第3話 再び会うために
ウブメは物凄い速度で落下している中で自分が助かる方法を考えた。そして一か八か手先の鋭い爪を壁に向かって思い切り突き刺した。物凄い轟音と摩擦熱による火花がウブメの顔の方に飛び散る。そして足が地面に着くか着かないかという所でようやく指先からは湯気が立ち込めていた。ウブメは壁から爪を引っこ抜いて地面に着地すると聞き覚えのある声の方に振り向いた。
「何事かと思ったらお前さんか、こんなに汚れちまって酷い格好だ」
崖の方から聴こえてきた音を確かめに来たあの青年、立川健がそこに立っていた。
「しかしあんな高い所から落ちてきてよく生きてたな。さすが妖魔獣ってとこか。人間だったら確実に死んでいただろうな」
ウブメは健が持っていた木刀の方を見た。さっき会った時よりも多くの魚が吊り下げられていた。
「ここで何を」
「魚釣りだよここは穴場でな良いのが一杯捕れるんだ。しかし捕りすぎて持ちきれないな。腹も減ってきたしちょっとばかし食べるか」
「食べるってその魚まさか生で食べる気」
「ああよく噛めば大丈夫だろう」
自信満々な健の発言にウブメは呆れながら
「しょうがないな私がその魚を焼いてあげるよ」
ウブメはそう言うと口から火を吹いて魚を焼いてみせた。こんがり焼けた魚から美味しそうな香りが漂ってきた。
「へぇ便利なもんだねこれは」
健は焼けた魚を食べながらウブメのその能力に感心していた。そして
「お前さんあの鈴っていう娘とはぐれてしまったんだろ。日が暮れちまう前に彼女を見つけないとな。用心棒の名が泣くぜ」
「しかし妖魔獣というのは人間の能力を超えた存在なんだろ。そんな便利な力があればこの世界なんて思いのまま、人間の俺にとっては羨ましい限りだよ」
「そうでもないよ。力を加減しないと相手に怪我をさせてしまうし、人間達には好奇な目で見られるし強い力を持つというのも大変なんだよ」
ウブメは自分の両手をじっと見ながら
「鳥なのに空も飛べないし、自分の力の上手く制御出来ない。あんな大見得を切っといて情けないよ私は。これじゃあ用心棒失格だよ全く」
「いや俺はお前さんは立派に責務を果たしていると思うぞ、皮肉でもお世辞でもなくな、俺みたいな出鱈目な奴とは大違いだ。それに安心しろ、もし何があったとしても俺と彼女だけでも逃げ切ってみせるさ」
ウブメは妙な引っかかりを感じ丁寧な口調で健に質問をした。
「あの野暮な事を聞きますけど私の事を何だと思ってるんです」
「食料」
「ふざけんな」
ウブメは思わず殴りかかりそうな勢いで健の不謹慎な冗談に突っ込んだ。健は幼子のような無邪気な表情をしながら
「フッそれだけの元気があれば大丈夫だろう。彼女もお前さんみたいな頼りになる相棒がいて羨ましいだろうよ」
二人は歩き続け再び山道に戻ってきた。
「さて探すと言っても当てがなけりゃどうしようもならんな」
「大丈夫こういう時は私に任せて、複眼の術」
複眼の術とは全身の筋肉を目の一点に集中させる事で遠くの物を広い視野で見通す事が出来るウブメの能力である。
「分かった。そんなに遠くないここを真っすぐの大きな木の下で待ってる」
ウブメはそう言うと立ちくらみの症状に襲われた。
「こういうの結構疲れるんだよね」
「場所さえ分かれば後はそこに向かうだけだ。ほれ魚を食って元気だせ」
健は残りの焼き魚をウブメに手渡した。そして二人は鈴の居る場所まで進んでいった。




