謁見って多いんだが???
「・・・それでは陛下。私はこれにて。」
「う、うむ。よ、よきにはからえ。」
謁見は順調に進んでいる。今は国内の貴族の謁見だ。ソビエルツキー国内の貴族というのは大農園を任されている者達の事を指す。とにかく広大な国土に食べ物を行き渡らせるとなったらそれなりのものが必要だ。したがって大農園を持つ者は必然と爵位が与えられ、より安定して食べ物を行き渡らせる様尽力する。挨拶も軽いもので、いや国王との謁見に軽くしてはどうなんだと思うが、軽く済ませてくれるので助かっている。
「ふぅ・・・」
「陛下、次の貴族が来ます。気を抜かないよう・・・」
「あ、ああ、ごめん。よし。」
謁見の間の扉が開かれ、次の貴族が入ってくる。そして片膝を突き、挨拶した。
「お初にお目に掛かります陛下・・・東の穀物園を預かる・・・シャビオットにございます。」
「う、うむ。」
大分ボインな羊の様な角が生えた魔族のシャビオット卿。爵位って順番なんだっけ?正直、人の顔を覚えるのはあまり得意では無い。困っていると瞬間、目の前にパチパチと星が舞った。なんだこれ。少々眩暈もする。横で控えていたメルバが心配そうに声を掛けて来た。
「陛下・・・どうなさいましたか。」
「いや・・・ちょっと・・・眩暈が・・・」
「眩暈・・・?申し訳ないシャビオット卿陛下はお疲れのようです。」
「左様ですか。国内の貴族だけでもかなりの数がいます。私は気にせずどうぞお休みになってください。」
「うむ。助かる。」
控室に移り、メルバから念の為鎮静化の魔法を掛けてもらった。なんだったんだろうさっきの。
「大丈夫ですか陛下。」
「うん・・・もう大丈夫。」
「今日の謁見はこの辺りにしましょうか。」
「いや・・・それはマズイんじゃない。待たせてる貴族も多いでしょ。一泊伸びるだけでも費用が・・・」
「それでも陛下の御身の方が重要です。」
「うーん・・・」
ふと頭の中に文字列が浮かび上がってきた。スキル獲得、記憶力拡充・・・
「あ、あの、メルバ。」
「なんでしょう。」
「スキルを獲得したみたい・・・」
「え・・・?」
メルバが俺の頭の両側に手を添えて、手から光が放たれる。そんなんでわかるの?
「確かに・・・スキルが獲得してあります。すると先ほどの眩暈もスキル獲得のため・・・?」
「そうっぽいね。」
「それなら・・・大丈夫でしょうか。このまま続けても・・・」
「うん。大丈夫だよ。続けよう。」
「わかりました。」
控室から謁見の間に戻るとシャビオット卿がまだ待っていた。ごめん待たせて。
「おお陛下。御気分は如何でしょう。」
「うん。大丈夫だよ。ありがとう。」
「お礼など・・・当方は何もしておりません。」
「それでもだよ。」
「陛下・・・ご挨拶の途中ですから・・・」
「あ、そうか。」
豪華な椅子に座りシャビオット卿に向き直った。
「それでは改めて・・・東の穀物園の一部を預かるシャビオットにございます。本日は天気も良く、絶好の御挨拶日和になりました。」
「うむ。」
「シャビオット農園からは悪魔麦を樽20個献上致します。良い所です。」
「うむ。よ、よきにはからえ。」
「ははーっ。」
悪魔麦とはなんか物騒な名前だけど何てことない。大麦だ。ただ色が真っ黒。そういうやつ。ついこないだ厨房で見せてもらった。良かったタイミング良くて。
「陛下。」
メルバが耳打ちしてきた。なんだろう。
「シャビオット卿には今後有事の際に使用する食料備蓄の計画に加わってもらおうと考えています。そろそろ備蓄の更新が必要ですので・・・その為陛下からお言葉を頂けたら・・・と。」
「わかった。シャビオット卿。」
「はっ。」
「シャビオット卿には食料備蓄の計画に加わってもらおうと考えている。」
「ありがたき幸せ。」
「陛下、その為に悪魔麦を通常の1.3倍の値で買い取る事もお伝えください。」
「シャビオット卿、そちらの悪魔麦を高値で買い取る事も約束しよう。」
「ありがとうございます。」
「それではシャビオット卿。次が待っています。下がりなさい。」
「ははーっ。それでは陛下。失礼致します・・・」
シャビオット卿が下がり大扉が閉まる。ふぅなんかいけそうな気がしてきた。
「お疲れ様です陛下。次からは国外の貴族になります。」
「わかった。大丈夫かな・・・」
「まぁ物騒な人は来ませんよ。」
ゴゴンと大扉が開き・・・入ってきたのは
「うわ。」
「なんと。」
真っ赤な鱗を持つ巨大なドラゴン。どうやって王城に入ってきたの。ドラゴンは謁見の間を進み、近くに来ると頭を下げた。近くで見るとすごくデカい。マジでどうやって入って来たの。
「お初にお目に掛かります陛下。東の山脈を越えた東方の国、ヒガデズル公国から馳せ参じまじた。火炎龍のドルマネンです。」
「よ、よろしくドルマネン・・・どうやって入ってきたの?」
「人の姿になれますので・・・そぉい。」
ボフンと煙に包まれると背が低く、ドラゴンの尻尾と角のある幼女が現れた。え?幼女?
「この姿では迫力に欠けますので・・・火炎龍がどのようなものか御理解いただくべく大扉の前で変身させて頂きました。」
「そうだったのか・・・」
「陛下・・・ヒガデズル公国は鉱山に囲まれた国です。我が国でも鉱石の一部を購入しています。」
「そうだったの・・・メルバ、他には?」
「火炎龍、炭鉱鍛治、水竜人が人口の殆どを占める国で鉱石の他に武力を輸出しています。」
「武力?」
「はい陛下。我が国では国土が狭く、鉱石だけでは保たない為魔獣退治などに出向く軍の派遣も輸出品として扱っています。」
「そうなんだ・・・」
「ただ武力輸出はそれほど多い機会があるわけではなく、かなり稀ですね。通常自国で対処しますから。火炎龍の力を借りなければならないほど強力な魔物魔獣はそれほどいませんし。」
「なるほど。」
「そして我が国からは武力を持ってきてもどうしようもないので超鋼碧銀を始めとした鉱石樽200個を献上致します。」
「うむ。よきにはからえ。」
「ははーっ。」
そうして龍幼女ドルマネンは帰って行った。ドラゴン。初めて見たな。本当にいるんだ。
「陛下、次は少々お気をつけください。」
「え、なんで、やばいのが来るの?」
「やばくは無いんですが・・・気を確かに持たないと少々危険です。」
「やばいじゃん!なんで脅すのさ!」
「事前にお伝えしておけば多少はなんとかなります。次来ますよ。」
ゴゴ・・・と大扉が開いて入って来たのは・・・?
「メルバ・・・」
「はい・・・」
「あれがどうヤバいの?」
入って来たのは褐色肌の少女達だった。背中に小さな蝙蝠の様な羽があるから悪魔かサキュバスだっていうのはわかるけど・・・
「お初にお目に掛かります陛下。南の砂漠の国、シャバークの女王、ミストレルにございます。」
「ちょっとメルバ!」
隣のメルバにこそこそ話す。今王女って言った?
「王族が来てるじゃん!貴族だけじゃなかったの!?」
「シャバークは国土こそ我が国に並ぶ大きさですが殆どが砂漠で資源に乏しい国です。実質我が国からの支援で成り立っています。そして・・・」
「そして?」
「住んでいる者は皆、従順で幼いですが強力な力を持った夢魔です。」
「メルバが言うんだから相当なんだろうな・・・」
「はい・・・決して目を合わせない様にしてください。魅入られてしまいますので・・・」
「それはそれで失礼だな・・・」
「仕方がありません。」
「あの・・・」
「ああすまない。えと・・・ようこそミストレル。」
「は、はい・・・我が国は資源に乏しく、献上出来る品がありません・・・どうか御容赦を・・・」
「構わない。」
ただただ平伏するミストレル一行に対して、まぁ献上品はいいや。特に求めたわけではないしね。
「それで・・・なんですが・・・厚かましい要望だと存じています。御支援の方を・・・」
「わかった。メルバ。これまで通りに。」
「はっ。」
「ほっ・・・」
「まぁまぁそう堅くならないで。隣の国なんだから仲良くしよう。」
「はい。ありが・・・」
油断したのだろう。俺の雰囲気が悪かったのか?ミストレルは顔を上げ、俺とバチンと目が合った。




