口は災いの元なんだが???
朝だ。
今日も公務で判子を押す仕事があるらしい、昨日捌いた量はそれほど大したことはなかったので今日も頑張らなければならない。
「陛下、おはようございます。今日の朝食はホールインワントーストになります。」
「あっ、そうなの。」
ホールインワントーストとは初めて聞いたがトーストに目玉焼きが乗ったようなものだった。
いい匂いだ。
「あむ・・・美味しい!」
「山越巨人達も喜びます。」
「メルバ、今日の予定は?」
「本日の御予定は御公務のみです。他の御予定をお入れ致しますか?」
「いや・・・いいかな。書類捌きを頑張ろう。」
「畏まりました。ではそのように」
「よろしく。」
俺は来る書類仕事に備えて朝食をおなかいっぱい食べた。
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執務室の前に行くと一人待っている人がいた。
「陛下、本日もよろしく御願い致します。」
「あれ、今日はアフリール一人?」
「はい、それぞれの仕事がありますので・・・」
「そりゃそうか・・・よろしく。」
アフリールを引き連れて執務室に入る。メルバがお茶を用意するとそのまま去っていった。
うーんアフリールと二人きりになってしまったぞ・・・
「あ、あの、アフリール。今日は始める前に簡単に字を教えてくれないかな。メルバが来る前にでいいから・・・」
「わかりました。このアフリール、陛下の御期待に添えるよう微力を尽くします。」
「そ、そんなかしこまらなくても・・・ありがとう。」
それからアフリールの文字教室を始めてもらい少し字を覚えることにした。
魔界の文字は何種類かあるようだが一番使われているのは共通規格文字だ。
このコモン、アルファベットのような文字かと思ったら漢字のような文字だった。ちょっと意外で覚えるのが大変そうだと思ってしまった。
「・・・なので、この文字はこうなります。後はもう実際に文字を見ながら覚えてもらった方が早いですね。」
「そっかぁ後は慣れだね。」
「そうですね。書類仕事の字ではいささか難しいので・・・何か本をご用意致しますね。それで覚えていただければ。」
「わかった。ありがとう。」
「いえ、お役に立てましたら光栄です。」
「陛下、お茶をお持ちし・・・おや、何をしていたんですか?」
「ああ、文字を教えてもらってたんだ。」
「文字を!?・・・くっ・・・」
「?」
メルバがなにやら唸っているがどうしたのだろうか・・・それよりも文字だ。
言葉は通じるが文字が読めないのはなかなかしんどい。
早く読めるようにならないと精神的にまいりそうだ。
「がんばらないと。」
少しずつ前に進もうと思った。
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文字の勉強の後はひたすら判子を押す・・・押す・・・押す・・・
「押す・・・押す・・・ん?」
「陛下、どうかなされましたか?」
「ねぇメルバ、ちょっと気になったんだけど。」
ふと気になった。
ふと気になったんだがこれが余計な一言だったことは後で気が付いた。
「国王が誕生したって式典はやらないの?」
「式典・・・ですか・・・」
メルバが唸り込んでしまったらアフリールが代わりに答えてくれた。
「国王が誕生したということは召喚の儀式の際に鐘を鳴らすことになっています。この鐘は特別な鐘です。国民はこの鐘の音で国王陛下の誕生を知ることになります。」
「へぇ・・・そうなんだ。」
「この鐘は国王が崩御なされた時にも鳴らされます。なので式典等は催しておりませんが国民はこの特別な鐘の音をとても大事にしているんですよ。」
「へぇ・・・」
「式典・・・やりましょう。」
「は?」
「え?」
「式典やりましょう。」
「ちょ、ちょっとメルバ??今まで式典なんかやったことなかったじゃない。」
「陛下が誕生しましたが男性だということや姿は公表していません。この後城下町を散策したりなど国民の前に出た時に混乱を避けるべく誕生パレードを催して陛下のお姿を知らしめておいた方が良いと思います。」
「め、メルバ?」
「式典やりましょう。アフリール、書類を作りますよ。」
「メルバはこうなったら止まらないから・・・はぁ」
「ちょ、ちょっと待って俺の意見は?」
「残念ですが陛下、国を挙げての行事なので・・・」
「あっ・・・そうなのね・・・」
大変な事になってしまった気がする。余計な一言だった気がする。それに気づいた時にはもう遅かった。
やる気に満ち溢れたメルバと粛々と書類を作るアフリールを見たらもう止める気は起きなかった。
パレード・・・どうなっちゃうんだろうなぁ・・・