王様稼業は大変なんだが???2
無心で判子を奮う・・・判子・・・判子・・・
「あっ陛下こちらの書類に関しましては説明が・・・」
「あっそうなの。」
アフリールに横で説明してもらい書類を眺める。
うん、読めない。
「・・・という内容ですので、ご承知のほどを。」
「うんわかった。」
判子を押すとアフリールがサインをする。順番が変だと思うが魔法のペンらしく書いたサインはフワリと溶けて消えた。
防犯用らしい。
「・・・。」
ドスっドスっと判子を押す音だけが響く執務室。
「陛下、お茶を淹れましょうか。」
「ん!?ああ、メルバ。それじゃあ全員分頼むよ。」
「全員分ですね。かしこまりました。」
メルバが外に出ると書類を分けている四人の中に取り残されてしまったような感覚になる。
き、気まずい・・・
「・・・。」
「陛下。」
「へいっ」
「こちらの書類なのですが4枚で一括りになっていますので判子は最後の1枚だけで御願い致します。」
「へい。」
空気が・・・メルバ早く帰ってきて。
「陛下。」
「へいっ」
「へい?・・・こちらの書類は後回しで御願いします。」
「あっそう・・・」
「?」
四人に手伝われながら書類を捌いていく。まったく読めないので何が書いてあるかわからないが。
アフリール達が把握してるなら大丈夫だろう。
めいびー。
するとドアがノックされメルバが入ってきた。
「お茶をお持ちしました。陛下。」
「メルバ・・・!」
「?」
淹れてくれたお茶を飲みながら一息つく。
うん、美味い。
「しかし、陛下が勤勉な方で助かりました。」
ジオグレータがお茶を片手に書類を眺めている。
「この量の書類を捌くのにはちょっと骨が折れるからね。フスフル。」
「財務だけでもかなりの量があります、外務ともなれば更に多いのでは?」
「なに、アフリールほどではないでしょう国王陛下の不在で仕事は滞っていたはずです。」
「こちらも余裕はありませんね・・・」
優雅な会話が繰り広げられている・・・
成り立ての俺では場違い感がすごい・・・
「あの私、陛下がどのような方か知りたいですわ。」
エクサイル!?急に話題を振られても困る。
「私もです。陛下、御教え願えませんか?」
「御教えって・・・言っても・・・」
何を教えたらいいんだ・・・?
名前・・・?趣味・・・とか・・・?
「名前はジュンイチ・・・趣味はソロキャンプ・・・かな?」
「まぁソロキャンプとはいったいなんですか?」
エクサイルぐいぐい来るな・・・
「一人で・・・野営・・・みたいなことかな・・・?」
「一人で・・・?」
「野営・・・?」
うん・・・そうなるよね・・・
「うん・・・一人で野営・・・木を削って食器を作ったり焚き木をしたりして・・・」
「陛下は単身での潜入等の経験がお有りですか?」
「単身で潜入・・・!?そんなの無いよ。一人で楽しんでいるんだ。」
「お一人で・・・お友達等はいらっしゃらなかったのですか?」
「うん・・・?ソロキャンプはソロっていうくらいだし一人でやるもんだよ。一人の時間を大切に出来るのがソロキャンプの良いところかな・・・うん・・・」
ぼっちだったしキャンプ行ってくれる友達はいませんでした。
へこむ。
「なるほど野営と言っても一人の時間を楽しむものなのですね。魔界ではあまり無い文化ですね・・・」
「魔界じゃそういうの無いの?こう、一人の時間を楽しむ趣味とか。」
「一人で打ち込む仕事等はありますがそれを趣味にする者は少ないんじゃないでしょうか。」
「裁縫等を趣味にする者は多いと思いますよ?」
「それはお茶をしながら集まってやる趣味でしょ?」
あーだこーだと話し合いが始まり、お茶の進みが早くなる。
メルバが全員にお茶のおかわりを淹れたところで収まった。
「皆様仕事が残っていますよ。」
鶴の一声だった。
そうだったそうだったと皆が書類に向き合い、俺も判子を持ち直す。
夕食も忘れ書類と向き合って少し怒られた。