071.有無有無(1)
本部に出向いた時に、訪問者が居ると受付に言われた私は、その人物を応接室で迎えた。
名刺を交換し、
「はじめまして、有無有無 さん、早速ですが訪問の要件を伺っても?」
怪しい人物ではあるが、堂々と訪問されてはこうして対峙しなければならない。
盗聴器があったのでアイテムボックスに回収しておいた。
「はじめまして、猫山さん、まずはお会いいただいて恐縮です」
「堂々と訪問されては拒否する理由もありませんが」
「早速で申し訳ありませんが、折り入って相談したいことがありまして。
実は、今世間で噂されている “龍の顎” という組織の事なんです」
「もし関係者であれば場所を変えていただいてもよろしいですよ」
「いえ、私は構いません」
彼の話によると
龍の顎という組織は一枚岩ではなく、幾つかの派閥で構成されているらしい。
派閥は大きく穏健派と過激派という2つのグループに分かれていて、
今回俺達が襲われたのは、その中の過激派の中の派閥らしい。
穏健派グループは水の龍玉持つ派閥、過激派グループには火の龍玉持つ派閥が中心になっているらしい。
そして有無さんは、穏健派グループの派閥の一つのリーダーらしい。
もちろん穏健派なのでこの場で暴れる事は無いそうだ・・・良かった。
なるほど
「それで?」
「我々、穏健派のグループは別に社会に対して影響力を持とうとは思っていないから安心して欲しい。
我々の派閥の盟主は水の龍玉を持ち、その力を持って過激派と対立している。
過激派は火の龍玉をもってはいるが、その力を使える者が居ない事で立場的には弱く、
その立場の弱さを武力で補っている」
「なるほど、それで龍の顎の活動目的は何なんですか?」
「もちろん “龍玉の力を求め崇めること” が目的だ、決して力を求めるだけの組織ではない。
遡ること平安の時代、かの・・・」
「えっと遮って申し訳ないですが、遡りすぎです、最近の話でお願いします」
歴史は大切かもしれないけど、今は現在の状況が知りたい。
それでも長かったが、まとめると
龍の顎の開祖は2つの龍玉を操りその力を行使することが出来たらしい。
水の龍玉を持つ派閥は、開祖以来何人か適合者が現れ、今代の当主が数代ぶりに適合者であることがわかり、穏健派の力を組織内に広めて来たらしい。
一方火の龍玉を持つ派閥は、開祖亡きあと未だに適合者が現れていないらしい。その事から政治・経済の力を集めて武力で派閥の勢力を伸ばしている。
そして今や穏健派は派閥を守るだけで精一杯なのだそうだ。
ふーん、ま、どちらかと言えば俺の立場に近いって事か。それで接触してきたという事らしい。
敵の敵は味方・・仲間と言えば仲間だけど・・・
「・・・という状況なのです。
幻の龍玉を持つ貴方に是非助力をお願いしたく、こうしてやって参りました」
どこまで信じてよいかはわからないけれど、過激派の力が強い今、共闘しても良さそうだ。
「そうですね、条件はありますが、共闘に関しては考えても良いです」
「おお、それは心強い・・・それで条件とは?」
「もちろん、犯罪に関与するわけにはいかないという事と俺達の身の安全の確保する事ですね」
「犯罪への関与はそうでしょうが・・身の安全は過激派から守りきれるか・・」
「いえ、過激派からの安全では無く、穏健派内部での安全です。
後ろからナイフで刺されるような状況は勘弁してほしいです。
それと必要な情報も頂きたい」
「わかりました、私が保証します」
ま、保証しますっていうのを信じるほど信頼してないけどね。




