義勇団
「いっけぇぇぇ!!」
俺は手に剣と先程実体化させたアイテムを持って空中へとジャンプした。またしてもミニサンタさんは袋を大きく開け俺のソードを待ち構えている。
「そうはさせねーよ!」
剣を振りかざすふりをして寸止めし
吸収しようとした袋に向かって左手に持っていたアイテムを放り投げる。
「よっしゃ!」
きれいにすぽっと袋に収まったと同時にどぉぉぉん!!! と大きな音を立て空気を震わせた。
「なんだよあれ!? まさか爆弾放り込んだんじゃ……」
「やべーよあいつ! しかもお、女!?」
俺の頭のてっぺんに結ばれた髪がさらっと空中になびき俺はすとんっと地面に足をついた。周りがどよめく中、結晶化して散っていったミニサンタさんからドロップされたアイテムを格納する。
「シエル圧勝だね!」
ニッと笑ってルシアがぽんっと俺の背中を叩く。
「今回はルシアのおかげだよ。ありがとな」そんな俺らのやり取りを見ていた人だかりの中から背の高い男性プレイヤーが「ちょっと君たちいいかい?」と声をかけてきた。
「今の一部始終を見ていてね。君たちを我がギルドに招待したいと思ってね」
「失礼ですけど……あなたは?」
「おぉすまない。わたしはレヴィアタンといってね。義勇団というギルドの隊長を務めているんだ」
ギルドに誘われたのはこれがはじめてではない。今までにも何人もの男性プレイヤーに誘われてきた。だがしかしみなおそらく戦力として、ではなく女性プレイヤー欲しさにだろう。この世界では圧倒的に女性プレイヤーが少ないため、女の子二人となればなおさらだ。
「義勇団……ですか」
正直言うと今まで聞いたことがない。有名なギルドは週刊『WOFインフォメーション』に掲載されたりするのだがはじめて聞く名だ。ルシアも知らないというふうに軽く首を振る。
「シエルくん……いや君だけじゃない。おそらくルシアくんも相当な実力の持ち主だろう。君たちの目を見れば分かるさ。わたしは君たちの力を必要としているんだ」
ギルドに入ればメリットは大きく三つ。一つは、仲間が増えるので攻略が容易になること。二つ目は、情報交換が盛んになること。そして三つ目は、何と言っても協力して勝利を勝ち取る楽しさだろう。だがデメリットも大きい。報酬は分け合わなければならないし貴重なドロップ品が出た時には争奪戦だろう。「悪いが……俺はパスだ。報酬の奪い合いなんて真っ平ごめんだ」
今はルシアと仲良く半分個しているがお互いの意見で譲り合いながらなのでさして問題はない。
「そうか……それは残念だ。じゃあ次会う時を楽しみにしているよ」
今までのイメージを覆すほど不気味にくくっと笑うと男はマントをひるがえして去って行った。
「何か企みのありそうな顔してたな」
俺がぼそっとつぶやくとルシアはただただうなずくだけだった。