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森のげえむ屋さん  作者: 平野文鳥
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第2話 『面接』

 面接を受けるテレビゲームの会社は『森のげえむ屋さん』という名まえで、『都会の森』の一番にぎやかな場所から少しはなれた所にある、おんぼろマンションの3階にありました。

 会社の入口のドアベルをならすと、中から「はあ〜い!」という声とともにネコの女の子がドアから顔を出しました。


「あ、面接のかたですね? おまちしてました!」


 ネコの女の子はニコニコしながらぼくを中へとおし、応接用のソファーにすわるように言いました。

 中はちょっと広めのワンルームで、奥のほうに4匹の会社員がいました。


 一番近くの机にいたのは、ヘッドフォンをかけた、ちょっとこわい顔をした鳥さんで、パソコンの画面を見ながらリズムにのって首をフリフリしていました。


 そのとなりには、丸いメガネをかけたネクラそうなモグラさんが、なにかブツブツとひとりごとを言いながらパソコンのワープロを打っていました。


 さらにそのとなりには、とてもまじめそうなフンイキの犬さんが、ものすごいスピードでパソコンのキーボードをカタタタタ……と、機関銃のように打っていました。

 そして、一番おくの窓際の机にいたのが、30代ぐらいのキツネさんで、窓の外の青空をジ〜ッと見つめていました。


 (ずいぶん小さな会社だなぁ。それに、みんなへんな動物さんばっかりだし。ネコの女の子はかわいいけど……)ぼくはちょっと不安になってきました。


「社長。おみえになりましたよ!」


 ネコの女の子がキツネさんにそう言うと、そのキツネさんはスクッと立ち上がり、キビキビとした歩き方でぼくのもとへやってきました。どうやらそのキツネさんは、この会社の社長さんだったようです。


「ようこそ。私はこの会社の代表をやっておりますファルコンともうします。では、さっそくですが履歴書と作品を見せていただけますか?」


 ファルコン社長はそう言うと、ぼくがわたした履歴書と作品に目をとおしはじめました。

 仕事をしていた社員たちはぼくのことが気になったのか、全員でぼくのことを横目で見ていたようで、ぼくがみんなの方をみるといっせいに目をそらしました。


 「テレビゲームはお好きですか?」


 履歴書を読んでいたファルコン社長が、顔を上げてぼくに質問をしました。


 「ブ? あ、はい。もちろん!」


 ぼくはウソをつきました——。けっこう自分は『したたか』だな、と思いました。


 「絵がお上手ですね。ただ、うちでは紙の上に描いてもらうことはほとんどありませんが、それでもかまいませんか?」

 「ブ? どういうことですか?」


 ぼくは社長の言っていることの意味がわかりませんでした。


 「じゃあ、こちらへどうぞ」


 ファルコン社長はそう言うと、ぼくをキーボードを機関銃のように打ちまくっている犬さんのそばまでつれていきました。犬さんの横にはなぜかゲームセンターにあるゲームテーブルが置いてありました。


 「ゼロワンくん。ツール、たちあげてくれる?」

 「わかりましたワン!」


 ゼロワンという名まえの犬さんが、かろやかにキーボードを打つと、となりに置いてあったゲームテーブルのテレビ画面に不思議な『マス目もよう』があらわれました。


 「ここに絵をかいてもらうんです」

 「ブ? ここに……ですか?」


 ぼくが不思議そうな顔をすると、ファルコン社長がふたたびゼロワンさんに「あれを見せて」と言いました。ゼロワンさんが再びかろやかにキーボードを打つと、テレビ画面の『マス目もよう』の中に、カクカクした猿さんの絵があらわれ、それがピコピコと動きはじめました。ぼくはビックリしました。


 「これは、ドット絵というんですよ」


 口をぽかんと開けているぼくの顔を見ながら、ファルコン社長はそう言いました。


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