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目と目が合うんだが???

目があった。それだけのことと言えばそれだけのこと。なのにメルバはミストレルに飛びかかり取り押さえた。


「陛下!誰か!陛下を別室に!!」


俺は他にいたメイドに連れられ別室へと向かう。メルバ、何もそこまでしなくても。


「陛下?御無事ですか?」


「頭痛がするとかないですか?」


「うん。無いよ。ありがとう。」


しばらくするとメルバがやってきて俺の目を覗いて来た。


「・・・うん。魅了は出てない。」


「メルバ・・・?」


「陛下お気をつけくださいと言った筈です。」


「うん、ご、ごめん。」


「少し、シャバークについてお話しします。」


メルバから聞いた話は驚くべき話だった。シャバークの夢魔(サキュバス)達は特殊で、目を合わせた相手に魅了魔法をかけ、精をもらうのだという。驚きなのがこの魅了魔法、男女関わらず、半自動で相手にかける。その効果は絶大で、ほぼ意のままに操る事が出来るのだという。


「ほんの一瞬でしたがそれでも魔法をかけるには十分。陛下は運が良かった。」


「そ、そうなのかな。なんとも無かったけど。」


「ミストレル様御一行は部屋に戻ってもらいました。悪意は無いとはいえ、ショックでしょう。」


「そう・・・だね。」


「シャバークはその魅了魔法で支援を得て来ました。我が国が支援しているのも、何代も前の陛下が魅了され、半永久的な支援約束をしてしまった為です。」


「そんな悪どい事をする子達には見えなかったけど。」


「そうですね。普通なら種族的にそんな事はしない種族です。支援の約束を取り付けた時は相当切羽詰まってたのかと。」


「そうなんだ・・・」


話を聞く限りはそんなヤバい匂いはしない。そして、ちょっと確信めいた事が俺の中ではあった。


「メルバ、ミストレル達に会いに行こう。」


「で、ですが、気まずいだけです。」


「メルバが乱暴に取り押さえた事も謝らないとね。」


「そ、それは・・・あの時は仕方がなく・・・」


「大丈夫だよ。なんとなくだけどあの一瞬でわかった気がする。」


「は、はぁ・・・?」


「行くよメルバ。部屋に案内して。」


「え・・・」


「メルバ。」


「わ、わかりました。その前にお召し替えを。ホコリが舞いましたので。」


「わかった。」


適当に着替え、ミストレル一行の待機部屋に向かった。


・・・・・・・


・・・・・・


・・・・・


・・・・


・・・


・・



また、やってしまった。


うっかりしていたでは済まされない。一国の、それも強大なソビエルツキーの国王を魅了してしまった。


祖先が使った姑息な手、2度と使わないと国で決めてからそれほど経ってない。我が国は、終わりだ。


「・・・。」


「ミストレル様・・・」


「我が国は・・・終わりです・・・皆に、伝えないといけませんね。」


「で、ですが、魅了が成功したなら更なる支援を・・・」


「ダメです。それは。絶対にしちゃいけない。人間から精をもらうのとは訳が違うんですよ。」


「・・・。」


18代続いた、砂漠のオアシスに築いた国、国民は穏やかで、優しくて、それでいて無邪気で。とても良い子達です。それが散り散りになる。なんと説明しましょう。


「はぁ・・・」


「ミストレル様・・・」


「とにかく・・・早く国へと戻りましょう。いろいろ、準備しなきゃなりませんからね。」


「はい・・・ですが・・・」


「どうやって戻ります・・・?」


部屋の前には武装したメイド、窓には魔法が施され脱走は不可能。いち早く帰らなければならないのに・・・


「も、もしかして・・・私達、処刑されるんじゃ・・・」


「そんな・・・!!」


「ミストレル様・・・!!」


「・・・考えなかったわけではありません。」


処刑、あり得ないことではないです。一国の主を魅了し、手中に収めようとした。処刑するには十分な材料が揃っています。でも、なんとか、私だけ、この子達だけでも。


「・・・や、やだぁ・・・」


「死刑なの・・・?」


「こわいよぉ・・・」


「落ち着いてください・・・みんな。」


私が包容力のある体だったならばいいんですが幼い体のまま成長しない私達の種族では限界がある。それでも一緒に来てくれた皆と手を繋ぎ、判決の時を待ちます。


「(ああ・・・もし・・・あの時見たあの目・・・)」


陛下の目は・・・決して簡単に処刑などを下す人ではないと・・・そう信じたいと思います。


・・・・・・・


・・・・・・


・・・・・


・・・・


・・・


・・



「大丈夫?メルバ?気が立ってない?」


「そんな事ありません。冷静です。」


ミストレル達の待機部屋に向かっているがメルバが若干興奮している。まぁそれも仕方ないかぁ。自分の主人が魅了されて手玉に取られそうになったんだから。


「それでまだなの?」


「もうすぐです。」


そう言われ廊下を曲がったら・・・大きな槍を構えた悪魔メイドと大きな関で閉じられた部屋が現れた。ええ・・・


「あの・・・メルバ・・・」


「なんでしょう。」


「これは待機部屋じゃなくて・・・監禁部屋なのでは?」


思った事をそのまま言った。そしてメルバはケロっとした顔でこう返した。


「はい。そうですよ?」


「一国の女王を監禁するのはマズイんじゃないかなぁ・・・」


「事故か故意かはさておき国王に魅了魔法をかけたんですよ。これぐらい当然です。」


「にしてもさぁ・・・」


なんか他に手があるでしょ。


「ありません。」


「でも・・・」


「まぁそれは今は良いです。」


「・・・そうだな。」


武装悪魔メイドに、中のミストレル達に俺達が来た事を伝えさせる。そして悪魔メイド2人がかりで関を開けて扉の鍵を開けて行く。中に入ると・・・


「陛下・・・御無事だったのですね・・・」


完全に平伏・・・というか土下座状態のミストレル達がいた。


「うん。大丈夫だよ。こっちこそメルバが乱暴に取り押さえてごめんね。」


「いえ、あの場では致し方ないかと。」


「それでさ・・・」


「はい。」


「顔を上げてくれる?」


「!!」


「陛下!?」


俺の言葉にビクリと反応したミストレルと怒号を飛ばすメルバ。まぁ。そうなるよな。


「ちょっと試したい事があるんだ。」


「で、ですが・・・!!」


「陛下なりません!!!本来ならば処刑してもおかしくないんですよ!!!」


「処刑なんて物騒だな・・・」


「陛下は事の重大さを御理解いただけてません!!!」


「大丈夫だよ。」


俺はミストレルに近づいて顔に手を添えた。ドキドキしてきた。女の子にこんなことするの初めてだから。


「ほら。」


「いけません!!」


「陛下!!!!」


グイッとミストレルの顔を上げバッチリと目を合わせる。瑠璃色の綺麗な目だ。若干赤いが。涙も浮かんでいる。俺は飛びかかりそうになったメルバに手で合図して押さえた。


「ほら。やっぱり平気だ。」


「え・・・?」


「陛下・・・??」


するとまたもや目の前に星が舞う感覚と若干の眩暈が現れたそしてスキル、精神異常耐性・極を獲得という言葉が脳内に流れた。


「スキルを獲得したんだ。それで平気。」


「陛下、失礼します。」


メルバがさっきやった様に頭に手を置きぼんやりと光が放たれる。


「確認しました・・・精神異常耐性ですね。確かにこれなら魅了にも耐えられるでしょう・・・ですが、極とはいったい・・・」


「え?」


「スキルには上中下や1から5のレベルが振り分けられるんです。本人のレアリティによって変わるんですが・・・極は初めて見ましたね。」


「そうなんだ・・・ミストレル。」


「は、はい!」


「この通り、俺は大丈夫だから。気にしないで。今度一緒に、お、お茶でもしよう。」


若干キモかったか・・・?と思ったが吐いた言葉は飲み込めない。するとミストレルの瑠璃色の瞳に大粒の涙が溢れ出した。


「うあ・・・うあああぁぁーーん・・・」


「ええ!?」


「恐らく魅了に耐えうる存在を見つけて喜んでいるんでしょう。」


「そうなの!?思いっきり号泣だけど!?」


釣られて一緒について来ていた子達まで泣き出してしまった。もうてんやわんや。どうしよう。


「うえええぇぇーーーん・・・!!」


「ああ・・・!!泣き止んで・・・!!」


その日はミストレル達が謁見の最後という事もあり、泣き止ますのに苦労した。まぁともかくこれでシャバークとの国交にひびが入るという事も避けられただろう。これにて良し・・・良しかなぁ。




















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