かわいらしいサンタさん
『ゴーンゴーン』
十二時の鐘が鳴り響く中プレイヤーたちは主街区の広場で同じ方向に視線を向けじっと待ち構えている。これから現れるであろう赤い服に身をまとった白ひげのおじいさんに俺は、いや俺だけじゃない。この場にいる全員が今か今かと飛びかかろうとしている。
パッとまばゆい光が目の前を埋め尽くしたかと思うと同時にわっと歓声が上がった。予想とは打って変わってとてもかわいらしいその"サンタさん"は上空に姿を現した。
白ひげどころかまるで小人のようだ。
ここからだと正確ではないがおそらく50センチほどしかない。
「ついに来たか!!」
地面を蹴り一気に距離を縮める。
周りよりほんの少し先頭に抜け出た俺は思いっきり正面から剣を突きにいく。
「なにっ!?」
俺の剣から放たれた閃光はかわいいミニサンタさんの白いプレゼント袋の中へと吸い込まれていった。
「うそだろ……」
これじゃあ攻撃のしようが……
俺の後に続いたプレイヤーたちもすべて攻撃を吸収され唖然とした顔をしている。
「どーするの?シエル」
ここで今まで黙秘を続けていたルシアがはじめて口を開く。
「どーもこーも攻撃出来ないんじゃ手の施しようが……」
「攻撃出来ないなら攻撃しなければいい」
「へっ!?」
ルシアは頭でも打ったのだろうか。
「どーゆーことだよルシア」
完全にはてなで埋め尽くされた俺を目の前にルシアはふふっと笑う。
「だから吸収されちゃうならそれを利用して……」
ルシアは周りに聞こえないよう俺にそっと耳打ちする。
「なるほど!それなら行けるかも!!」
俺はぐっと親指を立て左手を振ってウィンドウ窓を出現させた。
「よし!操作完了。見てろよルシア」
最後は完全にシエルではなく碧人の口調だったが気にせず俺はもう一度大きく地面を蹴った。