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レイナと勇者と下僕録  作者: くるい
一章 ~盗賊団退治の下僕録~
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七話 能力診断

 そんなこんなでやっと村に帰ってきた。

 ここザコル村は規模は狭いが夜でも賑やかな村である。その最たる理由としては、夜になると中央広場に明かりが点灯してフリーマーケットが行われるからだ。

 勿論値段もその当人達がつけるのでぼったくりには気を付けなければならないが、掘り出し物もあるため毎晩人が集っている。


「とりあえず、アンタの実力が知りたいわ」


 唐突にそうレイナが切り出した。なんだなんだ、今からお前と戦って実力判断とか、洒落にならないぞ。まじで。


「大体弱すぎるのよ。スライムのタックル受けて倒れるなんてとても人とは思えないわ」

「あ? 相手は百体以上居たんだぞ、動揺してやられちゃっただけだ!」

「声を大にして言うことでもないわよ……」


 苦笑しやがった。畜生人が弱いからって散々に言いやがって。


「どう実力を知るんだよ。路上でレイナと戦うのは御免だぞ」


 公衆の面前で女と戦って叩きのめされるとか本当に勘弁。未来永劫その手の話で笑われそうだ。


「んな古典的なこと誰がすんのよ。アンタの場合そんな段階でもないでしょうに。確かこの村には能力鑑定処があったでしょ?」


 ああ、能力鑑定か。

 俺は確かにと頷き、そんなところもあったなと思い出した。


 能力鑑定処。


 そもそもが鑑定術士という職業が存在するのだが、その能力は極めて特殊である。というのも、他人の能力を測定するという技術の一点を高めた職業なのだ。

 彼らはギルドに認定証を受けて初めて一人前の鑑定術士となり、村で自分の店を持つことが可能となる。

 そんな彼らが診断するのは三つの項目で、攻撃力、防御力、魔力の三つだ。それらを数値化して診断書を発行して渡してくれる。

 診断時間はほぼ一瞬。彼らは鍛え上げた特殊な眼を使って診断する者の身体に流れる魔素、肉体構造から数値を割り出すというトンデモ能力の持ち主だ。


 まあ戦闘面では敵のアナライズ以外には役に立たないのだが、彼らがいることによってどのダンジョンなら攻略できるなどの目安が分かるため、とても重宝される職業なのだ。


 そんな重宝される店がこのザコル村にも存在する。場所によって営業している時間などもバラバラなのだが、少なくともここではフリーマーケットが存在するお陰か割と遅くまでやっているのだ。


 というわけで。

 俺とレイナは能力鑑定処に来ていた。


「へぇ。初めて来たけどこんなところなのか」


 当然俺はここに来たことなどない。

 周りへ視線を配り、白を基調とした清潔感のある内装を感心しながら見やる。まるで治療院のようだ。


「アンタには縁のないところでしょうからね。あ、すみません」


 レイナはさっさと受付の若い女の子に話を付け、すぐ奥へ案内されることに。レイナの後に続いて奥の部屋に入ると、そこには気だるげそうな中年男性が椅子に座って待っていた。


「この時間に女と二人で診断、ねぇ……ふふふ、変な響きじゃないかい。何を診断するのかな。夜の相性かい? それなら僕の前で実演をしてくれ、ほら、早く――」


 ただの変人だった。


「ぶち殺すわよジャラート」

「連れないなぁ、レイナ君。こんな時間にずかずか上がり込んでおいてその態度はないんじゃないかい」

「じゃあこんな時間に営業しないで欲しいわね。診断できないなら営業中止しなさいよ、早く店畳んでこのボロ部屋で一人寂しく寝なさい、ホラ早く」

「や、冗談、冗談だよ。で、そちらの彼氏さんを診断すればいいのかい?」


 ジャラートと呼ばれた中年男性は渋面じゅうめんを作って椅子の背もたれに背中を預けた。

 てか彼氏ってなんだ彼氏って。まぁ……下僕じゃなくてそれなら……性格さえ飛ばせばアリだな。いや、最高だな。うん。

 でも俺はキアラと結婚するって三歳の時に誓ったからごめんよ……お前とは付き合えない、残念だったなレイナあははははははあっはははははは……悲しくなってきた。止めよう。


「馬鹿言ってんじゃないわよ。コイツは私の下僕よ、こんなちっさい村なんだからその程度の情報は仕入れときなさい」

「ふふふ……そうかいそうかい。レイナ君がそう言うならそうなんだろう。では診断するよ、彼氏さんおいで」


 全く反省の色を見せないジャラートはレイナに頭を叩かれ、下僕君と言い直して俺に視線を寄越した。その奇妙なやり取りに苦笑し、俺は素直にジャラートの元へ近付いていく。


「では上半身を脱いでくれるかな」

「え、脱ぐんですか。ここで?」


 後ろでレイナがガン見してるのに……まあ、ちょっと恥ずかしいだけ、なんだが……。なんで恥ずかしがってんだろう俺。


「当たり前だろう。脱がなきゃ肉体をしっかり見ることができないからね。ああ、名前は?」

「ユート・ラスタードです」


 ええい、ままよ。別に上半身見せるくらい何でもねぇぜ! と服を脱ぐ俺を余所にはいはいユート君ねなどと呟きながら彼は何かの紙に俺の名前を記していく。


「うん、じゃあ真っ直ぐ立ってこっちを向いてくれるかな。手は腰の横に、背筋はもう少し張って。はい、はい――終わった。もう服着ていいよ」


 本当に一瞬だった。紙に色々と記し、ジャラートはそれをレイナに渡す。


「オマケの診断も無料でしてあげたよ。以上で銅貨五枚だ」

「へぇ、アンタにしては珍しいじゃない」


 銅貨をジャラートに寄越したレイナは俺の診断書を眺め始めた。ずっと座っていた俺は、ふと気になったことを彼に尋ねてみることに。


「ジャラートさん、診断する時って上半身脱ぐんですよね」

「ああ、勿論だよ。脱がなきゃ診断が狂ってしまうからね」

「じゃあ、その――女の子も、脱ぐんですか?」


 小声で言った質問に、ジャラートは口元をにやりと広げて嫌らしい笑みを作った。


「ふふ、いいことを聞いてくれたねユート君。そう、女の子も脱ぐよ。脱ぎまくりだよ――あれは絶景だね。これぞ鑑定術士の特権ってやつかな? 特にレイナ君のは――」


 俺の左脇腹がもの凄い蹴りで抉られ、ジャラートの座る椅子が前蹴りによって弾き飛ばされた。


「ぐはっ、いでええええええぇ!」

「ちょ、レイナ君それはやってはいけないよ、乱暴はよくないと思うな」

「下らない話するんじゃないわよ! ああもうなんでアンタみたいな奴が鑑定術士やってるわけ? 女の敵よ死ね!」


 どうやら彼女はジャラートに見られた被害者の一人らしい。大丈夫、安心しなさい。その貧相な胸を見せたところで誰も喜ばないよ。喜ぶのは一部の変態だけさ。


「とまあ、下着は付けているから二つのお山は見られないけどね、ユート君」


 全くフォローになっていないフォローをしたジャラートは、当然ながらレイナの鉄拳制裁を受けて撃沈した。

 ああ恐るべき俺のあるじ。どうか怒りよ鎮めたまえ……。

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