ランチの習慣なんだが???
この城では、いや、この国では昼食を取るという習慣はない。
お腹が空いた時に食べるからだ。
だから朝食の後、日が高くなった時にお腹が空いてたら食べる。
それを何故昼食と呼ばないのか理解し難いがそういうものなのだ。
そのような状況なので昼食という概念は無かった。
「え?お昼、食べないの?」
「え?」
俺は無いものだと思っていたので食べていなかった。
メルバ達も俺が言い出さないので食べなかった。
それを最近知って驚いた。晩御飯食べられなくなったらどうするんだろうか。
「どうも何も、晩御飯もお腹が空いたら食べますので。」
そうらしい。
なので食べることにしたら大騒ぎになってしまった。
「三番!塩の加減間違えないで!」
「一番!焼き過ぎないでよぉ!」
「はいよぉ!」
「よいさぁ!」
そして厨房から景気の良い声が聞こえて俺の昼食を作っている。
「そんなに意気込まなくても・・・」
「せっかく昼食の文化を広めようというのに手は抜けません。」
「そうなのね・・・」
まずは城内で昼食を定着させようと厨房にかけあったが妙に気合いが入ってしまった。
反省すると同時に形がないだけで昼食は取っているので定着させるのは簡単かと思いきやそうじゃなかった。
かつてない試みですとメルバは言っていたがもうちょっと緩くやってほしい。
本当に軽くそれこそ昼食を取るくらいの感覚で。
・・・と思ってたがそううまくはいかないんだなぁ・・・
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それは公務中に起きた。
「キノコ?」
「はい。郊外のキノコ農園からの報告で・・・」
この城下町の郊外にあるというキノコ農園からの報告だった。
どうやらキノコ農園で彷徨大茸の発生が確認されたらしい。
この彷徨茸、大変なのが一度発生すると連鎖的に大発生するらしいのだ。
一度発生してしまうと手につけられない彷徨大茸が大量発生する兆しが見えたので緊急事態だと王城に報告があがったのだった。
「へぇ・・・」
「へぇではありませんよ陛下。対策を練らないといけません。」
「対策って言っても・・・俺はその彷徨大茸っての知らないし・・・いつもどうしてるの?」
「農園ごと焼き払いますね・・・」
「物騒!!それじゃ農家も大変でしょ?他に方法は無いの?」
「他に方法・・・と言いましても全滅するまで倒し続けるしか・・・」
「うーん・・・」
それでは大変なのが農家から軍になるだけだ。根本的な解決にはなっていない。
「焼き払うしかない・・・か・・・」
「そうですね。エクサイルに手配しておきます。」
「・・・そういえば、彷徨大茸って美味いの?」
「は?いえ・・・魔物ですので食べたことは・・・」
「魔物?彷徨大茸って魔物なの?」
「はい。今回発生した彷徨大茸は倒した後運ばれていますので・・・食べて見ますか?」
「うーんやってみようか。食べて美味しかったら食料確保にもなるんじゃない?」
「かしこまりました。ではそのように。」
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「陛下彷徨大茸のソテーです。」
夕食どきにまた事件は起きた。
「早いね・・・」
「茸ですので足が早いかと思いまして。」
食卓に出てきたのははちゃめちゃにデカい茸だった。皿からはみ出ている。
「とりあえず食べてみるか・・・」
ナイフとフォークで切り分けるが驚くようにスッと入る。山越巨人達の調理の賜物だろうか。
「もぐ・・・」
「・・・如何でしょう陛下。」
「・・・もぐ、味は悪くないけど。繊維とかデカいな・・・」
「・・・もろもろデカい、と・・・」
メルバがメモを取りながら話を聞いている。
「これ・・・山越巨人達の調理の感想はどうなの?」
「あ〜陛下〜調理は〜大きくて大変だったけど〜細かく切れば平気かも〜」
「ふむ・・・大きさが問題・・・」
「アウローラ、味見した感じはどう?」
「う〜ん・・・毒も無いし美味しいけど〜調理に手間がかかるのと〜大発生した時じゃないと手に入らないのが問題かな〜」
「そっか・・・」
ちなみに彷徨大茸が発生したキノコ農園ではすでに駆逐されていて大発生の可能性は潰れている。
しかし美味しいには美味しいが目を引くほど美味しいかと言われるとそうではない。これで目を引くほど美味しかったら大発生させて食料確保出来ると思ったんだが・・・
「陛下、とりあえずまとめますと魔物が美味しく食べられるという結果が出たのは好感触だと思います。これで他の魔物も食べられるのではないかとの可能性が見えました。」
「そっか・・・彷徨大茸はうまくいかないっぽいけど他の魔物?も食べられると良いね。」
「はい、そうですね。」
なかなか上手くはいかないが他にも食べられる可能性が出てきただけ良かったか。
「とりあえず全部食べよう・・・」
口に入る大きさに切り分けどんどん放り込んで食べていく。味は良いんだけどな。
味は。
美味しいだけでは上手くいかないんだなぁ。
俺は夕食を楽しんで・・・自室に戻ろうとしたところ。
「陛下ぁ♡」
「大浴場使わないんですかぁ?」
アミタとカミタに捕まるも無事貞操を守り眠りについた。