012.依頼
「猫山さん、お久しぶり、この間はどうも」
公安さんだ
「そのー今日はちょっとお願いがあってですね、
猫山さんって探し物は得意ですか?」
「得意ってほどではないですが、探したいものがはっきりしていればなんとか・・で、どうして?」
「いやあ、猫山さんリタイアして働いてないって聞いたから、
アルバイト感覚でいいので仕事をちょっと頼まれてくれないかなと」
「内容によりますけど・・どの様な内容で?」
「少し、ここでは話しづらくてですね・・・急な話なんですが、明日の昼、13時ごろここへ出向いてもらえませんか?
私はまた出張で行けませんが、話を通しておきますので」
住所と地図の書き込まれた紙片を渡された。
「ちょっと遠いですね・・」
近所へ買い物ついでに行けるところかと思ったけど電車で移動しないと行けそうにない、
「あ、これはお足代と言う事で」
封筒を渡された・・五千円・・交通費としては少し多めに入っていた。
ここまでされたら少し断りにくいな。
「はい、わかりました。
何か必要なものってありますか?」
「特にいりません、服装も普段着で構わないですし、普段の手荷物程度で構いません」
13時ごろという事は昼を食べてから来いという事だね。
あ、この街のトンカツ屋に行こうと思ってたんだ、美味しいと評判だったからついでに行こうかな。
余ったお足代で充分食べられるし。
「まさか闇バイトじゃないですよね?」
「違います違います、真っ当なところなので」
ちょっと怖かったけど引き受けてしまった。・・・大丈夫だよね。
その夜は思いつくあらゆる事態を想定をしていたら寝られなかった
“真っ当”って言ってたからそれを信じれば問題なさそうなんだけど、
実は反社組織だったらどうしよう
非合法組織だったらどうしよう
いつのまにか誰かに恨まれていて報復を受けるとか
閉じ込められて火を付けられるとか、爆発するとか
外国に売り飛ばされるとか・・これは無いか
濡れ衣を着せられていて誘い出されて捕まるとか
ここに行ったら死体があって、お前が犯人かと捕えられるとか
ここに行ったらガサ入れに巻き込まれて捕えられるとか
ドアを開いたらドアが壊れていて修理代を請求されたりとかしたらどうしようとか
トンカツを食べてから行ったらトンカツを出されたらどうしようとか
トンカツを食べてから行ったらカツアゲをされたらどうしようとか
美人局だったらどうしようとか
人質に取られたらどうしようとか
アリバイ工作に利用されるとか
俺が家に居ない間に誰かが忍び込んで隠しカメラや盗聴器を仕掛けられるとか
・・・・・
この場合はどうしようかとか色々と考えていたら寝られなかった。
師匠はあたふたしながら考えられる想定をリストアップしている私を眺めていて楽しそうだった。
こっちは大変だっていうのに。
『盗聴器ってこれの事か?』
師匠が潰された装置を持ってきた
「これこれ、盗聴器だ」
『違和感があったので潰しておいたぞ』
あるじゃないか、想定内の事が・・怖い
「カメラは?」
『これの事か?』
「これこれ、カメラだ」
『じゃあこれも潰しておこう』
ぱきっ
師匠の声は他人には聞こえないので、これを見聞きしていたものは私が独り言をしゃべっている様にしか思えないだろうな。・・・恥ずかしい。




