公になりきって遊ぶゲームなんだ。パソコンゲームでは有名だけどね」

「主人公になりきる? それって、プレイヤーがお芝居でもしながらゲームをするんですか?」

「ま、まぁ、テーブルトークの方はね。コンピュータの方はちょっと違うけど……。で、そのRPGのフンイキを取り入れたのが『ルドアーガの塔』なんだ」

「よくわからないけど、おもしろそうですね」

「だろ? 見に行ってみる?」

「もちろん!」


 ぼくとゼロワンさんは、ミーちゃんに『ゲームの市場調査に行ってきます』と言って、そのゲームが置いてあるゲームセンターへと向かいました。


 たくさんのお客が取り囲んでいたそのゲームは、今までのゲームセンターのゲームの常識からはずれたものでした。どういうことかというと、それまでのゲームセンターのゲームは、たくさんのお客さんに遊んでもらうことでインカム(収入)を上げていたので、ひとりのプレイヤーがあまり長時間遊べないようにしていました。ところが、『ルドアーガの塔』はその逆で、ひとりのお客さんが長時間遊べるようにしていたのです。

 でも、それではインカムが下がりそうな感じがしますよね? ところが、実際はその逆で、『ルドアーガの塔』に『はまった』ひとりのお客さんが、ゲームオーバーになっても続きがやりたくてテーブルの上に100円硬貨を山積みにしてじゃんじゃん使うので、結果的にインカムが上がっていたのです。


「なんか、これからのゲームの方向性がガラリと変わってゆくような予感がするなぁ。モグ……」


 モグリンさんは腕組して『ルドアーガの塔』に夢中になっているお客さんたちを見ながらそうつぶやきました。


「変わるって、どんな風にですか?」

「つまり、これからは今までのようなアクションゲームばかりじゃなく、謎解きや映画のようなドラマ性のある、もっとじっくりと遊べるゲームが増えてきそうな気がするんだ」

「でも、そんなゲームはゲームセンターにあわない気がします。だって、お客の回転が悪くなりそうだから」

「まぁ、たしかにそれは言えてるけど……」


 そんな話をしている途中、ぼくはやっと客がはなれた『ルドアーガの塔』のゲームテーブルを見つけ、他の客に先をこされないように走っていってテーブルにつきました。そして、ワクワクしながら100硬貨を1枚入れてゲームを始めました。


 ゲームの流れは、だいたいこんなかんじでした――


 剣を持ったよろい姿の主人公を操作して、迷路になったフロア(部屋)の中の敵を倒しながら出口へと向かいます。しかし、出口にはカギがかかっています。(カギはどこだろ?)と思いながらフロアの敵を全員倒すと、とつぜん通路に宝箱があらわれました。そして、宝箱の中に入っていたカギをゲットして出口に向かったらステージクリアできました。


 横で見ていたモグリンさんが、さらに遊び方を分析しました。


「たぶん、そんなかんじで各フロアを謎解きでクリアしながら塔の上階へ進んで行き、最後に塔の頂上フロアにいるボス……つまり、この塔の主であるルドアーガを倒してさらわれたお姫さまを助け出す、という流れなんだろうな」

(おもしろい! たしかに今までのゲームセンターのゲームとはちがうぞ……)


 ぼくはこんなゲームを遊んだのは生まれて初めてです。正直、じっくりと時間をかけてやってみたくなりました。でも、それではお金がいくらあってもたりません。


「モグリンさん。このゲーム、家でゆっくりと遊べたら最高でしょうね」

「だったら、そのゲームテーブルごと買っちゃえば?」

「高すぎてムリですよ」

「だよなぁ。ああ、こんなゲームが家でも遊べたらなぁ……」


 それからぼくとモグリンさんは30分ぐらい『ルドアーガの塔』を遊んでゲームセンターをあとにしました。


 会社にもどると、ゲーム専門誌を手にしたゼロワンさんが興奮しながらぼくらに向かって大声で言いました。


「モグリンさん! ついに出るみたいですワン!」

「出るって……なにが?」

「ゲーセンのゲームが遊べる家庭用ゲーム機ですワン!」

「え〜〜〜っ!? マジ? 見せてっ!」


 モグリンさんは、すごいスピードでゼロワンさんのもとへかけより、ゼロワンさんが持っていたゲーム専門誌をひったくると、目をカッと見開いて記事を読み始めました。


「ハァハァ……なになに……『この秋、ニンチャン堂からついに発売! その名もパミリー・コンピュータ。 ゲームセンターのあの人気ゲームが家庭でも遊べるぞ!』すげえ! モグモグ〜ッ!」 


 モグリンさんは興奮し、ツバをとばしながらぼくに大声で言いました。


「ブブくん、変わるぞ! ぼくの予想通り、テレビゲームは大きく変わるぞ!」


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