王様になるんだが???
朝、になった。だがドッキリプレートは出てこない。代わりにベーグルなどの朝食プレートが出てきた。
「もぐ・・・あの・・・」
「なんでしょう陛下」
「俺はなにをこれからすればいいんだ・・・?」
「御公務は明後日からとなっておりますが・・・今日はお付きの方々をご紹介する予定です。」
どうやらドッキリでもなんでもなく、俺は王様をやらなければならないらしい。この様子では夢でもないようだ。コーヒーに似た、コーヒーモドキを飲んですっきりとした頭がそれらの結果を何度も再確認される。
「そっか・・・その前に、この国のことを教えてよ。王様になるのに何も知らないんじゃ話にならないから。」
「そうですね・・・朝食ついでに私達のことをお教えしましょう。まずこの国に住まう我々、魔族についてですが魔族というのはそのままここ魔界にすむ者たちを指します。人間とは違い、体の一部に魔獣のような特徴が現れています。」
ぶっちゃけよくわからん。この世界に住んでれば魔族らしいが。
「私の純正悪魔には角と羽、後は尻尾や脚などが現れます。直結するわけではありませんが現れる部分でレアリティも上下します。他には沼蛇魔女、上位悪魔、夢魔等様々な種族がおります。」
「その・・・レアリティってどういうことに用いられるの?ただの格付けってだけじゃないよね。」
「はい。レアリティは主にスキルの習得に関係いたします。」
「スキル・・・?」
「はい。スキルというのはそのまま、技能です。裁縫や料理に始まり、魔法や剣技と言った様々なスキルが存在します。スキルは本人のレアリティによって発現するものが違います。高いレアリティほど希少な技能が現れますが、それだけでは国は回りません。
平凡なスキルによって経済は支えられています。」
「へぇーそうなんだ・・・確かに剣がめちゃくちゃ強くてもご飯は食えないからなぁ・・・」
「魔族、レアリティ、スキルについてはご理解いただけたでしょうか。」
「うん。なんとなくだけど・・・」
「そうですか・・・まぁそれも追々。それでは他のお付きの方々を紹介しましょう。」
メルバが指を鳴らすと天井から人影が降りてくる・・・天井を見上げても人影が降りてこれるような場所は無い。なんでじゃ。
「にゃあ。」
「にゃあ?」
天井から降りてきた人影の頭にはネコミミ。ネコミミモードとか懐かしいネタを引っ提げてきた天井からの来訪者は片膝をついて挨拶をした。
「陛下の隠密をやらしてもらってる猫魔のコミカにゃ。よろしくお願いしますにゃ」
「よ、よろしく・・・」
「にゃあに御用があればいつでも呼んでくださいにゃ。それでは、にゃ。」
コミカが再び天井に消える。いったいどうなってるんだ。天井は出入り口じゃねーんだぞ。
「今のがコミカです。陛下の隠密です、陛下のおはようからおやすみ以上お守りする存在です。御用があればお呼びください。」
「わかった。」
「次に行きましょう。」
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城内を歩き回って使用人達に挨拶をしていく。みんな角があったり羽があったり耳が特殊だったり尻尾があったり、たり、たり・・・・
「覚えきれん・・・!」
「だと思います。」
「ならなんで決行したんだ・・・!」
「形式ですので。追々覚えていただければ・・・顔も見たことがないというのは不安ですし。」
「はぁ・・・」
「まぁ城内で働いている皆さまは数百人程度なのでそのうち覚えますよ。」
「(大丈夫なのかな・・・)」
うろうろと城内を歩いていると俺の部屋の扉くらいひと際おおきな扉を見つけた。というか、扉が多すぎるし似たような扉も多いしもうなんのこっちゃねん。
「なぁメルバ、ここは?」
「ここは図書室です。中に司書は今いませんので、後でもよろしいかと。」
「ほーん」
そういえば字も読めないから中に入ったところでなにも出来なかった。いやメルバに読んでもらえばいいのか。
「後で見てみよう。字は読めないけど。」
「気になりますか。」
「一応ね。字もいずれ読めるようにならないとね。」
「そうですね。陛下は勤勉であられる。」
勤勉ね・・・いまだに自分が王様になるなんて信じられない。でもやらなきゃならないらしい。今会ってきた城内の住人達は皆王様の誕生を祝福していた。こうなるともうやらねばならない。やらねばやらねばとねばねばしていたところへメルバが足を止めた。
「陛下。」
「ねば・・・やらね、え、なに。」
「これからは予定を少々変えて、外の庭を見に行きましょう。」
「庭?なんで?」
「お茶にしましょう。」
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・
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「・・・。」
「・・・。」
青空の下、小さな白いテーブルをメルバと囲みお茶をすする。城内の中庭には庭師であるメイド達がゆったりと手入れをしている光景が目に入る。
「あ、そうだ。」
「どうしました?」
「おーいコミカー」
「にゃあ。」
せっかくだから呼ぼう。お茶仲間は多い方が良い。というかメルバには気を使われてばかりだ。今朝といいさっきといいどうにも落ち着かなくてメルバには迷惑をかけてしまった。
「にゃんでしょうか陛下。」
「コミカも一緒にお茶どうだい?」
「にゃ?」
「メルバも、いつまでも机のそばにいるだけじゃなくて一緒にどう?」
「いえ・・・陛下と同席するなど私には身にあまります。」
「にゃあ・・・にゃあも同じく・・・」
「ああそう・・・」
いいじゃない同席するくらい。やっぱり王様と従者では馴れ馴れしくするものではないのだろうか。
「にゃあは戻りますにゃ。陛下、ゆっくりお茶を楽しんでくださいにゃ。」
「私は新しいお茶請けとお茶のおかわりをご用意いたします。」
そういってメルバとコミカは離れていった。というかコミカは天井?に戻っていった。天井ないのにどこにいったんだろ。というかまた気を使われた?
「はぁ・・・」
王様初日からこれでは先が思いやられる。とにもかくにも王様稼業という未知の仕事をなさねばならないのに従者達との会話がこれでは壊滅的だ、ぼっちの俺にはレベルが高い。
「はぁ・・・・・・」
そうだそもそも俺はぼっちだったのだ。その俺にコミュニケーションを多々要求される王様になれなんて無理無理
「はぁ・・・・・・・・・・」
「陛下」
「は!?」
「何かお困りのようでしたので・・・どうかなさいましたか?」
「いや・・・その・・・」
「ふむ・・・さしずめ自分には王様なんて無理だーっとお考えだったのではありませんか?」
「は?」
エスパーかよ。あ、いや魔法使える悪魔だし頭の中を覗いたり出来るのか。
「陛下はお考えがお顔に出やすいので。」
前言撤回、俺がわかりやすいだけだった。
「陛下、確かに王とは要求されるものが高い職ではあります。しかし召喚ではそれが務まらない者は呼ばれません。きっと陛下は立派に務めを果たすことでしょう。」
「そうかな・・・」
「それに私達も全力でサポートを致します。不安かもしれませんが私達と一緒にがんばっていきましょう!」
にこやかに微笑み、ぐっと力こぶを作るメルバは俺のことをとても信頼していてくれているようだった。