パレードの後なんだが???
お待たせしました。
パレードが終わった。
パレードは途中休憩を挟みながら夜まで続き、俺は疲労困憊。
王都には思った以上に国民がいるんだな・・・大きな通りが何本もあった。
その大きな通りを一回行進するだけでもえらい時間が掛かる。そして超満員。国王がどれだけ歓待されていたのかわかった。
暇を見つけたら、街に遊びに行ってみよう。
そして今、俺は風呂に入っている。
「ふぅー・・・」
大浴場だ。アミタとカミタの様子が普通だった為、俺は大浴場を使うようにしている。今回も体は洗われたが。
「・・・。」
今日のパレードを思い出しながら風呂に浸かる。国王がどれだけ望まれていたのか、それを再確認していた。
今までこういった式典をやってなかったというから国王に関してあまり国民は関心が無いのかと思っていた。だがそれは違った。
通りを埋め尽くす人、人、人。全ての国民が国王の誕生を喜んでいる。そう感じさせる一日だった。
「ぶくぶくぶく・・・」
そういえばジオグレータが言っていた来賓はどの辺りにいたのだろうか。万遍なく手を振っていて気が付かなかった。それらしき席も見えなかったので無視した形になってないと良いのだが。
「・・・上がるか。」
考えすぎも良くない。風呂から上がったらメルバにでも聞こうと思う。うん、そうしよう。
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「来賓?」
「うん。今日パレードで回った時それらしき人が見えなかったから・・・」
「そうでしたか。来賓はパレードを見ていたとは思いますが、後日謁見の予定が入っています。」
「え?」
「まさか貴族がパレードを見てそのまま、というのはありません。」
「そ、そうか・・・」
風呂から上がり、俺の私室でメルバにお茶を淹れてもらいながら聞いた。謁見か・・・どうしよう・・・
「謁見て・・・何か作法とかある?言葉は少なめとか。」
「そうですね・・・確かに作法はあります。明日その辺りは御教えしますので心配は無いかと。あとはあるがままにしていただければ。」
「あるがままって・・・」
まぁ作法は明日教えてくれるというのだ。メルバの言う通り心配はあまりしなくてよいのかもしれない。あるがままというのは不安だが・・・
「陛下、それより御身体に異常などはありませんか?長丁場でしたので疲れがあるやもしれません。」
「へ?いや、今のところは大丈夫かな。」
「そうですか、ですが一応お休みの前にマッサージさせていただきますね。」
「わかった。よろしく頼むよ。」
お茶を一口、うん、美味い。御茶請けとして用意されたクッキーも頬張る。これも美味い。
「陛下、お茶のおかわりはいかがですか?」
「いやもういいかな。寝てる時トイレに起きそうだし。」
「かしこまりました。ではおさげしますね。」
「うんよろしく。」
メルバがお茶を持って片付けに退室する。俺はベッドに寝転がり天を仰ぎ見る。
「国王か・・・そんな大役、俺に務まるのかな・・・」
決心が揺らいでしまう。あれだけの国民を見てズシリとした重さを感じる。俺の一言で生活が変わってしまうかもしれない。そんな責任の重さだ。
「王様って大変だな・・・」
そんなこんな考えているとメルバが戻ってきた。
「陛下、もうお休みになられますか?」
「あっ、うん。そうしようかな。」
「それではマッサージの方、始めさせていただきます。」
「うん。よろしく。」
マッサージはとても気持ちよかったと言っておこう。
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翌日。俺は朝食を食べた後、執務室でメルバに謁見の作法を教授していた。
「・・・以上が謁見の作法です。如何でしたでしょうか。」
「うん。なんとかなりそう。ありがとうメルバ。」
「他困った事がありましたら私がこっそり御教えしますので・・・」
「それがいいね。よろしく。」
「はい。それでは早速午後から謁見が始まります。大丈夫です。まずは国内の貴族からですので。」
うん何が大丈夫なのだろうか・・・貴族は貴族では?
「わ、わかった・・・」
「それではお召しがえしましょう。既に選んであります。」
「わかった。」
俺は衣装室に向かった。
「今日はこちらです。」
白のワイシャツのようなものと黒いズボン。うん普通だ。だがパレードで使った物とは違う王冠とマントがある。
「このマントと王冠も・・・?」
「そうです。」
派手派手だ。だがしかし王様なのだからこれは必要な物なのだろう。文句は言ってられないので大人しく身に付ける。
「よくお似合いですよ。」
「ありがとう。」
メルバに礼を言うとささと扉を開けられ、退室する。マント、歩くのに邪魔だなぁ・・・
「ねぇメルバ。このマント、長さがどうにかならない?歩くのに邪魔だし、汚れちゃうよ。」
「そうですね・・・裁縫師ギルドに注意しておきます。新しく作ってもらいましょう。」
「・・・自分で言ったけどそれって迷惑じゃないかな?」
「まさか。新しいお召し物は喜ばれますしそれなりの賃金を支払っております。両手をあげて喜ばれますよ。」
「そうだといいけど・・・あまり我儘な王様だと思われたくないなぁ。」
「でしたら製作期限を設けないことにしましょう。そうすれば余裕を持って仕上げてくれるでしょう。」
「そっかぁ・・・わかった。そうしよう。」
マントの話はこれで終わり。謁見の間に行き中の様子を見ることにした。謁見の間では悪魔メイド達が忙しなく掃除をしており、揃ってこちらに挨拶をした後再び掃除へと戻った。謁見の間は広く、貴族が何人来るのかはわからないけど結構な人数入っても大丈夫そうだった。
「広いんだね・・・」
「謁見の間ですからね・・・こちらの力を誇示する場でもあります。見栄を考えるとこれぐらいの規模になるかと。」
「そっかぁ・・・」
「陛下は奥の椅子に座っているだけで構いませんので・・・広さは問題にならないかと思います。」
「そうだね・・・でもちょっと緊張してきたかも。」
「大丈夫です。私達が付いていますよ。」
「頼もしいよ。」
「有り難き御言葉・・・」
そして一旦昼食を取りに出る。昼食の文化もだいたい広がってきている。城の殆どの者が昼食を食べるようになってきた。一部は職務に没頭し過ぎて忘れるとかそんなところだが・・・
「マントと王冠一旦預けるね。」
「はい。昼食は食堂ですか?」
「うん。アウローラ達も待ってるだろうしね。」
食堂に行くとそこには既に昼食の準備が整っていた。焼きたてのパン、果物が並びテーブルの上を彩っている。いつもの席に座るとアウローラが昼食を持って出てきた。
「陛下〜ちょうど良かった〜出来立てだよぉ〜」
「それは良いね。早速食べよう。」
「うん〜!みんなぁ持ってきてぇ〜!」
次々と料理が運ばれて来てそれを味わいながら食べる。やっぱり美味い。今日のメインはマトンだった。
「ふぅ・・・ご馳走様。」
「ふふ〜綺麗に食べてありがとう陛下〜」
「じゃあ俺は行くね。時間が差し迫ってるんだ。」
「は〜い、お片付けは任せてぇ〜」
俺は謁見の間に戻る。途中メルバに預けたマントと王冠を身に付け準備万端。さぁ貴族よ、どっからでもかかって来やがれ・・・!!
「陛下入られます!」
「国王陛下の御出座である!!」
謁見の間には既に貴族が膝を付いて待っている。待たせてしまっただろうか・・・いやこう言う時は待たせるものか?
謁見が始まる。