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魔法ってなんなんだが???

朝、朝食のいい匂いがして起きる。ここで起きないと朝食係をいつまでも待たせることになるからだ。それは忍びないとなるべく朝食の匂いを感じたら起きるようにしている。


「魔法?」


「はい。」


その朝食中に俺はメルバからひとつ報告を受けた。そろそろ魔法の練習をしてみてはどうかと。魔法といえばここに来た時に見たメルバの鎮静化の魔法、雪のような粉を吹きかけられたアレと執務室で見た氷を出す魔法。それだけだ。


「もぐ・・・急に魔法なんてどうしたの。公務は?」


「御公務は陛下が御早く対処していただいたおかげで少し余裕があります。魔法についてはここ魔界で過ごすのに当たり覚えておかねば支障が出るのではと思い提案させていただきました。」


「わかった。じゃあ魔法、やってみよう。」


「はい。では御着替えの後、中庭の先にある運動場へと御案内致します。」


・・・・・・


・・・・・


・・・・


・・・


・・



着替えて運動場、そこはかなり広かった。ざっと見東京ドームくらい。東京ドームに行ったことがあまり無いから知らんけど。


「では陛下、まず魔法について御説明致します。以前も御説明致しましたが魔法とは魔力素(エーテル)を体に取り込みそれを魔力、燃料に現象へと転換する技術でございます。魔力素の変換効率に優劣はありますが魔法はスキルに関わり無く練習すれば体得可能な普遍な技術として存在しています。」


「のっけからわからない・・・」


「どのあたりでしょう。」


「まず魔力素(エーテル)がわからないいったいなんなの?どうやって取り込むの?」


魔力素(エーテル)とは魔界に満遍なく充足している物質だということにしてください。取り込み方に関しては・・・そうですね。陛下失礼致します。」


メルバが俺の胸に手を当てる、少しドキドキするが真面目な話なので黙っていた。しばらくすると何か温かいものが体の中を流動する感じがしてくる。なるほどこれが魔力。


「・・・問題無く取り込めているようですね。このように自然と体が取り込みます。今は少し御手伝いをさせていただきましたが・・・」


「なんとなくわかった気がする。それでこの魔力はどうやって使うの?魔法の詠唱とか?」


「詠唱・・・?そう言ったものは必要ありません。魔法は感覚で使います。なので最初は魔法を慣れている者と一緒に感覚を共有しながら覚えます。陛下、御手を拝借します。」


「はぁ・・・?」


手を繋ぐとメルバは目を瞑り何やら精神統一の様なことをしだした。俺にはわからないので黙っていると先ほどの温かいものが手を伝って流れて行くのを感じる。


「陛下、私と一緒に手を前に突き出してください。・・・こっちではなく向こうに・・・そうです。それでは行きますよ。魔光弾(フォトンバースト)!!!」


メルバの手の先から轟音と共に光弾が放たれ遠くに着弾する。急にだったのでめちゃくちゃ驚いた。うっかり手を離しそうになったら強く握り返された。


「今のが魔法です。繋いだ手から感覚が伝わりましたでしょうか。」


「驚いてそれどころじゃなかった。」


「ふむ、それではもう一度やりましょう。陛下も一緒に突き出した手から魔力を放出する感じで。」


「ええ・・・本当に感覚なんだなぁ。」


「そうです。なので手を繋いだり体に触れたりしながら感覚を覚えるのです。」


「いや今みたいな物騒なのじゃなくてこの前見たような氷を出すようなのじゃダメなの?」


「魔法に属性を持たせる方がより難易度が上がりますので・・・そうですね。それでは灯りを出すところから始めましょうか。」


「わかった。」


突き出した手の先から何か出るように念じながら唸るが何も出なかった。メルバの方を見ると光球が出たり消えたりしている。どうなってるんだ・・・?


「うーん・・・わかりませんか・・・それではこれならどうでしょう。」


するとメルバは俺の左手をなぞるように撫で始めた。ヒェと声が出たが我慢する。


「陛下・・・魔力の流れを感じますか?」


「えっと・・・わからない・・・」


「うぅん・・・するとこれならどうでしょう。少しくすぐったいかもしれませんが。」


メルバは撫でていた指先から小さな光球を出し、それを俺の左手に馴染ませて行く。すると腕の中でメルバの手に合わせ流動する何かを感じるようになった。


「おお・・・何か動いてる。」


「それが魔力です。この魔力をこうすると・・・!」


メルバが撫でながら左手の先へ流動する何かを集めていく。そして指先からしゅわしゅわと漏れていく感覚がし始めた。


「なんかしゅわしゅわする。」


「それが手から魔力が放出されていく感覚です。それを徐々に形あるものへと変えていくと先程の灯りの魔法へなります。」


「そっか・・・」


「少し休憩しましょう。」


メルバの手が離れると同時にどっと疲労が押し寄せて来てつい尻もちをついてしまう。メルバは大層驚き肩を掴んだ。


「陛下!?大丈夫ですか!?」


「うん・・・ちょっと疲れただけ・・・前にも言ってたけどやっぱり俺が魔法を使うのは無理なんじゃないかな・・・」


「確かに・・・魔力を流動させただけでこれほどまでに疲れてしまうとなると・・・」


「うん。魔法は諦めよう。」


「いえ、少しずつでも訓練しましょう。幸い魔力に転換は出来るようなので。慣れれば疲労も減るでしょう。」


「スパルタだなぁ・・・厳しい・・・」


「スパ・・・?魔法が使えないと万が一があった時に身を守れないので厳しくてもやりますよ陛下。」


「わかった。確かに万が一は嫌だしね・・・」


「はい。それでは休憩しましょう。お茶を用意させてあります。」


メルバが指を鳴らすをどこからともなくメイド達が現れテーブルとお茶を用意した。


「このお茶の容器を温めてあるのも魔法?」


「はいそうです。物を温めるのも基本的な魔法になります。」


「(じゃあこのメイド達もさっきみたいに手を繋ぎながら練習したのか)」


「他にも冷やしたりも出来ます。この魔法の技術によって普段の生活が支えられています。」


「魔法って何でも出来るんだね。」


「死者蘇生とかは無理ですけどね。」


それはそうだろう。


「じゃあ遠くの物を引き寄せたりとかも出来るの?」


「出来ます。イメージとしては魔力の紐を投げて引き寄せるという感じでしょうか。」


「ふーんそんなことも出来るんだ。」


「出来るとしても魔族だけだと思いますが・・・」


「魔物とかも魔法を使うんだ。」


「もちろんです。魔法を使う生物を魔物や魔獣と呼んでいます。」


「じゃあ魔法を使わないのが普通の動物なんだね。」


「はい。家畜などですね。」


家畜が魔法使ったら抵抗されて大変だろうしな。魔法を使わないから家畜になったんだろうけど。


その後はお茶を楽しみながら魔法についてメルバから聞き、再び魔力を体の中で動かす訓練をした。少しやる度に疲労で座ってしまいなかなか進まなかったが有意義な時間を過ごせたと思う。




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