第6話 幻の湖
霧深い森の中で二人は立ち往生してると霧の中から人影が見えた。その人影の正体は茶店で勝手に何処かに行ってしまった立川健その人であった。
「ちょっとあんた何処行ってたの。心配させて」
「まぁそう言うな。世間という物は広いようで狭い。離ればなれになってもこのように再会出来たじゃないか」
「そう言う問題じゃない」
「まぁ二人とも落ち着いて、ところであなたはどうしてこの森に」
「ちょっと面白そうな森を見つけたもんでな、ふらっと立ち寄ってみただけだ。そうそうお前さんたちの後ろで歩いているその子も連れてきたのかい」
「え」
鈴とウブメは健が指さした方に振り向いた。すると老夫婦の家で預かっているはずの龍の子どもがウロウロしていた。
「あなたここはとっても危ない場所なんだよ勝手についてきちゃメだよ」
鈴は勝手についてきた龍の子どもに注意するように叱った。
「まぁそう怒りなさんな。赤子というのは初めて見た相手を親と思うらしいじゃないか。おそらく母親が恋しくなってついてきたってところだろう」
「気持ちは分かるけど、でも」
鈴は龍の子どもを心配そうに見つめていた。するとウブメは突然何かを思い出したかのように健に質問した。
「よくよく考えたらあんたは森に立ち寄っただけって言ってたけど私たちより先に森に入ったんなら今頃森を抜けてても良い頃だと思うんだけど、なぜなのでしょうか」
「ちょっと寄り道をしていただけだ」
「なるほど、ようするに迷ったんだ」
「いや違う、そうじゃない。だいたいお前さんと隣の鳥も何故ここにいるんだね。そっちこそ道に迷ったんじゃないか」
「私たちだって別に迷ったわけじゃないし、あとお前と鳥って呼ぶな。私たちの名前は鈴とウブメ、ちゃんと名前で呼びなさい」
「ヘイヘイ分かりましたよ。鈴お嬢様とウブメちゃん」
健は頭を掻きながら言い訳と悪態をついた。ウブメはニヤリと不適な笑みを浮かべながら健に突っかかった。
「もうウブメ、人の失敗を嗤うような事を言わないの。道に迷ったのはお互い様なんだから」
鈴は宥めるように二人の間に入った。
そうこうしているうちにいつの間にか夜になっていた。まるで何かに引き寄せられるかのように三人はひたすら足を動かしていた。しばらく歩いて森を抜けるとそこには大きな湖があった。
「こんな小さな森の中に大きな湖があるなんてな」
霧の中から現れたその湖は月光の反射によって、まるでこの世の物とは思えない美しい輝きを放っていた。突然、大きな地鳴りと揺れがした。すると湖から大きな白い蛇が雄叫びを上げながらその姿を現した。
「なんてこった。あれが噂に聞く龍神様ってか」
「見た感じかなり怒ってるみたい。無事に帰してくれる雰囲気じゃなさそうだし」
皆、闘う気力は無かったが闘わなければこっちがやられてしまう。三人は仕方なく臨戦体勢に入った。




