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L-08

 婚儀が終わり、その後始末も終わったところで、父上と爺様、兄弟たちと魔獣についての擦り合わせを行う。協議の結果、まずはジギス、それに続いて魔力隊の特殊部隊に魔獣との契約をさせることが決まった。

 ジルにも契約の話が出たが、信官長という特殊な立場上保留となる。


 契約のことをフェンリルとシュヴァルツに伝えると同時に、リーエには加護を与える力があると聞く。フェンリルがジギスに与えたような力を、リーエも与えることが出来るそうだ。

 リーエ自身気付いていないようだが、レオを可愛がっているうちに無意識に加護を与えそうだと相談された。ジークに後で相談しよう。

 俺の番の力がもう少し安定すれば、俺の体液もリーエの体液程ではないが、同じ効果を生むと言う。そして、一時的に魔力を上げて兄上とマックスに魔獣の契約を施し、リーエの血の契約で兄上たちの魔力がなくなっても安定させておくことも出来ると聞いた。

 兄上とマックスに体液の事は伏せ、一時的に魔力を上乗せすることで魔獣と契約することが出来ると話せば、思った以上に喜んだ。こっそり俺の唾液を飲み物に混ぜて与えよう。許せ兄弟。



 ジギスの契約獣はユニコーンと名付けられた。フェンリルやシュヴァルツに次ぐ上位体との契約だ。

 ジギスの魔力が随分と膨れあがったようで、ジギスが呻いていた。ジークが笑って「今晩魔力熱が出ますよ」と言っている。

 色々問題はあるが、一つの国を滅ぼしたというユニコーンの所業は、俺もジギスもジークも聞かなかったことにした。人には知られていないなら、俺たちが知る必要もない。フェンリルたちも同意した。


 特殊部隊の魔獣との契約について、ジギスとどんな形態の魔獣と契約させるのがいいかを話し合い、フェンリルやシュヴァルツの意見を聞きながら決めていく。ジギスはこう見えて有能だ。次々と決定されていく。

 そう言えばと、気になっていたことをジギスに聞いてみる。


「フェンリルたちのようなものを、魔獣とは言い難いとリーエと話していたんだが、ジギスはどう思う?」

「だったらフェンリルたちが言うとおり、力あるもの、と呼べばいいんじゃないか?」


 そのままだがその通りだった。

 フェンリルによれば、フェンリルのような上位は十に満たない数ほど、ゴルトのような中位はその倍ほど、下位はそれなりに、それ以下は数えきれぬほどいるそうだ。

 俺たちが魔獣と呼んでいるのはこの数えきれぬほどいるそれ以下のもので、時々下位のものも混ざっているらしい。上位や中位、下位の一部が意思を持つそうで、下にいくほど思考力が落ちると言う。

 フェンリルに、力あるものは中位以上だと定義された。フェンリルたちが言うには、下位は賢い獣、それ以下はただの獣だそうだ。



 婚儀の準備を進めている間に、マックスから「アベラールの密偵が渡り人の存在を探している」と聞かされていた。ジギスからも同じ報告が上がっている。

 婚儀が終わり次第、爺様はグラウを伴ってアベラールに潜っており、グラウからフェンリルに逐一報告が上がっている。フェンリルの他の眷属もアベラールに潜り込ませたらしい。

 アベラールには渡り人の子孫が数多くいる。リーエほどではないにしても、俺たち直系王族同様理解力を持っている。それによって、渡り人がアルバの街周辺に現れると解ったらしい。ただ、俺ほど明確に分かったわけではないらしく、探し始めたのはリーエが現れてから市が二度過ぎた頃だそうだ。その頃にはリーエはこの家に移り住んでいる。リーエが家を欲しがったのは、無意識に危険を察知したからかもしれない。


 今のところリーエは疑われていないようだ。単なる俺の伴侶としての認識しかされていないらしい。

 爺様が調べ、フェンリルへと上がった報告には、前回の渡り人の唯一がアベルーラの女官だったらしく、その女官を人質に取られ、脅されていたらしい。

 渡り人と契ったその女官は、魔力が大きくなり、それを抑えきれず周りに気付かれたらしい。捕らえられた女官を助けるために、渡り人は魔力の大きな者との子作りを強要された。その裏で女官は直系以外の王族の子を産む道具とされたそうだ。それを知った渡り人は心を壊したらしい。心を壊す前と後では、魔力を持って生まれる子の割合が大きく変わり、そして程なく渡り人は儚くなった。

 渡り人ほどの魔力があれば、女官を連れて逃げることなど造作も無いはずなのに、なぜ捕まったのだろうか。それを爺様とフェンリルの眷属が調べている。どうも魔力を封じる手段があるようだ。


 この報告を受け、力あるものたちとの契約を急ぐこととなった。魔力隊からは特殊部隊長のモーリッツが上位と契約し、他三名が契約した。武力隊からは海上隊長のテオドールが、直系王族からは叔父のフォルカルトが契約出来た。

 直系王族に魔獣との契約についてを明かし、以降魔の力のあるもののうち上位と中位のものを、力あるものと定める。契約した力あるものは、契りしものと呼ばれ、特に人型となる者は、表向きその契約者の従者として扱われることとなる。

 ジルに関しては、フェンリルから待ったが掛かった。どうやらジルの唯一が精霊の加護を持つらしい。その番のジルに魔の力を持たせない方がいいと言う。



 ジルが、贔屓にしているアルバの街の薬草店から、リーエの家のある丘にたどり着けなくなったため、そこで採れる薬草が品薄だと聞かされたらしい。ジルからそれを聞いた兄上とカールに、リーエの家を国内の無人島のひとつに移転してはどうかと打診される。

 フェンリルに話せば、ゴルトが偵察に飛び、いくつかある島のうちのひとつに、温泉が湧いているのを見つけてきた。リーエが喜びそうだ。

 その島は森に囲まれており、その森の中心に大小の泉と小さな温泉が湧いているという。森が船からの目眩ましにもなり丁度いい。

 直ちに報告すれば、マックスがその島の位置を確認し、海路からも外れているため、余程のことがなければ見付からないだろうと言う。皆の了承を得て、リーエの家の移転が決まった。了承の決め手はもちろん温泉だった。


 移転はシュヴァルツの魔力にて一瞬だ。今までの常識が簡単に覆るほどの力だ。

 リーエの契りしものがフェンリル、俺の契りしものがシュヴァルツである限り、リーエの身は安全ではないかと思える。フェンリルからは『気を抜くな』と伝わってくる。『人の欲は時に我が想像しないほどの醜悪さを見せる』とも。そうだな、だからこそ前回の渡り人は捕らわれたんだ。


 直系王族と契約者たちにリーエが渡り人であると知らされる。

 兄上に俺が王位継承第一位となり、俺の子も直系王族となると聞かされる。

 人ならざるものの俺とリーエの子は人として産まれるのだろうか。解らない。解らないが、俺は女の子がいい。リーエに似たちびっこい娘を溺愛したい。可愛いだろうなぁ。だがジギスは長女を可愛がりすぎて嫌われたらしい。ほどほどに可愛がろう。






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