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09 再現

 外から見た高級コテージは、コロニアル様式の洋館だ。神戸の異人館のような、あんな雰囲気だ。アルバの街の建物も、似たような感じだったので、この世界でも違和感なく存在出来ていると思う。


「いいですか、質問は後にしてくださいね。私もまだ一階部分の確認が終わっていませんから」

「わかった、わかった、後にする」


 両開きの重厚感在る玄関扉に向かいながら言えば、鼻の穴を膨らませて目を見開いているルドルフから、いい加減な返事が返ってきた。

 玄関扉を開け中に入ると、右手にスタッフルーム、左手はラウンジ。

 ラウンジにはやはり某有名デザイナーの手がけた応接セットがおかれている。ルドルフがものすごい勢いで観察している。かぶりつくような、とはこういうことかと思う。


 ルドルフを放置してスタッフルームの扉を開ける。

 二十畳ほどの小さなオフィス仕様だ。

 奥でひとつの島を作っているのはおしゃれなデスクとチェアが四セット。その手前には小ぶりの応接セットが置かれ、扉を開けた左右の壁際にクローゼットが二つずつ並んでいる。スチールのロッカーじゃないところがオシャレだと当時思ったものだ。


 デスクの島と応接セットの間は腰高のキャビネットで仕切られており、デスクの島の奥には中央に勝手口があり、左右には給湯スペースやトイレだったのだろうが、さすがにそこまではチェックしていなかったからなのか、扉を開けても何もなかった。


 それにしても、あの日ちらっと見ただけなのにここまで再現されているのもすごい。ちなみにクローゼットの中やデスクの引き出しの中は空っぽだった。


 スタッフルームを後にし、玄関ホールから吹き抜けのホールに戻る。

 その際扉は開けっ放しにしておく。まだラウンジで観察中のルドルフが中に入ってくるだろうからだ。

 この玄関ホールと吹き抜けの間のこの扉はオートロックとなっており、スタッフが許可無く内部に入り込まないような作りになっている。どうやらオートロックは機能していないようだが、念のために扉を固定して開け放っておく。

 

 玄関ホールを背にして右手にパウダールーム、ユーティリティールーム、ダイニングキッチンと続く。

 パウダールームの外には露天風呂がある。露天風呂だよ! 露天風呂! しかもジャグジー付き! 今はお湯が抜かれて空っぽだが、あとでゆっくり堪能しよう。あー、顔がにやける。


 六畳ほどのパウダールーム、同じくらいの広さのユーティリティールーム、二十畳ほどのダイニングキッチンはそれぞれが内扉で繋がっている。


 パウダールームには、壁一面の鏡とその前に二つの洗面器が置かれており、洗面器の横はドレッサーとしても使えるよう椅子や可動タイプのチェストがある。

 このチェストの中はあの日見たスキンケアグッズが詰まっていた。

 実際に中まで目にしていればその中身も再現されるのだろうか。スタッフルームのクローゼットや引き出しの中は実際に見ていないので再現されなかったのだろうか。

 鏡の反対側には左右の端にトイレが一室ずつ、中央はガラス張りになっており、目隠しの板塀と植栽に囲まれた露天風呂が見える。露天風呂に続く扉もガラス張りだ。


 ユーティリティールームには、中央に作業台と言うには高級すぎる大きなガラスのテーブルがあり、クローゼットのような扉が六つ並ぶ。

 一番大きな扉にはドラム式の洗濯乾燥機がまるごと入っており、お洗濯関係の道具も収納されている。他にはアイロン台やアイロン、ミシンなどの繕物関係の道具、掃除機やモップなどのお掃除関係の道具、タオル類やシーツなどが収納されている。一番小さな扉には、こまごまとした日用品が収納されている。

 あの日貧乏くさいと笑われながらも、全部の扉を開けて見ておいて良かった!


 ダイニングキッチンには、最新式の対面式キッチンと十人掛けの大きなダイニングテーブルがある。もしかしてとキッチンの大きな冷蔵庫を開けると、あの日見た高級食材がぎっしり詰まっていた! きゃー!

 キッチンの引き出しや扉の中も、あの日見た最新式の調理家電や高級食器、調味料、コーヒー豆や紅茶などの各種茶葉、大きな缶に入ったクッキーやグラノーラなどが収納されている。

 もう本当に、貧乏くさいと笑われながらも、全部チェックした私エライ!


 ダイニングキッチンから吹き抜けのホールは半透明のアクリル扉で仕切られており、扉を開け放つとそれぞれホールと一体となる。向かいのリビング側も同様だ。

 その吹き抜けのホールの二階への階段の奥、二階のブリッジの下をくぐり抜けた先にの中央には薪ストーブが設置されており、そのまわりに四組のそれぞれ違うデザインのカフェセットが設置されている。

 朝食やランチはここで食べることも出来た。


 玄関を背にした吹き抜けのホールの左側は、広々としたリビングとなっており、その中央壁側に薪ストーブが設置されている。ちなみに玄関横のラウンジにも薪ストーブが設置されている。

 某リゾート地は高原だったため冷房設備はなく、暖房設備として薪ストーブと床暖房が完備されていたので、どこかに床暖房のスイッチがあるはずだ。

 そういえばユーティリティールームの日用品が収納されていた棚の上部に、ブレーカーなどの電気関係のスイッチがずらっと並んでいた。あの中の一つだろうかと思う。


 中央にある薪ストーブを囲むように、ゆったりとしたソファーセットが一組ずつ左右対称にL字型に配置されている。

 シンプルモダンなデザインで白いセットと黒いセットだ。白いセットの方が少し丸みのあるソフトなデザイン、黒いセットは直線的でシャープなデザイン、それぞれに合わせたローテーブル、オットマン、フロアライトがやはりゆったりと配置されている。ラウンジ側の壁は一面壁面収納となっており、扉を開けると空っぽだった。当時も何が入っていたか憶えていない。多分チェックしなかったのではないかと思う。



 一通り見て満足した私は、絶賛放置中のルドルフが気になって、彼を探しに吹き抜けのホールに向かった。






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