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異世界のお兄ちゃんと冒険者したりコタツでのんびりする生活  作者: 紫蘇ごま油


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8/8

8 異世界のお兄ちゃんと冒険者したりコタツでまったりする生活

「ハァ⋯何を寝ぼけたことを。レイスやアンデッドにエンシェントドラゴンがテイムできるわけないだろうが」


あご髭がダンディな王様は、一人で大騒ぎしている叔父さんに呆れ顔だ。


「というか、今から討伐されるのは甥っ子じゃなくてお前の方だぞ。お前は自分の妻と共謀し、実の兄とその妻に横領の濡れ衣を着せてトール伯爵家当主の座から追いやっただろう。その上、現在進行形で領地の税金もちょろまかしているな」


「なっ、それこそ濡れ衣、冤罪です!一体どこのどいつがそのような戯れ言をっ」


「ヴェンティ公爵家の手の者が調査し、王家に報告が上がったのだ。こちらできちんと裏付けも取れておるから、お前は嫁と仲良く三十年ほど炭鉱で罪を償ってこい」


王様の言葉で、騎士の人たちがホールから逃げようとしていた叔父さんと叔母さんを捕まえて連れて行った。あっという間の出来事で、僕はただただぽかんとしていた。


「それから、グランデ侯爵。侯爵の娘が元夫の愛人親子に毒を盛り殺害しようとした件を、愛人の生家が準男爵家だからと権力で捩じ伏せただろう。娘の元夫も褒められたものではないが、殺しはいかん。挙句にその三十八の出戻り娘を十二歳の少年に嫁がせようなど、耄碌も甚だしいぞ。娘には法廷で然るべき裁きを受けさせ、侯爵には息子に代替わりした上で領地への蟄居を命じる」


グランデ侯爵らしきおじいちゃんも叔父さんみたいに喚いていたけど、騎士の人たちに両脇を固められてホールから退場させられてしまった。


「⋯⋯ルフェル兄ちゃん」


お城に来てから問題が一気に解決した。全部ルフェル兄ちゃんのおかげだ。


「泣くのはまだ早いぞ、ニコラ。セドリックの方を見てみろ」


「え?」


ルフェル兄ちゃんが指さした方を見る。ホールにいるセドリック兄ちゃんの両隣には貴族らしく綺麗に着飾ったお父さんとお母さんがいて、僕に向かって笑顔で手を振っていた。


「お父さんに、お母さん⋯⋯」


僕は涙で前が見えなくなってしまった。そんな僕をルフェル兄ちゃんがひょいっと抱っこして、ぐしゃぐしゃの顔をハンカチで拭ってくれる。


「どうする?まだ式典の途中だが、今すぐ両親に会いたいならニコラの分の勲章も、俺が受け取っておいてやるぞ」


優しげに笑いながら、僕の顔を覗き込むルフェル兄ちゃん。そうだ、まだ大事な式典の途中だったんだ。


「ううん。僕もルフェル兄ちゃんと一緒に勲章をもらいたい」


ルフェル兄ちゃんは「そうか」と頷いて、抱っこしていた僕をそっと降ろしてくれた。




胸のあたりに勲章を付けてもらった後、勲章とは別に王様がご褒美をくれるそうで、何が欲しいか訊ねられた。


「ルフェーリオにニコラよ。褒美は何をどれだけ強請っても構わんぞ。国が滅亡することに比べれば安いものだからな」


さっきまでならお父さんたちの濡れ衣を晴らしてもらって、お兄ちゃんの婚約も止めてもらうようお願いしただろうけど、それはルフェル兄ちゃんが叶えてくれたから⋯⋯


「あっ、そうだ。それならルフェル兄ちゃんの婚約者を勝手に決めないであげてほしいです。それから、ルフェル兄ちゃんが安心して学園に通えるようにもしてください。ルフェル兄ちゃんは婚約者になりたい人たちに囲まれすぎて困っていて、あまり学園に通えていないんです」


僕がそう言うと、王様はあご髭を擦りながら、ニッと白い歯を見せて笑った。


「ほう。そうかそうか。ニコラは欲がないな。だがその件についてはルフェーリオから、何やらお前に話があるらしいぞ」


王様がルフェル兄ちゃんの方を見たから、僕もつられてそちらを見る。いつも何事にも動じないルフェル兄ちゃんが、ちょっとだけ落ち着かない感じに見えた。


「ルフェル兄ちゃん?」


八歳なのに五歳に間違われる僕と、まだ十二歳なのに中学生や高校生に見えるルフェル兄ちゃんとの身長差は大人と子どもくらいある。


立ったまま喋っていると僕はかなり見上げなきゃならないんだけど、ルフェル兄ちゃんはそんな時、僕の首が痛くなる前に抱き上げてくれるか、しゃがんで話してくれるんだ。 


「ニコラ」


今日のルフェル兄ちゃんは、立っている僕の前で片膝をついて視線を同じ高さにしてくれた。ルフェル兄ちゃんからはさっきまでの落ち着かない感じが消えて、真剣な眼差しで僕を見ている。


「ニコラと冒険者ギルドで初めて会った時、俺が同い年の縁戚の者に五歳の弟ができたのが羨ましかったと言ったのを覚えているか?」


「うん、覚えてるよ」


「そいつは俺の従兄弟だが、昔は俺と同じで死んだ魚のような目をしていた男だった。俺も従兄弟も何事も容易くできてしまうから、幼い頃から人生に退屈していたんだ。それなのに奴と数年ぶりに再会したかと思えば幼い弟に骨抜きになっていて、弟の話をしている間の奴は特に生き生きとしていた。それが羨ましくて、俺も弟が欲しいと思った」


「そうだったんだ。でも僕の知ってるルフェル兄ちゃんは確かに一見あんまりやる気なさそうだけど、死んだ魚の目をしてたことなんかなかったよ?」


「ああ。ニコラといると毎日が楽しいからな。だから俺は、婚約するならニコラがいい。俺はまだガキだから愛だの恋だので求婚しているわけじゃなくて悪いんだが⋯⋯」 


「いいよ。僕、ルフェル兄ちゃんと婚約する。僕も好きとかわかんないけど、ルフェル兄ちゃんと一緒だと楽しいもん」


「そうか。求婚を受けてくれてありがとう。ニコラが成長して他の人間を好きになったら、いつでも婚約を解消すると契約書に書いておく。それまでは俺と一緒だ」


「うん!これで安心して学園に通えるようになるね」


「そうだな。助かる」


ルフェル兄ちゃんが、とびきりの笑顔で僕の頭をくしゃくしゃに撫でる。


それを見ていた王様が「ルフェーリオの年相応の笑顔なぞ初めて拝んだぞ」と呟いた。後で知ったけど、王様とルフェル兄ちゃんは親戚なんだそうだ。



僕はまたお父さんとお母さんと、トール伯爵家の屋敷で暮らせるようになった。僕とセドリック兄ちゃんが屋敷を追い出されている間、メイドのマーガレッタさんにとても親切にしてもらったことを伝えたら感激したお母さんがマーガレッタさんを専属の侍女にして、マーガレッタさんも『坊ちゃまと奥様のおかげで家族が熱を出してもお医者様に診ていただけるようになりました』と感激していた。


セドリック兄ちゃんも学園を卒業したら伯爵家に戻ってくる予定だ。実はセドリック兄ちゃんには学園にガールフレンドがいたんだけど、その子との婚約が無事にまとまって毎日すごく幸せそう。


ルフェル兄ちゃんもサボらず学園に通うようになり、これまでよりは二人で過ごす時間が減った。だけどルフェル兄ちゃんは死んだ魚の目になっていない。


学園がお休みの日の僕たちは前と変わらない生活をしているし、ポッポロのお世話が王様からの正式な依頼になり、放課後に僕とルフェル兄ちゃんは毎日ポッポロと遊んでいるからだ。




女神さまに言われたとおり、僕もお兄ちゃんも揃って幸せになれた。毎日眠る前に『ありがとうございます』って感謝しながら、心の中でお祈りしている。


ちなみにルフェル兄ちゃんは出会ってすぐの頃から、僕が異世界から来たことをなんとなく察していたそうだ。テレビに映る文化がこの世界とはまるで違うし、僕がこの世界にはない料理を当たり前のように作っていたから。


僕が前世からの出来ごとを話すと、ルフェル兄ちゃんは「あっちの世界でもこっちに来てからも、今までよく頑張ったな」と言って、また僕の頭をくしゃくしゃに撫でてくれた。



──そして時が経ち、僕が学園を卒業する頃──僕はルフェル兄ちゃんに会うと胸の中がドキドキするようになった。それを打ち明けるとルフェル兄ちゃんも同じ気持ちだったから僕たちが婚約解消することはなく、二人でポッポロのお世話をしながら冒険者したりコタツと料理を楽しんだりして、ずっと一緒に楽しく暮らした。




おしまい



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