プロローグ 死に際の執念
クソ、ビビりやがってトラックの野郎。ここは法治国家だぞ、逃げたって無駄だってのに。
――まあ、そう叫べないのは残念だ。肺まできっちり潰していくとは周到だな。
ぼやけた視界の端に、さっき突き飛ばした少年が映った。すぐ近くでわんわん泣き叫んでいる。
何だい少年、そんなギャン泣きしてさ。
大丈夫だって……ちょっと声は出ないけど……。
身体を苛んでいた耐え難い悪寒も、内側から焼かれるような熱も少しずつ遠のいていく。
代わりに、妙な心地よさがじわりと全身へ沁み出してきた。
……あ、これはヤバい。一歩手前まで来てるかも。
「ぐ……っ!!」
ダメだ、気を抜いたら終わりだ。ぜ……絶対に意識を手放すな……。
俺は俺は俺は俺は俺は俺は……
まだ………!!
「フッ……」
……?
「そんなに力まないの。ハゲるわよ、そんなんじゃ」
……幻聴? ついにそんなものまで聞こえてきたか。いよいよお迎えとでも言いたのか、ふざけるな……。
俺はな、死にたくねぇんだよ。まだ……
「ふぅん。やり残したことでもあるの?」
それは……って、な、なんで会話が成立して……? やっぱいよいよなのか……?
「頑張って、私は応援してるから。その先を、私に――」
言われなくとも俺は……気合で繋ぎ止めてやる。俺、は……、おれ、は………………
――暗転。それでも、意識だけは消えなかった。
消え入りそうなほどか細くなりながらも、それは闇の底にしぶとくしがみついていた。




