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わーるどいくじっと  作者: 以龍 渚
Episode of "Haiji Kirisaki"
9/31

GAME.2「Intelligence」その5

 龍臣の答えは――『314』だ。

 どうやら引っかけというのはわかっていても、それ以外の答えが見つからなかったってところだろうな。

「……どうやら、態度の訂正の必要はないようだな、龍臣。さあ、どうする? これで俺が正解なら、お前の一人負けだ。許しを乞えば、俺は答えを放棄してやってもいいぞ?」

「うわぁ。あんちゃん、まるっきり悪役じゃん」

 黙ってろ、ギコ。自分でも嫌な奴を演じているってわかってる。

 龍臣が俺のフリップを掴み、その場に叩きつける。

 俺の答えが晒される。答えは『ALL』――つまり、該当する数字は0~9全てということだ。

 しかし、やはりといったところか、プライドだけは高いようだな、龍臣は。

「さて、答えが出揃いましたね? 吉法師さん、どちらが正解なのですか?」

 314が答えということはないだろ?

「ねぇ、兄さん。これで兄さんが正解なら、龍臣さんが敗退ってことになるんだよね? でも、負けたらどうなるの?」

 ! ――待て。そういえばこのゲーム、開始前にペナルティがあるとは聞いていたが、ゲームが始まってからもそのペナルティの内容は一切聞かされてないぞ?

 いや。それ以前に、龍臣の一人負けってのは今の状況がそうなるだけで、元は誰かが3pt獲得した地点で終了ってなっていたぞ?

「――おい、確認だ。お前は誰かが3ptを取った地点でこのゲームが終了と言ってたな? ここで俺が正解なら、俺と吉法師が同時に3ptに達する。それはわかっているな? それで、ゲーム終了時に3ptに達しなかった者はどうなるんだ? まさか、ここに取り残されるとかは言わないよな?」 ここはあえて龍臣がどうなるかとは聞かない。まだ吉法師が正解を出していないからな。

「そういえば、霧崎灰次さんはこういう対戦形式のゲームは初めてなのでしたね?」

 つーか、俺はこれでここにくるのはまだ二回目なんだよ。

「こういう形式のゲームの場合、誰かが終了条件を満たした地点でゲームは終了します。ゲームが終了ということは、そこで皆さんここからお帰りしていただくことになりますので安心してください。ただし、条件を満たせなかった方にはペナルティ――っといっても、簡単な罰ゲームみたいなモノですね。それを受けてもらうこととなっています」

 つまり、このゲームはどう転がろうとここからは脱出できるってことなのか。――もはや、脱出ゲームでもなんでもないじゃねぇか。

「それで、その罰ゲームとやらは?」

「その前に吉法師さんの正解発表が先ですよ?」

 やれやれ。

「俺が『ALL』って書いたのは、吉法師が言った『正解はいくつもある』って言葉と、『英数字で記入』ってフリップに書いてあったからだ。まず、π=3.14となっているが、円周率=πとは書かれていない。この地点で314は明らかに引っかけだって言うのはわかる。ということは、円周率で使われている数字というのは『3.14159265358979323846264338327950…』と、ここで0~9全ての数字が使用されていることになる。よって正解は全ての数字を意味する言葉。で、英数字で記入ってことは、英字の使用も許可されているってことだから、いくつもある正解の内の一つが『ALL』で問題ないはずだ。どうだ、吉法師?」

 俺の解説を聞いて、吉法師がため息をついた。……どっちのため息だ?

「だ、そうです。俺から言う言葉、なくなってしまいましたよ」

「ということは、霧崎灰次さんの正解でよろしいということですね、吉法師さん?」

 吉法師がうなづいた。これで、龍臣の一人負けが確定したな。

「それでは、龍臣さんにペナルティをお伝えします。……そうですねぇ。転倒するほどの大きなくしゃみを一回するってのはどうでしょう」

 は? それだけ、なのか?

 ……いや、龍臣と吉法師の表情は、たったそれだけの罰ゲームにおびえている表情には見えない。

「では、今回のゲームはこれにて終了です。まずは龍臣さんからお帰り願いましょうか」

 そういうと、龍臣の姿がこの空間から消えた。

「でもさ、ミュウちゃん。罰ゲームがくしゃみだけだったら、あんちゃんに助けにきてもらわなくてもよかったんじゃない?」

「……おい、吉法師。おまえらは本当にこんな罰ゲームを本気でおそれていたのか? それとも、今回がそうなだけで、いつもはもっときついのがあるとでもいうのか?」

「いつも、こんな感じの罰ゲームですよ」

 どういうことだ? たかがくしゃみ程度をおそれているとでも言うのか?

 そう思っていると、吉法師が言葉を続けた。

「でもね、俺も龍臣さんも再度ここに呼ばれているということは、いまだ罰ゲームを受けたことがないってことなんですよ? それなのに、罰ゲームの内容を知っている。……あの程度の罰ゲームがいつ、どこで、どうやって執行されたのか、だいたい八割くらいの確率で知ることが出来ると言ったら、どう思います?」

 八割くらいで知れる? 龍臣がいつくしゃみをしたのかがか?

「まぁ、いずれわかると思いますよ。……それより、ひとついいかい?」 吉法師が上方を見上げ、声を上げる。

「どうされました、吉法師さん。もうゲームは終了しておりますよ?」

「そこなんですよ。今回のゲーム、なんか物足りない結果で終わってしまったんでね、ひとつお願いがあるんです」

 吉法師のお願い? ……なんだ? ものすごく嫌な予感がする。

「お願い、ですか? まあいいでしょう。聞くだけは聞きましょうか」

 そして、吉法師が言った言葉は――

「そこの彼と別のゲームで、サシで勝負させてくれませんか? 出来れば、知略や戦略がモノを言うゲームで」

 嫌な予感が的中しやがった。

「いいんですか、吉法師さん。ここでそのようなことを口にしちゃって。相応のリスクを負うことになりますよ?」

「俺はそのスリルが楽しみの一つなんですよ」

おいおい。それは本当にお前の本心か?

「そうですか。わかりました。ですが、それに関しては、霧崎灰次さんが応じなければ叶いません。――霧崎灰次さん。相応のリスクを覚悟で、吉法師さんの申し出をお受けしますか?」

 これはどう考えても断るの一択しかないだろう。――だが、吉法師との知略対戦か……。

「兄さん。吉法師さんには悪いかもしれませんけど、ここは断るべきです。リスクを負う必要があると言っていますし、これ以上兄さんに迷惑をかけるわけにも――」

 わかってる。ミュウが言っていることもな。だが、俺は――

「こっちからもひとつ条件をいいか? ――ミュウとギコは関係ないのなら、先にここから脱出させてくれ。話はそれからだ」

「兄さんっ、まさか受けるつもりなんですか!?」

「まだ受けるとは決めていない。ただ、どちらにしろお前たちは先に帰るべきだと思って言っただけだ」

「いーや。あんちゃんは受けるつもりでいるよ。でなきゃ、先に帰れなんて言わないよ」

 ポンコツ娘が。こういう時だけ鋭いな。

「……兄さんがそう決めたのなら、私が口を出せることではありません。でも、先に帰るつもりはありません。帰るのは全てを見届けてからです」

 まずいな。ミュウの奴は言い出したら聞かないぞ。とにかく、ここにミュウたちを残すのは危険だ。どうにか説得しないと……、待てよ? ミュウが残るという理由が全てを見届けたいって言うなら――

「おい。条件を追加していいか? 二人の脱出と、外からここを観戦できるようにしてくれ。いわゆる『ウォッチモード』やつだ。出来るよな?」 これなら、ミュウの要求をのみつつ、ここからミュウたちを脱出させることができる。

「ウォッチモード、ですか……」

 ん? どうした? 渋るようなことか?

「ミュウたちは多分、俺が最初にここに来た時のように、ゲームの筐体から呼ばれているんじゃないのか? だったら、その筐体の画面にここの光景を映し出すのは可能なはずだろ?」

「たしかにそれは可能なのですが……」

 だから、なぜ渋る?

「飲めないなら、その理由を聞かせてもらおうか?」

 奴が渋るには必ず理由があるはずだ。たかがウォッチモードをなぜそこまで渋る。

「うーん。仕方ないですね、霧崎灰次さんの申し出をお受けしましょう。ただし、それはあなたが吉法師さんの申し出を受けるということになりますが、よろしいですか?」

 とりあえず、ミュウとギコがここを出れば、俺がリスクを負うとしてもどうにかなるはずだ。一番は俺も一緒にここを出ることなんだろうが、……俺も吉法師とは対戦してみたいってのが本音だ。

「……了解した」

 俺が了解するのと同時に、ミュウとギコがこの空間から姿を消した。

「では、ゲームを始めましょうか。お二人に対戦していただくゲームは『Word Card Killワードカードキル』というゲームです」



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