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プロローグ

 地平から覗く二つの月が(そら)を彩る世界。二つの満月が世界を嗤い、月の魔力が世界を満たす夜、魔物は我が物顔で世界を闊歩する。



 これは、そんな世界に生きるとある魔女の物語。





 誰も居ない静かな森の中、一人佇む魔女はぽつりと零した。見上げた空にぽかりと浮かぶ二つの満月。



「もうこんな時期なのね。ついこの間集会に行ったばかりだと思ってたのに。そろそろ出なくちゃ遅刻しちゃうわ」




 十年に一度、(そら)を彩る二つの月が同時に満月になる夜、魔女達は集う。それは泡沫。長い生を持つ彼らの宴であった。

 二つ月(ふたつづき)の満月の夜、人間達は月の魔力に魅入られぬよう家の扉を固く閉ざす。一度月の魔力に魅入られてしまえば二度と今までの生活には戻れない。元々の魔力の有無にかかわらず精神は狂い魔のモノへと変質してしまうのだ。魔のモノ―――魔獣や魔木、魔人、魔女など―――を恐れる人間達は例え家族であっても魔に魅入られた同族を処刑してしまう。勿論、魔のモノも討伐対象だ。

 



「確かコレ美味しかった気がするのよね。丁度良いし手土産に加えましょうか」



 今宵もまた、二つ月の魔力に狂った哀れな獣が宴へ向かう魔女に狩られた。それは魔の森と呼ばれる人間の居ない場所での出来事だった。狩られた獣は冷たくなり小さな魔石へと姿を変える。



「あ!失敗しちゃった。捌いてお肉にしようと思ってたのに~」



 無表情で命を狩った魔女の口から、なんとも情けない言葉が漏れた。先程までは冷徹な光を湛えていた瞳も肉を惜しむものへと変わっている。食べ物を持って行くつもりだったのに、とぼやきながらも魔女は魔石を回収し再び先へと進み始めた。魔女にとって十年に一度の集会だけが仲間()に会う唯一の場所。そこへ向かう魔女の足取りは軽く、フードの下から覗く口角は笑みを形作っていた。



「皆元気かしら」


 声を弾ませて、魔女は集会の行われる異界への扉を潜る。魔女が扉を閉めると、一瞬空間が歪みそして何事もなかったかのように再び扉は消えた。


 異界で行われる魔女達の集会で何が起こっているのか、それを知る者は魔女達以外に存在していない。



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