幻のソードスキル
クリスマスイブ以来、俺とルシアはひたすら戦闘に打ち込む日々だった。結局サンタからの贈り物はそこそこのベル(この世界の通貨のことである)と回復ポーション二つ、俺の愛用武器よりははるかに下回る強度しかない武器だけだった。正直がっかりしたが、俺は次のイベントに賭けることを誓い、攻略を続けていた。
俺らは今、目の前に飛び交うフライトバッドを剣で付きまくっている。一匹仕留めるごとにライトエフェクトが飛び散りアイテムと少額のベルが格納される。
ルシアは残りのフライトバッドをすべて撃破し先程主街区の近くで手に入れたはちみつインドーナツをぱくりとくわえた。
「うんまぁい! これ最高!!」
幸せそうな顔は俺にもハピネスを与える。
「シエルも食べなよ。ほら!」
そう言って俺の口にドーナツを差し出し「あーん」というルシアに俺は内心少しとまどいながらも一口かじった。
「おっ、おいしいじゃん!」
はちみつの甘さとふんわりドーナツのコンビネーションが何とも言えないおいしさである。
「そういえばおもしろい話が耳に入ったんだけどさ」
残りのドーナツを口の中に放り込み二つ目のドーナツにかじりつきながらルシアは言った。
「大通りでデュエル大会やるらしいよ。正式なやつ」
"デュエル"という言葉が俺の血を騒がせた。
「なんでも優勝者には"幻のソードスキル"が授与されるらしいよ」
"幻のソードスキル"なんて言葉は俺の胸を最高潮に高鳴らせる。たいていのソードスキルは努力してステータスを上げたりすれば獲得出来るものがほとんどだが、"幻の"ともなれば運とセンスと実力を持ってしても取得するのは至難の技だろう。稀にしかみられないソードスキルを持つ者は数えるほどしか存在しない。
「よし! 決まり!!」
--絶対優勝してやる!!
ルシアも笑顔でうなずいてくれる。
「それならそうと対戦に備えなきゃね。大会は3日後、午後0時に主街区広場でやるらしいよ!」
ルシアは「がんばれっ」というように俺の背中に一つぽんっと手を当てて笑顔でぎゅっと俺を抱きしめた。
「ル、ルシア……!?」
「シエル……シエルなら絶対出来るよ」
女の子に対してのエールの仕方なのだろうが俺にとっては充分すぎる至福の時間だった。