変装と婚約破棄
ある夜会にて。
「アイリス、好きな人ができた、婚約破棄をしてくれないか。」
と、私の婚約者である王太子は言った。その隣には背の高い、美しい、ご令嬢。それにしても、夜会という、公の場で、宣言するなんて、ひどくありませんか。私は今まで未来の王妃になるため、頑張って来た。それを全部無碍になさるのね。
私はショックの余りその場にへたり込んだ。
だけれども、思えば、何ヶ月も前から、婚約破棄されるフラグは立っていたのだ。ぽっと湧いて、いつの間にか王太子の近くを占拠していた令嬢。ランウェイを歩くモデルのようにすらりと背が高く、顔立ちがとてもきれいな人。ちょっと嫉妬したけれど、私ったら、勉強や、学園生活に夢中で、余り気にしなかった。それが、こんな結果になってしまった。ああ、野心家のお父様になんて言えばいいのやら。
その次の瞬間、大理石の床に座り込んだ私を立たせたのは、例のご令嬢だった。
「ありがとうございます。」と呟き、私は恥ずかしくて、赤面した。
その後、ご令嬢はかわいい声で、
「殿下、申し訳ありません、少しだけ席を外します。」と言い、大事な場面なのに王太子と私は10分待たされた。
しかし、令嬢は帰って来ず、代わりに爽やかな貴公子がやって来た。
「アレクシス様!ご無事だったのですね。」
爽やかな貴公子は、ここ半年ほど行方不明になっていた、隣国の王子であった。
「やあ、アイリス、元気かい?ポール殿にたった今、婚約破棄されたんだって?」
「ええ、お恥ずかしいことですが、婚約破棄されてしまいました。でも、元気か、じゃありません!行方不明と聞いて、どれだけ心配したことか!」
「ごめんごめん、アイリス。そういえば、ポール殿、ご機嫌いかがでしょうか。」
「こちらこそ、お見苦しいところを見せてしまいました。挨拶が遅れてしまい、すみません。」
「いや、本来ならこちらからご挨拶に伺うべきなのだから、気にしないでください。まあ、三ヶ月前から、あなたの側に、女装して、いましたがね。」
「「…ええ!?」」
「ポール殿、私ごときの変装魔法も気付かなかったのですか?ははは、あなたは僕のハニートラップにまんまと引っかかった。そして、僕の目的が今果たされた。君とアイリスの仲を裂くというね。僕はアイリスをどうしても手に入れたかった。まあ、そんなことで、ポール殿、この子はもらっていくね。」
アレクシスはアイリスを自分の肩に乗せてしまう。
「わっ、アレクシス様!!」
「おい、ちょっと待て。アレクシス殿、私を騙していたのか!」
「待てません!アイリスはもう、僕のものですから!」
アレクシスは自分の肩に乗せているアイリスの顔をちらっと覗き込んだ。
「アイリス殿。僕のお嫁さんになってくれますよね?」
急展開すぎて、頭がよく回らず、私は口をぱくぱくさせた。
「返事は?」
「、、、はい。」
だって、彼は私がずっと前から好きだったの。王太子の婚約者になってしまったから、諦めようと思ってたのに。
そうして私は隣国に連れ去られ、隣国の王妃となった。
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「アイリス、君は変装に気付かなかったのか?」
「えっと、最後、立たせていただいたときには、気付いていました。あの時、アレクシス様に手を握られて、顔がほてりました。でも、あまりポール様に興味がなくて、それ以前には、気にしていなかったのです。」




